2023年6月24日土曜日

『ISO通信』第84号

( 『ISO通信』はメールマガジンで配信した内容をnoteやブログにも載せています。今回はメルマガを配信させてもらっている方を対象にアンケートをお願いしました。)

月に一度のペースで『ISO通信』を配信させてもらっていますが、スタートして7年になりました。

年間12回×7年で今回が第84号です。

これまでメールマガジンの配信をサポートしてくれた会社が10月でサービスを停止することになり『ISO通信』を継続するには「配信スタンド」を引っ越しする必要があります。

一方、最近はネタに困ることが多くなり「ちょうどよい機会なので終りにしてしまおう」と思う気持ちもあります。

メールマガジンの配信ボタンを押すにはそれなりの勇気がいります。始めたときは「こんなものを大勢の人に送りつけてしまっていいのだろうか?」とかなり悩みました。送ってみると思わぬ反応があり、やってよかった、と思うのですが、ときどき配信停止を希望する人もいて、ちょっとへこみます。

何冊も本を出している著名な先生に「今でもメルマガの送信ボタンを押すときには、それなりの勇気が要ります」と話したとき
「とってもよく分かります。私も、この程度の話しかできないのに、セミナーに登壇しちゃっていいのだろうか?とよく思いますし、本を出版するときも同じような気持ちになります」
との答えが返ってきました。こんなに立派な先生でもそうなんだ、と思い少し安心しました。

さて、ここでお願いです。

以下のアンケートにご協力ください。質問は一つだけです。

A:今後も『ISO通信』の配信を希望する。
B:今後は『ISO通信』の配信を希望しない。
C:どちらでもいい。

回答は下記のサイトからお願いします。

(以下は、noteやブログで読んで下さっている方へ向けたURLで、上記の質問とは別な内容です。)

https://forms.gle/iRTSuEKAUjjJVAaf6

(以下、メールマガジンに記載した内容に戻ります。)

このタイミングではお名前やメールアドレスなどを確認しませんので、気軽にお答え下さい。

AがBを上回った場合は、配信スタンドを引っ越してメールマガジンを継続しようと思います。

Bの方が多い場合は休止して、今後のあり方を検討します。

この配信スタンドは来月まで利用可能なので、メルマガの継続か休止かは、85号にて連絡致します。

それでは、みなさま、よろしくお願いします!

2023年5月28日日曜日

アリとキリギリス、どちらもハッピーな未来? 『ISO通信』第83号

 


国立社会保障・人口問題研究所が4月26日に公表した資料の冒頭に
「総人口は 50 年後に現在の7割に減少し、65 歳以上人口はおよそ4割を占める」
との見出しがありました。
「それは大変だ」と思う気持ちと「50年後って想像がつかない」と思う気持ちが半々でした。
50年も先のことを心配するのは現実感に乏しいので、公開された資料の中から2020年と2045年の数字を抜き取ってみます。

【総人口】
2020年:12,615万人
2045年:10,880万人
差:▲1,735万人

【0~14歳の人口】
2020年:1,503万人
2045年:1,103万人
差: ▲400万人

【15~64歳の人口】
2020年:7,509万人
2045年:5,832万人
差:▲1,677万人

【65歳以上の人口】
2020年:3,603万人
2045年:3,945万人
差:342万人

〔国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(令和5年推計)」より抜粋〕

上記の人口は出生率を1.36と仮定したときの数字です。
生産年齢人口と呼ばれる15~64歳の人口は25年間で1,677万人も減少する見通しです。
人口は減少しますが、
・仕事をする女性が増える
・外国人労働者が増える
・定年後も働く高齢者が増える
これらの要因によって実際に働く人の減少幅は緩和されます。
しかし、日本の賃金水準が上がらないと日本で働きたいと考える外国人の数は減る可能性もあります。

2045年の日本において15~64歳の人口は全体の53.6%でしかありません。この世代だけで社会全体を経済的に支えていくことは困難なので、国は75歳くらいまでの雇用確保を法律で義務づけることになるでしょう。経済産業省や厚生労働省が盛んに「リスキリング」の旗を振る理由も分かります。
いっそ50歳からの4年間を第二の義務教育期間とし、強制的に学ぶ時期を作ってはどうでしょうか。50歳になったら退職し、義務教育の大学や大学院院を卒業後、それから20年くらい働くイメージです。暴論ですが、それくらいのことをしないと、お金と意欲のある人だけがリスキリングでき、老後の格差がますます広がってしまいそうです。

一方、まったく別なシナリオもあり、数十年後に働いているのはAIとロボットだけで、ほとんどの人間は遊んで暮らせるという話も聞いたことがあります。
学ぶことが好きな人はリスキリングして働き、高い収入を得る。遊ぶことが好きな人はベーシックインカムで十分に暮らせる。そんな時代がやってくるのでしょうか。
アリさんタイプもキリギリスさんタイプも、それぞれの価値観に沿った理想を体現できるハッピーな未来であってほしいものです。

2023年4月29日土曜日

ダイバーシティはコストですか、投資ですか?『ISO通信』第82号

 

「ダイバーシティとかエクイティ&インクルージョンとか言うけど、結局、日本人はインクルージョンしてもらえないと思うよ。英語が流ちょうなら別だけど」
「いや、これからはAI翻訳でかなりいけるんじゃない」
飲み会の席で、そんな会話がありました。
 
ダイバーシティはダイバーシティ&インクルージョンに進化し、さらにはダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに深化しています。
 
ダイバーシティは多様性を受け入れること
ダイバーシティ&インクルージョンは、多様性を受け入れ仲間として認めること
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンは、仲間として認めた人に公平な機会を用意すること
私はそんな風に理解しています。
 
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)におけるエクイティ(公平性)を説明するときの例として、ハサミの話を読んだことがあります。
10人の人がいて右利きが9人、左利きが1人という状況のとき、右利き用のハサミを10個用意したのでは公平とは言えません。左利き用のハサミも用意している組織はDE&Iを理解していることになります。
 
さて、世界各国から10人の人が集まっていて、英語ができる人が9人、できない人が1人という状況のとき、DE&Iを理解している組織は英語のできない人のためにどのような対応ができるでしょうか。
通訳をつけることは解決策の一つですが、それを「公平」と思う人もいれば「優遇」と感じる人もいるでしょう。
飲み会の席で「結局、日本人はインクルージョンしてもらえないと思うよ」と言った友人は、通訳なしで会話ができないと仲間として認めてもらえないと主張しました。そして「AI翻訳でかなりいけるんじゃない」と言った友人は「スマホに向かって話かけるとイヤホンから聞こえるのは母国語というシステムがあれば、英語ができなくても大丈夫」と続けました。
「すると全員がそのシステムを使う必要があるよね。会議の時間はやってくれるかもしれないけど、ちょっとした雑談やパーティーの席では使わないよ」
飲み会の再現はこの辺にしておきますが、さらに進んだ翻訳システムが普及するのは意外と近い将来かもしれません。
 
DE&Iを推進するためには、たくさんの準備をしておく必要があります。
・左利き用のハサミを用意する。
・工場の女性用のトイレを増やす。
・車いすで移動しやすいオフィス環境を整備する。
・いろいろな宗教に配慮した食事を準備する。
他にもいろいろあると思いますが、多様な人たちに公平な機会を用意することは、コストの増加につながりそうです。しかし「それはコストではなく人への投資」と考えることができた組織に優秀な人があつまり、大きな利益につながる時代になるのでしょう。

2023年3月26日日曜日

卵が先か、賃金が先か?『ISO通信』第81号(2023.3.26)

 


「たまごの値段が上がっていて、ビックリした」
「ついにたまごも物価の優等生じゃなくなっちゃったね」
「最近は、何が物価の優等生って言われているか知ってる?」
「うーん、なんだろう?」
「賃金」
少し前に聞いたジョークですが、つい笑ってしまいました。

たまごと賃金、どちらが物価の優等生なのだろうと気になり、調べてみました。
まずは、たまご。以下はLサイズ 1kg当たりの東京での標準価格です。
2000年3月1日:220円
2005年3月1日:265円
2010年3月1日:165円
2015年3月2日:203円
2020年3月2日:190円
2023年3月1日:330円
JA全農たまご株式会社が公開している「相場情報」のサイトで検索した結果です。(相場情報では土日や祝日を除く毎日のデータを検索することができます。)
長い間、200円前後で推移していた価格が直近では330円になっているので「物価の優等生ではなくなってしまった」と感じるのも納得です。

では賃金はどうでしょう。大卒初任給を厚生労働省のサイトで調べてみました。以下は賃金構造基本統計調査から抜粋した数字です。
2000年
男性:196,900円
女性:187,400円

2005年
男性:196,700円
女性:189,300円

2010年
男性:200,300円
女性:193,500円

2015年
男性:200,200円
女性:198,800円

2019年
男性:212,800円
女性:206,900円
(厚労省は初任給に関する調査を2019年で終了しています。終了の理由を探してみましたが、見つかりませんでした。) 
初任給も「物価の優等生」と揶揄されてしまうほどの安定ぶりです。しかし、賃金にも上昇の気運が表れてきました。今年の春闘ではトヨタ、ホンダ、日産、日立製作所、パナソニックHD、三菱電機、富士通、川崎重工、三菱重工などの大企業が労働組合の要求に満額で回答しています。ホンダでは春闘の結果が実際に反映される6月以降、大卒初任給が25万円1千円になるそうです。
政府主導の賃上げ要請は数年前からありましたが、今年の賃上げに関しては、物価上昇で家計が悲鳴を上げ、経営者も組合の要求に理解を示したのでしょう。

さて「賃金が上昇するとやる気も上がる」ということになるのでしょうか。
モチベーションの研究で有名なハーズバーグの「二要因理論」によると、賃金の上昇は不満を解消する要因となっても満足度を高める要因にはならないそうです。(満足度を高める要因となるものは達成感や成長実感など。)
「賃金が高くても達成感がなければ満足できない。達成感や成長実感があっても賃金が低ければ不満は残る」ハーズバーグ先生の理論をそんな風に単純化して覚えていたのですが「二要因理論」という言葉は頭の中に残りにくいと感じます。英語の「Two-factor theory」の方が覚えやすい気がするので「よい職場には不満を解消させるファクターと満足度を高めるファクターの両方がある」と覚えたいと思います。
経営者が社員に対して「高い給料を払っているのだから文句を言うな」と言いたくなったら、どのファクターが不足しているのかを考える必要がありそうです。
 
(モチベーションとやる気の違いや、そもそも「やる気」ってなんだろうという疑問も出てきたのですが、長くなりそうなので、また別な機会に。)

2023年2月25日土曜日

ChatGPT VS.吾輩 『ISO通信』第80号


 話題の人工知能ツール「ChatGPT」に原稿を書いてもらいました。

私が依頼した内容は下記です。
“ 『ISO通信』のような文体で記事を書いて下さい。今回のテーマは「日本社会において、年功序列と成果主義はどちらが好ましいか?」です。”
この依頼に対して出来上がった原稿が下記の内容です。

===以下の内容は「ChatGPT」が作成した文章です。===
皆さん、こんにちは。今回は、日本社会において年功序列と成果主義のどちらが好ましいかというテーマについてお話しします。

まず、年功序列についてですが、これは昔から日本の企業や公務員の間で非常に重視されてきました。長年勤め上げることによって、徐々に昇進していくという仕組みです。これによって、経験やノウハウが重んじられ、職場での信頼感や安定感が生まれます。しかし、一方で、若手の新しいアイデアや手法を取り入れにくいというデメリットもあります。

一方、成果主義は、個人や組織の能力を最大限引き出し、成果を重視する考え方です。目標達成や生産性の向上を目指して、業績や実績に基づいた報酬や評価を行います。これによって、モチベーションが高まり、より良い成果を生み出すことができます。しかし、成果を達成できなかった場合には、厳しい評価が下されることもあります。

では、日本社会において、どちらが好ましいかというと、一概には言えません。企業や業界によっても異なるでしょうし、個人の価値観や性格にも影響を与えます。ただし、今後の社会情勢を考えると、成果主義に価値があると思われます。グローバル化が進む中、日本企業が競争力を維持するためには、新しいアイデアや技術を積極的に取り入れ、成果を上げることが必要不可欠です。また、世代や背景の違う人々が多様な価値を持ち合わせている現代社会において、年功序列だけでなく多様性を尊重し、成果主義的な考え方を取り入れることが、企業の活性化につながると考えられます。

以上、今回は年功序列と成果主義の両方について考えてみました。皆さんも、自分に合った働き方を見つけ、成果を上げることで、より豊かな人生を送っていただければ幸いです。
===以上の内容は「ChatGPT」が作成した文章です。===

うーん、なんとなく私が書きそうな文章のような気もするし、違うような気もします。
そこで「夏目漱石のような文体で記事を書いて下さい。今回のテーマは『日本社会において、年功序列と成果主義はどちらが好ましいか?』です。」とインプットしてみました。
そして出来上がった原稿の冒頭が下記です。
「余は夏目漱石である。日本の社会には、年功序列と成果主義という二つの価値観がある。」
「吾輩」じゃないのかよ、と思わずツッコミたくなりました。次に「夏目漱石」の代わりに「紫式部」と入れてみました。
「私が生きた平安時代においては、あまり年功序列という言葉は聞かれなかった。しかし、家柄や出自によって社会的地位が決まることが多かった。その一方で、才能ある人はそれを示し、自らを高めていくことが重要視されていた。」
こんな文章で始まり、原稿全体では800文字くらいの量になっています。

続いて、世界的にも有名な作家の名前を入れてみました。現役のかたなので名前を控えますが、出来上がった原稿の冒頭は下記です。
「僕が思うに、日本社会において年功序列と成果主義は、どちらが好ましいかという問いかけ自体が、あまりに単純化されすぎている。」
正直「怖い」と感じました。「この原稿は紫式部が書いたものです」と言っても信じる人はいませんが、現役の作家の名前を使って「作家の〇〇さんは、年功序列と成果主義に関して、次のような意見を述べています」と書いて、ChatGPTがつくった文章を載せたら信じる人も出てきそうです。

ChatGPTが作った文章を読むと、明らかに誤りであると判断できるものもありますが、自分に知識がない分野の記述に関しては「なるほどそうかもしれない」と思える文章の方が多い印象です。
現時点では「出てきた回答を鵜呑みにしてはいけない」「内容については検証が必要である」と感じますが、利用者が増えて情報の精度が高まっていくと「まあ、信じてよいのだろう」という方向に気持ちが変わっていくような気もします。
そのような段階になっても「あれ、何かへんだそ」と感じるアンテナを自分の中に残しておかないと、AIにコントロールされてしまうことになりそうです。

さて、『ISO通信』は月に1回のペースで書いていますが今回で第80号となりました。「この話と同じようなこと、前も書いたなぁ」と思うことが増え、ネタ探しに苦労するのですが、今回はちょっとズルして、文字の半分くらいをChatGPTの文章で埋めました。
ちょっとズルしちゃったな、と思う気持ちが人間ですが、あと1年も経つと『ISO通信』の内容が、着眼点のすばらしい論理的な文章になっているかもしれません。その時は「あ、これ、全面的にAIが作成した文章だな」と思って下さい (笑)

2023年1月30日月曜日

情報化社会のスピード感 『ISO通信』第79号

 「世界は常に変化している。現代はこれまでの歴史において最も変化のスピードが速い時代である。しかし、今日を起点とした歴史がこれから始まるなら、2020年代は変化の速度がもっとも緩やかだった時代と評価されるだろう」
これは、トランサーチ(私の所属先)のロンドン本部が各国のメンバーに向けて行なったセミナーで聴いた言葉です。
英語で聴いたセミナーだったので、少し意訳していますが、覚えておくべき言葉としてメモしました。

さて、次の文章は、上記のセミナーで聴いた言葉ではありません。
"やや先ばしったいいかたになるかもしれないが、わたしは、たとえばコンピューターのプログラムのかきかたなどが、個人としてのもっとも基礎的な技能となる日が、意外にはやくくるのではないかとかんがえている。すでにアメリカでは、初等教育においてコンピューター用の言語 FORTRAN をおしえることがはじまったようだ。"

FORTRAN? いつの時代の話をしているの?と思った方もいるかもしれません。しかしこれが、1969年に出版された本(梅棹忠夫 著『知的生産の技術』)にあった文章だと知ったら驚くのではないでしょうか。
プログラミング言語のFORTRANは1950年代に開発されたそうです。1969年当時、アメリカの初等教育において、どのようにプログラミングが教育されていたのか存じません。しかし、日本の小学校でプログラミングが必修化されたのは2020年度です。
IT分野に関して日本は周回遅れと言われますが、アメリカとは半世紀の差があったようです。(kindleの「あなたへのおすすめ」に従って読んだ)『知的生産の技術』に書かれていた内容をもう少し紹介します。以下、仮名づかいも含めて引用です。

“社会には、大量の情報があふれている。社会はまた、すべての人間が情報の生産者であることを期待し、それを前提として組み立てられてゆく”
“情報産業こそは、工業の時代につづくつぎの時代の、もっとも主要な産業となるだろう”
これらの文章を読んで、著者の梅棹忠夫氏(故人)も変化のスピードが常に最速であることを意識していたのだろうと想像し、冒頭の言葉を思い出しました。

SNSの普及で、すべての人間が情報の生産者になれる時代になりました。社会には大量の情報があふれ、Amazon、Google、facebookなどがおすすめしてくれる情報が、私にとっての身近な情報になっています。そして「50年以上前からプログラミング教育が実施されていた国には、ちょっとかなわない」と思ってしまいました。
しかし、サッカーボールの中に内蔵されたICチップのおかげで、ボールが1ミリだけ線の上に残っていたか否かを判別できる時代です。また、家の鍵をかけ忘れたときに外からスマホで施錠ができる時代です。このようなIoTの分野なら、工業に強みがある日本にもチャンスが残されていそうです。

明治維新の頃や太平洋戦争が終わった頃、日本は先進国と50年以上の差があったのではないでしょうか。IT分野に50年の差があるとしても、きっと追いつけるはずです。

個人的にはIT分野が得意とは言えませんが、知識を常にアップデートし続けることの重要性も『知的生産の技術』に書かれていました。時代から置き去りにされないように、古い本からも新しい本からも学んでいきたいと思います。

2022年12月30日金曜日

PK戦も社内プロジェクトも、立候補した人に任せてみる? 『ISO通信』第78号

 

サッカーに関しては、ワールドカップのときだけ盛り上がる「にわかファン」なのですが、今年の日本代表チームは過去に例のないくらい「一体感」があるように見えました。ゴールが決まった瞬間は控えの選手まで喜びを爆発させていて、全員が一つの目標に向かっていると思えたのです。過去の代表チームが得点した場面を忘れているので、客観的に比較できるわけではありません。しかし、PKを蹴る選手を立候補で決めていたことについて色々と考えているうちに、やはりこのチームは一つにまとまっていたのだと思えました。

日本はPK戦の末クロアチアに破れ、ベスト8に残ることができませんでした。PKを蹴る選手を立候補で決めていたことを知ったとき、最初は疑問に思いました。PKを蹴る選手は監督が決めるべきだと思ったからです。プレッシャーのかかる場面で、どの選手をどの順番で使えば勝てる確率が高いのか、それを決断するのも監督の仕事です。代表チームの森保監督は立候補した人に蹴らせることが、最高のパフォーマンスにつながると考えたのでしょう。
しかし、それでいいのでしょうか。一番下手な人が立候補したらどうするのだろう?それが最初の疑問でした。日本を代表する選手たちなので、スキルにほとんど差はないのだろうと思ったき、二つ目の疑問が浮かびました。
チームメイトから嫌われている人が立候補したらどうするのだろう?と思ったのです。
「ちょっと待て!お前が蹴るくらいなら、俺が蹴る」
そんなことを言い出す選手が現れたりしないのでしょうか。おそらく、その心配がなかったのだと思います。立候補するだけの自信がある選手や、勇気を出して「蹴る」と言える選手にPKを任せることができた。それをチームの全員が納得できたのでしょう。

ビジネスのシーンでも何らかのプロジェクトを始めるときに、立候補でメンバーを募るケースがあります。しかし、いつも同じような人が立候補している状態になっていないでしょうか。そして周囲の人が「またあの人が目立とうとしている」とか「立候補の形はとっているけど、どうせ上司が根回ししているのだろう」と思っているなら、チームに一体感があるとは言えません。

立候補した人に命運を託すような気持ちになれるチームを、森保監督がどのようにして作ったのかが気になり、インタビュー記事をサイト上で探してみました。
・個々の選手に自分の良いところを出してもらう。
・強い上下関係ではなく、フラットな組織づくりを目指す。
・個人の自主性と規律の両方を大切にする。
・全員で切磋琢磨し、個々の力をレベルアップさせる。
ニュース記事を拾い読みした印象としては「ボス型のリーダーシップ」よりも「サーバント型のリーダーシップ」に近いと感じました。マネジメントのスタイルやリーダーシップのあり方に唯一の正解はありません。しかし、立候補した人が称えられ、応援されている状態なら「その組織を離れたくない」「自分も入りたい」と思う人が増えていくでしょう。

2022年11月25日金曜日

パワハラと指導の境界線 『ISO通信』第77号


「私の部下だった人物は、後年、パワハラを否定しました。しかし、会社はパワハラ認定を取り消そうとしないので、転職を考えるようになりました」

40代後半の男性から、3年ほど前に聞いた言葉です。以下では、その男性をAさんとし、かつてAさんの部下だった20代の男性をBさんとしています。

Aさんの主張による事実関係は以下となります。
・Aさんのグループに新卒2年目のBさんが異動してきた。
・Aさんのグループには他にも複数の若手社員がいた。
・部下に対する指導に関しては、必要に応じて厳しい態度をとることもある。
・それは部下が成長することを願っているからであり、いやがらせをしているつもりは一切ない。
・指導の方法に関しては、Bさんに対しても他の若手に対しても差をつけることはない。

・ある日、Bさんのお母さんが、会社の総務部に対して、私(Aさん)がBさんにパワハラしていると訴えてきた。
・Bさんのお母さんとBさんが、総務部に対してどのような説明をしたのか、詳しい話を総務部から聞いていない。
・総務部は私の説明をあまり聞いてくれなかった。
・そして、私の指導はパワハラに該当すると認定され、私は他部署に異動することになった。

・それから2年が経ち、Bさんからメールで連絡がきた。
「Aさんに指導してもらったからこそ、今の自分がある。Aさんの下にいたときは、つらいと感じていた。しかし、あれから2年が経ち、Aさんの指導方法が正しかったと今では思う。あの頃は気持ちがへこんでいたので、母親の行動を止める元気がなかった。今考えれば、パワハラというほどのものではなかった」
・Bさんは総務部に対しても同じことを言ってくれた。しかし、総務部はパワハラ認定を取り消すつもりはなかった。
・過去のパワハラ認定が誤りだったことを認めると、自分たちの評価が下がることを恐れているのだろう。
・異動先の部署で頑張り、指導方法も変えなかったのは、自分が正しいと信じていたからであり、いつか会社もそれを分かってくれると思っていた。
・しかし、Bさんがパワハラでなかったと言ってくれたのに、それを認めない会社に愛想がつきたので、転職することを決意した。
こうしてAさんは3年ほど前に転職しました。
立場上、Bさんの主張を聞くことはできないので、上記はAさんから見た事実となります。また、Aさん個人の特定を避けるため、これまでの内容には少し脚色があります。

現在のAさんは部長の立場であり、社長から厳しい指導を受けることもあるそうです。
「うちの社長は、厳しく指導する人と優しく指導する人を意識的に分けていると思います。厳しくされているグループの方が期待されていると思ってしまう私はマゾ体質ですかね」
と言って笑っていました。
Aさん自身は、部下を厳しく指導することをやめたそうです。
「パワハラに過剰反応する世の中になってしまいましたからね。しっかり教えてあげれば、もっと伸びる若者もいるのに、もったいないですよ。でも、これが今の日本の姿ですね」
Aさんはそんな風にも言いました。

私自身はパワハラに関しては断固反対の立場です。しかし、日本人はリスクをゼロ化する方向に過剰反応しやすいと思うこともあります。
「しっかり教えてあげれば、もっと伸びる若者」と「指導を受けなくても、自発的に学べる若者」の差が、大きく開いていく時代になりそうです。
指導がハラスメント化しないように注意しつつ、伸びしろのある人たち(若者もベテランも)を導いていくのがリーダーの役目であると思います。

2022年10月29日土曜日

会社が分割されたら痛みを感じますか? 『ISO通信』第76号

 


会社を廃業することを決意した男性から、転職についての相談を受けました。 
「ジリ貧になる前に撤退しました。黒字で借金のない今が会社を畳むときだと判断しました。しかし、世間は私を経営に失敗した人だと思うでしょう。転職活動で苦労することは覚悟しています」
とその男性(Aさん)は言いました。Aさんは電気工事を請け負う会社を経営していましたが、後継者がいないことや競争の激化で利益水準が下がっていることから、廃業を決意したそうです。
「創業して50年、父の跡を継いで20年。利益が出ていないわけじゃないのに、なぜ廃業なのかと散々に言われました」
私はAさんに
「何度も聞かれたと思いますが、M&Aで譲渡することは考えなかったのですか」
と質問しました。
「私にとって会社は自分そのものでした。半分に分割されたり、そっくり他人のものになってしまうことは耐えられませんでした。ほとんどの社員の行き先を世話することができたので、最低限の責任は果たしたと思います。M&Aの会社の人からは、譲渡先を探せば数億円で売れますよ、と言われましたが、自分で将来性がないと思っている会社を高く売る気にはなれませんでした」
この発言を聞いて、いろいろなことが頭に浮かびました。
・非常に潔い人だ。
・自分が社長なら、M&Aで高く売りたいと考えるだろう。
・実際には、経営状態が厳しくて売れる状態ではなかったのかもしれない。
などと考えましたが、真っ先に思ったことは会社を自分の体のように感じていることの凄みでした。
体を半分にされるくらいなら、廃業を選んでしまうというのは、経営者のエゴかもしれません。しかし、それくらいの覚悟がないと、会社を存続させることは難しかったのでしょう。

この話を聞いて、かつての上司から叱責されたときのことを思い出しました。
「お前はなぁ、社長の気持ちになって仕事したことなんてないだろ!俺はあるよ。俺は社長にはなれないけど、社長の気持ちにはなれるんだよ!」
当時の私は課長にもなっていなかったので、社長の気持ちなれと言われてもムリ、と内心で思いました。しかし後から考えて「社長にはなれないけど、社長の気持ちにはなれるんだよ」と言った部長の言葉をカッコいいと思いました。そして、自分が担当している顧客の前では、自分が会社を代表しているつもりで会話するようになりました。しかし、交渉が行き詰まると先方の課長から
「磯さんと話してもらちがあかないので、部長の〇〇さんと一緒に来て下さい」
と言われてしまいます。そんなとき
「部長が来ても、社長が来ても、私と同じことを言うはずです」
と言ってみたこともあるのですが、実際は部長が妥協点を示して交渉がまとまることがほとんどでした。

それでも、自分が会社を代表している気持ちで仕事に臨むことは大切です。それを習慣にしていれば、会社を自分の体のように大切にしている人からも信頼されるようになるでしょう。

2022年9月23日金曜日

踊るダイバーシティー 『ISO通信』第75号

 


手元に本がなかったので、久しぶりに書店に入りました。Amazonで本を探すときと違い、いろいろなジャンルの本が目に入ってきます。
そして購入したのが『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ著)でした。
2019年6月に刊行された本ですが、すでに文庫化されています。ご存じの方も多いと思いますが、著者は福岡県出身の女性でアイルランド人の男性と結婚し、英国で暮らしています。本のタイトルにある「ぼく」が著者の息子さんのことだと分かると「イエローでホワイトだと、ちょっとブルーになることもあるのだろうな」と想像することができます。そして「人種差別や多様性などについて書いてある本なのだろう」と思い、分かったようなつもりになって、買って読むまでの気持ちになりませんでした。しかし友人の勧めもあって読んでみると、新鮮でとても面白い本でした。
本の一文を引用させてもらうと「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」とあります。ダイバーシティー、移民、格差社会などの問題について詳しい人なら「やっぱり想像できそうな内容なので、一冊まるごと読むのは時間に余裕のあるときにしよう」と考えるかもしれませんが、そんな風に思った人にこそ、是非、読んで欲しい本です。

本を読みながら、半年ほど前のオンラインセミナーでの議論を思い出しました。セミナーのテーマは『労働力人口の減少』で移民の受け入れが解決策の一つとして提示されていました。セミナー後半のフリートークの様子を会話形式で記載してみます。

Aさん「日本社会はまだ、移民を受け入れられるほど寛容ではないので、私は反対です」
Bさん「私は移民の受け入れに賛成です。人手不足の問題を解決するには、外国人と共生できる社会を作っていくことも重要だと思います」
Aさん「近所に外国人がたくさん住んでいる団地がありますが、うるさいんですよ。住民の20%くらいが外国人で、休日になると団地の外からも仲間が集まってくる。昼間っから階段の踊り場で飲んだり、歌ったりしている。常識がないんですよ」
Bさん「近所迷惑にならない範囲でやってもらうように頼むしかないと思うのですよね。頼むという言葉で弱いなら、教育する でもいいかもしれません。日本社会のルールやマナーを覚えてもらうように、日本人も努力すべきじゃないですか」
Aさん「教育して効果のある連中ならいいですが、簡単じゃないんです。他の皆さんにも聞きたいのですが、自分の家のとなりに、家賃が安くて外国人もOKの公営団地が建ちそうになったらどうします?歓迎したい人は手を挙げてください」
オンラインセミナーの画面には20人以上の人が映っていましたが、挙手したのはBさんともう一人だけでした。
Aさん「外国人と共生できる社会をつくることは大切だと思います。でも、いざ自分の家の隣に来るとなったら、心の準備が出来ていない人が多いと思います」
時間が限られているため司会者が場を収めて次の話題に移りましたが、気持ちの中にモヤモヤが残りました。

前述の本を読んでこの件を思い出し、そして義父のことも思い出しました。義父は自治会長を務めていて「外国の人にも盆踊りに参加してもらいたいし、向こうの国の踊りを披露してもらう時間もつくりたい」と言っていました。コロナ禍で地域のお祭りは見送りが続いていますが、次のお祭りのときに外国の人がいたら、話しかけてみたいと思います。
仲良くなれば「うるさい」を「賑やか」と感じるかもしれません。