日経新聞が「ブルーカラービリオネア」をキーワードにして、いくつかの記事を掲載しています。「AIの進化でホワイトカラー的な仕事が減り、ブルーカラー的な仕事の人気が高まる。そして医者や弁護士以上の収入を得るブルーカラー人材も出てきた」を論旨にした記事もあれば「ホワイトカラーが減ると、やがてブルーカラー市場の労働力供給量が増えるので、賃金は高止まりしない」といった論旨の記事もあります。
30年くらい前のアメリカでは、ミリオネアが「大金持ち」を表す言葉でした。1ドル150円なら1億5000万円の資産を持つ人がミリオネアです。しかし長くインフレが続いた結果、アメリカにおいてはミリオネアでは「真の大金持ち」とは言えなくなったようです。その中で「ブルーカラービリオネア」という言葉が登場した背景には、AIに代替されにくいブルーカラー的な職種に就き、高度な専門技術や現場での希少な経験のある労働者が、高額の報酬を得るケースが顕著になったという、時代の変化があります。
日本には「億万長者」や、投資で成功を収めた人を指す「億り人」などの言葉があり、30年前も今も1億円の資産は大金持ちを表す一つの基準です。
先月、オーストラリアに出張して驚いたことの一つにコカ・コーラの値段があります。35年前、オーストラリアに1年ほど住んでいたのですが、当時は缶コーラの値段が50〜60セントだったと記憶しています。今回、コンビニで見かけた500ミリペットボトルの価格は5ドルでした。10倍近い値段です。豪ドルのレートを調べて見ると、偶然ですが35年前も現在も1ドル100円くらいです。オーストラリア人の同僚にコーラの話をすると、こんな会話になりました。
「35年も経っているのだから、当然だ。インフレとはそういうものだろう。日本ではどうだ?」
「日本では35年前は1ドルで、今は1.8ドルくらいだ」
「それはすごい。日本政府はどうやってインフレをコントロールしてきたのだ」
「いや、日本では政府がインフレをコントロールしてきたと評価されることはない。日本社会は長い間デフレに苦しんできたと言われている」
「デフレも困るけど、インフレの方が生活は大変だ」
確かにインフレは大変です。日本でもコメの値段が上がると多くの人の不満が高まりますが、値段が下がって怒る人はあまりいません。しかし物価も賃金も上がらなかった結果「日本のものはなんでも安い。労働力の値段まで安い」と言われるような状態になっています。この状況は、長らく企業が「いいものを安く造る」ことに注力し、賃金上昇を抑制してきた結果であり、デフレの負の側面と言えます。
さて、次は友人との忘年会でブルーカラービリオネアについて話したときのことです。友人の一人は建設業の会社で採用に携わっています。
「新卒でもキャリア採用でも、ブルーカラー職種の人気が高まっているとは思えないなぁ。大学生に現場工事の実態を話すと、表情が曇るもの」
「ブルーカラービリオネアなんて、ありえないでしょ」
と、もう一人の友人。
「ビリオネアという言葉は大金持ちという意味で使っているだけだろうね」
「そりゃあそうだよ。だって日給100万円で毎日働いても、400年以上かかるよ」
とスマホの電卓で計算した友人が言いました。
「ハイパーインフレで日給が1000万円になったら40年か、それもないな」
「現実的にはブルーカラーミリオネアなんだろうけど、それじゃあ言葉のインパクトがないのだろうね」
するとそのとき
「あっ、ブルーカラービリオネアが一人いた」
と、スマホから目を離した友人が言いました。
「えっ?だれ?」
「誰でも知っている人だよ。ブルーのユニフォームを着て、毎日現場で働いている人」
うーん、と考えている私の横でもう一人の友人が「あー、なるほど、彼はホワイトカラーでも起業家でもないけど、ビリオネアだね。しかも冬場に仕事がない季節労働に従事しているともいえる」と言いました。
ようやく私も気づき「あー、大谷翔平か」となり、そこから先は野球の話で盛り上がりました。
大谷翔平さんは、常に野球のことを考え、データやビジネス界で使われる理論も駆使して野球のスキルを高めていると言われています。
ブルーカラービリオネアは無理でも、物価上昇の荒波を乗り切るためには、スキルやマインドを常にアップデートしていくことが大切です。








