スマイル、0円。
かつて、マクドナルドのメニューに明記されていました。私がスマイルを注文したことはありませんでしたが、いいキャッチコピーだと思っていました。
(学生時代「あと、スマイルも下さい」と元気よく注文していた友だちがいて、彼の性格を少しうらやましく感じていました。)
いいね、0円。
こちらは飲み会の席で聞いた言葉です。
「いいね、0円」とは、お客さまのコメントに対してガンガン「いいね」を押してもコストはゼロ円、という意味です。営業先で
「いつも『いいね』してくれて、ありがとう」
と言われたらしめたもの、だそうです。
「スマイル、0円」も「いいね、0円」もお客様に対するアピールですが、さわやかさでは「スマイル、0円」の圧勝ですね。
さて「スマイル」と「いいね」の次は「ありがとう」の値段についてです。
私は、仕事の本質は「ありがとう」と「ありがとう」の交換だと思っています。
たとえば、炎天下でのどがカラカラに乾いているとき、みずみずしいトマトをもらったら、だれでも「ありがとう」と言うはずです。
「ありがとう」だけでは申し訳ないので、もし自分がジャガイモを持っていたなら、それを差し出すことでしょう。ジャガイモがなければ、トマトをくれた人の肩でも揉みたくなるかもしれません。
トマトの価値とジャガイモの価値を比較してどちらが得かを考えたり、トマト1個分の肩揉みサービスを何秒にすべきだろうかと考えたりすることも重要ですが、
「ありがとう」と言ってもらえればお金は後からついてくる、
と考える人もいます。
トマトを売ってお金を支払ってもらった場合、一般的には売った人がお客さんに「ありがとう」と言います。トマトを買って、売り主に「ありがとう」という人もいれば、黙って持ち帰る人もいます。
黙って持ち帰る人の理屈としては、儲けさせてやったのだからお礼を言う必要はない、ということかもしれません。
しかし、おいしいトマトを安く買えたと思えば、自然と「ありがとう」と口にするでしょう。
売り手と買い手がお互いに得をしたと思うときに「ありがとう」と「ありがとう」の交換が成立します。そう考えると「ありがとう」は0円ではなく、「ありがとう」の総量が企業活動の付加価値に現れてくるとも言えるのではないでしょうか。
「テーブルの上で握手していても、その下では激しい蹴り合いが続いている。」
ビジネスや外交の世界では、そのように言われることがあります。逆に「テーブルの上でケンカしていても、下ではこっそり握っている」というケースもあるかもしれません。
仕事の世界は綺麗ごとばかりではなく、ライバル企業を戦略的に出し抜く必要もあります。
しかし「ESG(Environment、Social、Governance)投資」や「SDGs(持続可能な開発目標)」などの言葉が広まっていく世の中や、隠ぺいや腐敗体質が露見しやすい社会においては「ありがとう」をたくさん集めた企業が勝ち組企業になるかもしれません。