人工知能(AI)関連のセミナーに参加し、機械学習にはSupervised Learning(教師あり学習)と呼ばれる手法とUnsupervised Learning(教師なし学習)と呼ばれる手法があることを知りました。
例えば、囲碁のコンピュータプログラムにおいて、「教師あり学習」では過去の棋譜を読み込んで「定石」を覚えることからスタートします。しかし「教師なし学習」のプログラムでは過去の棋譜を分析する必要はなく、囲碁のルールに従って自己対局を繰り返すだけで強くなっていくそうです。
人間の世界チャンピオンを破って有名になった「アルファ碁」は「教師あり学習」のプログラムで、その後に開発された「アルファ碁ゼロ」は「教師なし学習」のプログラムです。
アルファ碁とアルファ碁ゼロが対戦すると、アルファ碁は歯が立たず、その上、アルファ碁ゼロは最初から定石では考えられない打ち方をするそうです。
どちらもAIなのに、なんとなく「アルファ碁」を応援したくなってくるのは私だけでしょうか?
さて、企業の人材獲得においてもAIが力を発揮し始めていますが、「定石」を無視した人物をAIが推薦してきたらどうでしょう。
例えば、ビジネスの世界とはまったく無縁の人をAIが採用すべきと判断した場合、その人を採用する決断はできるでしょうか。
AIが推薦した人物が必ず活躍する保証があるのなら、ビジネス経験がない人を採用する企業も出てくるはずです。しかし「保証」と言えるほどのデータが積み上がるまでには、かなり時間がかかりそうです。
「AIの推薦した人物を採用して失敗した場合、誰が責任をとるのか」それが日本では大きな問題になります。
「学歴のない人を採用して失敗した場合、誰が責任をとるのか」と同じ構造の問題です。
学歴に関して、ある大企業の人事マネージャーから
「我々の世代までは学歴など気にしないのですが、上の方に行くと結局は学歴がネックになってしまうのです」
と聞いたことがあります。
経営幹部の中にも「仕事さえできれば学歴は問わない」と本気で考えている人はたくさんいますが、失敗したときの責任は負いたくない、との思いもあります。
学歴の高い人を採用して失敗したのなら、社長から「なぜあんなやつを採用したんだ!」と叱責されたとき「すいません。学歴に騙されました」と言いわけすることはできます。一方で、学歴を気にせず採用した人が活躍しなかった場合「すいません。私に見る目がありませんでした」と答えざるを得ません。
AIの推薦だけを根拠に採用した人が活躍できなかった場合、
「私に見る目がありませんでした」と言う必要はなく
「AIが推薦した根拠は不明ですが、統計的には95%の確率で活躍するはずでした」
などと言えばすみます。
しかし実際にはAIの判断だけで採用を決定することはなく、人間が面接して最終結論を出すことになるでしょう。
しかし実際にはAIの判断だけで採用を決定することはなく、人間が面接して最終結論を出すことになるでしょう。
それとも
「我が社の経営企画はお笑い芸人の○○さんに任せるべきだとAIが判断したので、トランサーチさんにヘッドハントしてもらいたいのですが」
そんな依頼が来る時代になるのでしょうか…。