転職相談の仕事では、公的なアンケート結果には現れにくい本音を聴くことがあります。
「テレワークっていいですよね。上司が怒鳴り出したらボリューム下げちゃうんで、あまり怖くありません」
なるほど、確かにそうかもしれません。テレワークでもパワハラをする人はいるようですが、怒鳴る傾向がある人とビデオ通話するときは、スピーカーの音量を下げておけば圧力は半減するでしょう。
オフィスでのセクハラに困っていた人も、テレワークなら身体接触の心配はありませんし、ジロジロ見られているように感じる不安も減るはずです。
一方で、オフィス勤務に戻ったことを歓迎している人もいます。
「テレワークに対応できない旧世代のように思われてしまいそうですが、私はオフィスの方が働きやすいですね。やっぱり、オフィスは仕事しやすいようにデザインされていますよ」
このかたとは電話で話したのですが、自宅には仕事部屋がなく、背後の家族の動きを気にしながら、オンラインで会議することにストレスを感じていたそうです。
テレワークを継続している人からは
「うちでは、オンラインお茶会が定着してきました。お茶会のときは仕事の話でも、うわさ話でも自由に話せることになっています」
と聞きました。その人の会社では月水金の15:00~15:30をオンラインお茶会の時間に設定し、だれでも自由に参加できる部屋が複数あるそうです。部屋に入るためのURLは全社員に公開されているものもあれば、親しい人だけに知らせているものもあり
「今のところ、休み時間にはカウントされていません」
とのことでした。
オンラインお茶会の時間は仕事時間なのか、休憩時間なのか。
あと2~3年すると「まだそんな議論してるの?わが社は時間管理を止めました」と言う会社が増えていることでしょう。テレワークや副業などが当たり前になると、時間よりも成果で管理した方が合理的です。
しかし、時間で管理しないと無制限に社員を働かせようとするブラック企業や、自らの意思で働き過ぎた結果、健康を維持できなくなる人も出てきます。
自律的に時間や健康を管理して成果を上げる社員がたくさんいて、オフィスワークもリモートワークも自由に選べる職場が理想的ですが、そんな会社に合格できるのは、ごく一部の優秀層だけのような気もします。
優秀な人が集まるから理想的な職場になるのか、理想的な職場環境を用意すれば社員が自律的になっていくのか?
それとも、人は易きに流れるものだから、管理の少ない環境では労を惜しむ社員が増えるのか。しばらくは模索が続きそうです。
さて、在宅ワークの期間中、私自身は自律的に働くことができているつもりでしたが、オフィスワークを再開してみると「他律」があった方が(つまり、上司の眼を近くで感じているときの方が)、SNSなどを見ている時間が減ったような気がします。
SNSが仕事につながることもあるので、その時間が減ればよいわけではないのですが、在宅ワークでは「まあ、これも仕事のうち」と甘える傾向がありました。
自律的な自分を樹立するための修行は、まだまだ続きそうです。