日本のIT企業に勤めている中国人の男性から転職相談を受けました。
「日本企業に3年も務めてしまったので、もう中国企業には戻れません。のんびりとした日本企業のスピード感になれてしまいました。中国企業ほどの給料は期待しませんので、日本企業を紹介して下さい」
続いて、別なエピソードです。こちらは日系メーカーが中国に設立した合弁会社に出向していた人から聞いた話です。
「DXに関しては中国の方が圧倒的に進んでいるので、日本に帰ってきて驚きました。中国のやり方をまねしなければいけない状態ですが、幹部は『中国ってそんなに進んでいるの? ITのことは若いものに任せる』くらいの認識なので、全然話が進みません」
と嘆いていました。
中国人からは「給料は安くても、のんびりした日本企業で働きたい」と言われ、日本人からは「幹部は中国のやり方をまねしようともしない」と言われました。
モノマネは日本企業の得意とするところ、と考え、中国企業からも学ぶ姿勢を強めてみてはどうでしょうか。
かつて日本企業は海外から輸入した自動車や家電製品を分解して、リバースエンジニアリングを行い、さらに優れた製品を世に出し、世界に冠たるメーカー王国となりました。
素人考えですが、ネットフリックスの仕組みをまねして、より便利なサービスを考えだし、いつかネットフリックスを逆転するようなことはできないでしょうか。
ネットフリックスのユーザー数は2021年1月の時点で2億人を突破しているようですが、世界には78億人もの人がいます。魅力的で便利な仕組みを作り上げているネットフリックスに対抗することはかなり困難だと思いますが、ビデオ通話の世界で圧倒的な存在感を示していたスカイプが現在ではほとんど利用されていないことを考えると、ネットフリックスも盤石とは言えないのではないでしょうか。
こんな話を、IT業界に詳しい人にぶつけてみたら「『No Rules』を読んだことがありますか」と質問されました。
あります。ネットフリックス創業者であるリード・ヘイスティングス氏が著した『No Rules』
この本には、最高の職場を作るためには「能力密度(talent density)」を高めることが重要であると書いてあります。日本語版では「能力密度」と訳されていますがtalent densityの方がしっくりきます。つまり、ネットフリックスには優れたタレントが密集している、ということです。そして本には「優秀な人材だけで組織をつくれば、社員に大きな自由を与えることができる」「世界最高レベルのスキルを持っている人に世界最高水準の報酬を払う」とも書いてあります。
『No Rules』を読んだことがありますか、と質問した人は「日本企業には世界最高水準の報酬を払って人材を集める発想がないので、ネットフリックスを逆転することは不可能に近いでしょう」と言いました。
確かにその通りだとも思うのですが、日本発の世界的なサービスが生み出されることを願ってやみません。
ネットフリックスの会社の仕組みやサービスシステムをまねしたり、中国企業からも学ぶ姿勢を持ったりすることで、日本の企業もまだまだ成長できるはずです。
「学ぶ」の語源は「真似ぶ」だとも言われています。真似して学んで、また追い越しましょう。競争したり、共創することで世界は少しずつよくなっていくと思います。