2021年2月27日土曜日

中途採用比率の公表義務化で思うこと『ISO通信』 2021年2月号 vol.56

 4月1日から、社員数が301人以上の企業においては、中途採用比率の公表が義務化されます。

「今年度の採用実績として、わが社では新卒採用が〇〇%、中途採用が〇〇%でした」
という情報をホームページなどで公表することが、法律上の義務となるわけです。

上記のこと(労働施策総合推進法の改正)を知ったとき、国が雇用の流動性を高めようとしている姿勢の一環だな、と感じました。
この法律で、採用比率の公表を義務化されているのは、常時雇用する労働者の人数が301人以上の企業です。法律の趣旨を説明する厚労省のサイトには、リクルートワークス研究所の「中途採用実態調査(2017年度実績)」による中途採用比率の数字がありました。

従業員数 :          中途採用比率      新卒採用比率
5~299人 :          76.7%                 23.3%
300~999人 :      41.5%                 58.5%
1,000~4,999人: 40.4%                 59.6%
5,000人以上 :      37.4%                 62.6%

職業紹介事業に従事しているので、
「大企業は新卒採用重視、小企業は新卒者の採用が困難、中堅企業は社員数が100人くらいまで増えると新卒採用に力を入れ始める」
といった傾向があることは知っていました。
しかし、300~999人までの企業の新卒採用比率が6割近いこと、そして5,000人以上の大企業においても同じような割合であることは意外でした。

社員の数が増えると、新卒者を採用する余裕ができます。企業規模が大きくなってくるとなぜ、新卒者を採用したくなるのでしょうか。
新卒採用を支援する企業に勤めている知人から「スタートアップ企業の事業が安定し始め、自社の企業カルチャーを確立したいと感じる時期がきたら、新卒採用を始めるべきだ」と聞いたことがあります。新卒者の場合、自身の職業的なスキルが「就活」の軸にはならないので、企業理念への共感で就職先を選ぶこともあるからだそうです。
なるほど、分かる気がします。ただ、別な見方をすれば、新卒者は自社カルチャーに染め上げやすい、とも言えます。共感すべき企業理念が消え去り、コンプライアンス違反を気にしない風土であっても、新卒者であれば「社会ってこんなものか」と思ってしまうかもしれません。
社会人経験がある人の場合、中途で入社した企業に遵法意識がないと分かったら、この会社にいてはまずい、と思ってすぐに転職活動を再開するケースもあります。

転職相談においては「その会社には、中途で入社した人はどれくらいいるのですか?」と質問されることはときどきあるので、中途採用比率の公表には意味があると思います。

厚労省のホームページでは、今回の法律改正について「中途採用に関する情報の公表を求めることにより、企業が長期的な安定雇用の機会を中途採用者にも提供している状況を明らかにし、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進します」と記載されています。

中途採用と新卒採用の比率がどれくらいだと、生産性がもっとも高まると言えるのかを知りたいところですが、どなたかご存じのかたがいたら教えて下さい。
(あるいは、4:6が黄金比率だから、300人以上の企業ではそれくらいの数字に収れんされてきたのでしょうか。)