先月のことですが、大学時代の恩師が定年で退官しました。
大学での最後講義には400人くらいの人が集まり、熱量あふれる授業に耳を傾けました。その講義は学生や卒業生だけでなく、一般の人も対象とした公開授業で、先生とゆかりのある人なら誰でも聴講可能な授業でした。
講義の後のパーティーも盛況で、先生が顧問を務めたクラブのOBOGだけで、100人以上の人がいました。私もそのクラブの出身で、年に何回か会う友人もいれば、20年ぶりくらいのメンバーもいました。二次会も大いに盛り上がり、学生時代と同じネタで笑える至福の時を過ごしました。
パーティーの数日後まで、face bookに上がった写真などを見ながら余韻に浸っていたのですが、ある人が「完全にアウェイだったけど、とても勉強になった」と投稿しているのを見て、思わず「いいね」を押しました。
私にとってはホームの場でしたが、その人からみると完全にアウェイ。ホームの私にとっては安心で心地よい場所ですが、アウェイの人にとっては知り合いがほとんどいない場所だったかもしれません。しかし、知らない人ばかりの所へ行った方が人脈も知識の幅も広がります。
私は「ホーム」で、いつものメンバーと毎度同じ話で盛り上がることも大好きなのですが、ときどき「アウェイ」にも行くようにしています。
“こりゃあ、場違いなとこに来ちゃったな”と感じることもあるのですが、そこで聴く話は新鮮で、普段の交流では得られない情報ばかりです。
先日は大学生と社会人が、就活やキャリア形成について語り合う場に顔を出しましたが、そこで会った学生は大企業での働き方にほとんど魅力を感じていませんでした。
「大企業で働いてから、その後でベンチャーに移ることは選択肢にありませんか」
と尋ねてみると
「それも考えましたが、大企業でしか学べないこととベンチャーでしか経験できないことを比較すると、最初からベンチャーに行った方がいいと思うようになりました」
との答えが返ってきました。
大企業のサラリーマンだった頃の私がその発言を聞いたら、なにも知らないくせに分かったような口をきく学生だ、と思っただけかもしれません。しかし、ベンチャー企業で活躍している優秀な若手の話を聞くことも多くなり、ベンチャーに魅力を感じる学生の気持ちも分かります。
40代後半でベンチャー企業に転じた人からは
「うちの会社に来るなら、やっぱり若いうちですよ」
と聞きました。その会社では20代の社員が嬉々として深夜まで働いているそうですが「ついていくのが、体力的にしんどい」とその男性は言っていました。
私がそのセミナーに参加したのは、face bookの投稿がきっかけで、会場にいるのは初めて会う人ばかりでした。セミナーの後の懇親会で情報交換すると、私の話を新鮮で面白いと言ってくれる人もいました。
嬉しい!
と素直に感じました。講義を聞く形式のセミナーだと基本的には受け身の立場になりますが、懇親会では「もらうだけ」ではなくgive and takeでありたいと考えています。
アウェイの場では自分にとっての「当たり前」が、他者にとっては「新鮮」なのだと気づくこともあります。
「ホーム」やその近辺だけにいると、“世間は意外と狭い”と感じますが、「アウェイ」に乗り込むと“世界はやっぱり広い!”と実感できます。