2020年10月16日金曜日

テレワーク反対派の会社も、変わりたいならチャンスは「今」 『ISO通信』 2020年10月号 vol.52

 独立行政法人労働政策研究・研修機構(以下、JILPT)のWEBサイトに「在宅勤務は誰に定着しているのか」というタイトルの調査レポートがありました。

調査では、緊急事態宣言期間中などに在宅勤務を経験した人に対して、7月25日(土)から8月3日(金)までの7日間に何日、在宅勤務したかを質問しています。 

詳細は下記のサイトで確認できすますが、0日と答えた人が49.8%、1~2日が20.6%、3日以上が29.6%となっています。

大雑把にまとめると「大企業」、「情報通信業界」、「高学歴」、「企画やコンサルティング的な職種」などのキーワードにマッチする人に定着しやすい傾向があるようです。

https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/046_200916.html

知り合いに「ノマド」的なワークスタイルを謳歌しているように見える人がいます。その人は大企業を辞めた後、外資系のコンサルティングファームで成果を上げ、現在はフリーのコンサルタントとして活躍しています。フリーになってからは喫茶店や自宅が彼の働く場所であり「ノマドワーカー」という言葉を知ったとき、最初に思い出したのがこの人です。
ノマドワーカーに厳密な定義はないと思いますが、働く場所(物理的なスペース)を自由に選べる人のうち、高収入の人がノマド、と勝手に思っています。フリーランサー時代の私は、働く場所を自由に選べましたが、収入がほとんどなかったので、ノマドどころか無職みたいな人と思われていたはずです。高収入ではなくても、自分の働き方はカッコいい、と誇れる人もノマドワーカーかもしれません。

さて、週に3日以上のテレワーク勤務が認められる人は、サラリーマンの身分でありながら、ノマドワーカーにもなれるでしょうか。海辺のカフェテラスで、波の作る白い泡を眺めながら仕事し、休憩時間に投稿したSNSに上司が「いいね」をつける。そんな一日が特別なことでないなら、あなたは立派なノマドサラリーマンです。

海辺のカフェでなく山小屋でも喫茶店でもいいのですが、在宅ワークからテレワークにシフトできる会社は限定的だと思います。30代の社員が、山小屋で仕事する50代上司のSNS投稿を見たら「あの人、ホントに仕事してるのかなぁ」と思うでしょうか、それとも「やっぱり、あの人はカッコよく仕事しているな」と憧れるでしょうか。逆に50代の上司が30代の部下の投稿をみて「本当に仕事をしているだろうか」と心配するか「任せておいて問題ない」と思えるか。

50代と30代がお互いに信頼できる関係であれば、上司と部下の関係である必要はなさそうです。トップの指示やビジョンがあれば、50代も30代もそれに従って動くだけ。そんな状況であれば中間管理職は不要となり、20代の若手に対してスキルを教えることが上司の仕事になるかもしれません。

前述の調査では、8月初旬の段階で在宅ワークの日数がゼロの人が半分で、週に3日以上の在宅勤務を実施している人は3割程度にすぎません。オフィスに出勤させ一般社員がサボらないよう、中間管理職に監視させたいと考える経営者も多いのでしょう。あるいは、オフィスでワイワイガヤガヤと仕事することが生産性アップにつながると考えているのかもしれません。

あと1~2年してコロナの禍が去る頃には、在宅ワークからテレワークに移行できた一部の会社と在宅勤務さえ止めてしまう会社に二極化していくような気がします。
オフィスは仕事がしやすいようにデザインされているので(そして、家はくつろぎやすいように作られていて、ついついのんびりしがちなので)私の場合は、オフィス勤務の方が効率は上がります。しかし、鬼軍曹タイプの中間管理職が職場を常に監視するような会社からは、優秀な人材は消えていくことでしょう。
経営者のみなさま、企業のカルチャーを変えたいと思っているなら、チャンスは「今」です。