「小麦粉の価格が高騰し、パンなどの値段が上がりそうです」
テレビのニュースを見て、胃袋と胸を同時に締め付けられたような痛みを感じました。
今から11年前のことです。
当時の私は実質的に無収入で、貯金を切り崩しながら生活していました。サラリーマンを辞めて、未経験のフリーランスライターに挑戦していた時代です。
その頃、幼稚園に通っていた長男は高校生になりました。彼に
「お父さんって『ユメ追っちゃった系』の人だったんだ」
と言われたときは、一瞬ガクっときたのですが「今でも追いかけているよ」と返しておきました。
前回のユメを追っちゃってた頃の私は40歳の手前で、毎日自分の部屋にこもって原稿を書いていました。物書きとして収入を得ることを諦め、サラリーマンに戻ったのは2010年の5月です。あれから10年が経ち、再び自分の部屋にこもって仕事する毎日が来るとは思いませんでした。
しかし、10年前とは大きな違いがあります。「これから業務を開始します」と毎朝、職場の仲間にメールを送っていることです。4月6日まで同じフロアで仕事をしていた同僚と会う機会はなくなりましたが、みんなが「これから、仕事を始めます」とメールで声をかけ合うだけで、自分が職場の一員であることを自覚できます。
時差出勤から完全在宅に切り替わって3週間になり、テレワークにも慣れてきました。8時に仕事を始め、10時に休憩して、12時にお昼を食べます。午後は15時に休憩を入れ、18:00頃にジョギングし、必要に応じて残業しています。
もちろん、オンラインでの打ち合わせや転職相談などが入るので、上記のパターンにならないことの方が多いのですが、午前と午後に30分の休憩を設けると、その他の時間の集中力が高まると感じています。
休憩時間にはコーヒーを飲みながら、新聞を読んだり、WEBサイトを見たりしています。在宅勤務を始めた頃は、新型コロナや景気動向などのニュースを見てしまう時間が細切れにありました。しかし、休憩時間を多めに設定したことで、それ以外の時間にニュースサイトを見ることはなくなりました。
「午前と午後の休憩時間は、人事制度上、認められているのですか?」と質問したくなった人もいると思いますが、今は緊急事態なので大目に見てもらうことにしましょう。
某社の人事マネージャーと会話しているときに「好きな時間に休憩している、私みたいな社員もいると思いますが、リモートでも管理したくなりますか」と質問してみました。その人事マネージャー曰く
「サボる人は会社にいても自宅でも、どっちにしてもサボるので、あまり気にしていません。むしろ、働き過ぎてしまう人に注意しています。売上が落ちないように必死で働いてくれた結果、過労で倒れてしまったのでは元も子もありません」
とのことでした。そして「新年度の目標数値を下方修正してもいいので残業はしないように」とメッセージを出したそうです。「さすがホワイト企業ですね」と言うと
「いや、頑張りすぎてしまう社員を過労から守る意味もあるのですが、自宅でのんびり仕事をして残業時間を多めに申請してくる社員を牽制する意図もあります」
と返ってきました。なるほど。
さて、在宅ワークのペースには慣れてきましたが、社会や経済の情勢は厳しく、売り上げを伸ばすことは困難な状況です。口では「ピンチをチャンスに」と言いながら「今は仕方がない」と甘える気持ちもあります。しかし、10年前に「どうしてデフレなのに、小麦粉の値段が上がるのだ。パンの値上げはヤバイ」と感じた恐怖は今でも鮮烈です。会社の仲間がいると思って油断していると、船ごと沈んでしまうかもしれません。
STAY HOMEなゴールデンウイークが始まったので、改めてピンチをチャンスにする方法を考えてみたいと思います。