「なんで仕事が楽しいかって言ったらさあ、仲間と一緒にやれてるからだよね」 「そうそう、絶対そうです」 電車の中で、若い二人が会話していました。 これから交際が始まろうとしている二人だから楽しいんじゃないの、なんて思ってしまうのはオッサンのひがみですが、爽やかな男女の会話を聞いて、いい職場なのだろうと想像しました。 一方で先日面談した30代前半の男性は 「うちの上司はイチイチ細かくて、私が決められることなんてまったくないのに、制度だけは裁量労働制です」 とぼやいていました。その人が務めているのは歴史のある一流メーカーで、業績的にも好調な会社です。その会社の別な部門にいる人から「裁量労働が徹底されていて、オフィスにいる必要はまったくありません。かなり自由な職場で、今の会社にも大きな不満があるわけではありません」と聞いたことがあります。 ぼやいた方の人に「御社にも自由な職場があるようですが」と言ってみると 「うちは事業部が違えば別会社みたいなもので、我々の部門には自由な雰囲気は全然ありません。マイクロマネージメントしたがる人がたくさんいます」 との答えが返ってきました。 転職や社内公募制などによる異動が当たり前になるとマイクロマネージメント型の上司は減っていくのかもしれません。転職したい本当の理由が上司に対する不満であるケースは多く「エージェントさんには本音で話していいのですよね」と言われることもよくあります。 優秀な部下が次々と逃げ出してしまったのでは、上司は成果を上げることができません。 マイクロマネージメント型の上司やパワハラ系の上司を嫌って転職する話は珍しくありませんが、これからは上司の方が転職せざるを得ないケースも出てくるかもしれません。 「上司が会社を辞めることになったので、私は残ることにしました。あの人は前の会社もパワハラで辞めさせられたのだと思います」 ある人から、この発言を聞いたときは少し驚きました。ここでは発言者をAさんとし、Aさんの言う「あの人」をBさんとします。 「Bさんは鳴物入りでうちの会社に入ってきて、実際に成果を上げていました。しかし、非常に厳しい人で、夜中でも日曜でもメールしてきて、返事を翌日にすると怒ります。ワーカホリックとしか思えませんが、常に仕事のことしか考えていないようです。あれだけ仕事して、部下にも同じやり方を求めるんですから、成果も上がりますよ」 とAさんは言いました。 そしてAさんは以下のように推測しました。 ・人事部にパワハラを咎められたBさんが、会社にいられなくなった。 ・Bさんは前の会社も3年くらいで辞めたらしいが、同じ理由ではないか。 ・Bさんの力の源泉はパワハラだが、社会的に認められなくなってきたので、これからは成果を上げにくいだろう。 Aさんの言い分がすべて正しいわけではないとしても、パワハラを黙認しない会社は増えてきました。 部下が逃げ出す前に、上司が会社にいられなくなるケースは珍しいと思いますが、 「仲間と一緒にやれてるから仕事が楽しい」 と言える職場が、軍隊的な規律の職場より優位になっていく時代のようです。
2019年3月31日日曜日
労働市場の流動化で職場はどう変わる? 『ISO通信』 2019年3月号 vol.33
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