2020年2月22日土曜日

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし 『ISO通信』 2020年2月号 vol.44

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
江戸時代の書物『甲子夜話』の一節にある言葉だそうですが、先日亡くなった野村克也氏が好んで使っていました。
 
プロ野球の選手としても偉大な記録を残した野村氏ですが、世代的に監督としての印象の方が強く残っています。
「勝ちに不思議の勝ちあり」
と言うときの野村監督の顔には苦笑と皮肉と安堵が入り交じっていたようで、今にして思えばチャーミングでした。
「ヘボな野球したのに勝てちゃった、不思議だねぇ、でも助かった」という気持ちが表れていたのでしょう。
 
一方で「負けに不思議の負けなし」と言うときの野村監督は憮然としていました。
「あんな野球をしてたんじゃ、勝てるわけないよ。負けるべくして負けた」と顔で語っていました。
 
野村監督は甲子園球場をホームとする阪神タイガースの監督も務めていました。
『甲子夜話』や「甲子園球場」などに使われる「甲子」って何だろう?と思って調べてみました。
自分なりの理解をAさんとBさんの会話形式で説明してみます。
 
A「今年の干支(えと)って、なにか知ってる?」
B「ねずみ、でしょ」
A「十二支は子(ね)だけど、干支は庚子(かのえ・ね)だよ」
B「え、干支と十二支って違うの?」
A「子、丑、寅…の十二支は順番に言える人も多いけど、十干(じっかん)は、甲、乙、丙くらいまでしか、知らない人が多いんじゃないかな」
B「丁まで知ってるけど、それが『十干』というものだとは知らなかった」
A「丁の後は、戊、己、庚、辛、壬、癸と続き、全部で十干。『十干』と『十二支』を組み合わせたものが干支で、全部で60の数を表せるんだ。トップバッターが『甲子』で二番手は『乙丑』。60番目の『癸亥』まで来ると再び『甲子 』に戻るんだよ」
B「なるほど。60歳の還暦って、干支の暦が循環することだったのか」
A「そう、60年で一回り。ちなみに、日の干支は60日で一巡するよ」
B「日にも干支があるの?」
A「うん、たとえば今日(2/22)の干支は『乙未』で、次の『甲子』は3月22日。松浦静山は『甲子』の日の夜に随筆を書き始めたから、本の名前が『甲子夜話』になったそうだよ」
B「ふーん。ところで『甲子園』の甲子も干支と関係があるの?」
A「もちろん。甲子園が完成した1924年の干支が『甲子』だった事が名前の由来なんだ」
B「なるほどねぇ」
 
というわけで
『甲子』には「いの一番」のような意味があり「新しいことを始めるのにふさわしい」「縁起がいい」とされていたようです。
 
脱線が長くなりましたが、今日の本題は「負けに不思議の負けなし」です。
負けたときには、なんらかの理由があるはずです。なかなか結果が出ないときも然り。
結果が出ない状態が続いているなら、プロセスを改善する必要があります。
「今までのやり方を変えるのは面倒なので、次の『甲子』の日が来たら取り組むことにしよう」などと考えていたら「負けて不思議のない男」と天国にいる野村監督から笑われてしまいそうです。
 
小さな改善はコツコツと進め、イノベーションにつながるような改善は、散歩でもしながら「ひらめき」を得たいと思います。