2019年6月22日土曜日

ある日、突然、転勤を命じられたら… 『ISO通信』 2019年6月号 vol.36

「うちの会社、家を買うと転勤させられるんだよ」
「うちもそう!」
「えーっ、私の会社もそうです。なんで会社って、家を買ったばかりの人を狙って転勤させるんですかね?」
「会社の命令は絶対だ。辞令一本で、どこへでも飛ばせることを忘れるな!ってことを教えるための『見せしめ』だろ」
20年くらい前のことですが飲み会の席で、そんな会話がありました。

当時、私は人事部に所属していて
「人事って、ホントにそんなこと考えてるの?」
と、転勤を命じられた直後の友人に質問されました。
「いやいや、そんなことないって。家を買ったばかりの人を狙って転勤させることなんてないから」
真面目にそう答えました。


K社の育休後の転勤命令が話題になり、「家を買うと転勤」の話を思い出しました。
全国転勤のある会社では、家を買うと転勤させられるという話はよくあります。その理由として「住宅ローンを組むと会社を辞められなくなるので、転勤を拒否できない人を狙って、会社が異動命令を出している」と言われることがあります。しかし、私は違うと思います。「家を買うと転勤するケースが多い」と感じる理由は、インパクトが大きくて印象に残りやすいからです。

「うぉー、家を買う契約して、まだ住んでもいないのに、転勤命令でた~」
「○○さん、マイホームを買って引っ越したばっかりなのに、今度、転勤ですって」
など、家を買ってすぐに転勤命令が出ると、いろいろなところで話題になります。
逆に「家を買って3か月になるけど、転勤の辞令でなかったー」と吹聴する人はいません。
「6年間は住んたけど、結局は家を買うと転勤させられるんだ」と周囲に話す人もいません。
家を買った直後に転勤命令が出た人の話はすぐに伝播するので、頻繁に起こっている現象のように感じます。

転勤に関する資料をWebサイトで探してみると、独立行政法人の労働政策研究・研修機構が広範囲に及ぶ調査を行っていました。その名も「企業の転勤の実態に関する調査」(2017年10月に公表)
従業員が300人以上の企業に対する調査で、全国の1800社から回答を得ていました。
その資料の中に「(社員が)転勤に関する配慮を申し出る制度・機会があるか」という質問があり、「ある」と答えた企業が84%もありました。
「転勤において家族的事情等を考慮した内容(複数回答)」に関しては、「親等の介護」57%、「本人の病気」42%、「出産・育児」28%、「結婚」24%、「子の就学・受験」22%、「配偶者の勤務」20%と続き、「持家の購入」は9%でした。

転勤に関して、持家の購入に配慮してくれる会社が9%もあるのですね。(もちろん「持家を購入したばかりの人を狙って転勤させるか」などという質問項目はありませんでした。)

さて、110ページにも及ぶ調査データには興味深い内容もあります。転勤経験の満足度を社員に質問した項目では、78%の人が満足と回答していました。(もしかすると、会社は優等生だけを選んで、アンケート用紙を配ったのでしょうか?)

「できれば転勤したくない」の項目では、そう思う人が40%、そう思わない人が31%(「どちらともいえない」が29%)です。転勤したくないと思っている人が多いのに、78%の人が転勤後に満足しています。
また、会社が考える「転勤の目的(複数回答)」では「社員の人材育成」が66%で第一位です。
(他に、「組織運営上の人事ローテーションの結果」53%、「事業拡大・新規拠点立ち上げに伴う欠員補充」43%など)

社員の満足度が高く、人材育成にもなるのであれば、転勤もデメリットばかりではなさそうです。
会社は転勤の目的を丁寧に説明し、社員は「なぜ自分なのか」をしっかりと確認することで、転勤命令による摩擦やストレスを軽減できるのではないでしょうか。

2019年5月27日月曜日

30年ぶりにロンドンを訪れて 『ISO通信』2019年5月号 vol.35


久しぶりの海外出張で、ロンドンに行って来ました。

学生時代(30年前)にも訪れたことのある都市ですが、当時はどの観光スポットにも日本人がたくさんいて、現地の人から少しずれたトーンで「コンニチハ」と声をかけられることもありました。
しかし今回は英国に着くなり、空港スタッフから「ニーハオ」と挨拶され、アジア系観光客の主役が中国人に移っていることを実感しました。



出張の目的は、世界の60の都市から集まった同僚と情報交換したり、グローバル本部が開発した採用アセスメントツールの使い方を学んだりすることです。
会議は4日間に及び、普段、英語を使う機会が少ない私にとってはかなりハードでした。会食の席でも英語が続くので、ゆっくり食事を楽しむ余裕はないのですが、各国のメンバーと会話できる貴重な時間でもあります。

会食のとき、イギリス人の同僚から「30年前と比べて、一番違っていると感じるのは何?」と聞かれました。その同僚とは初対面だったので、政治的な話題は避けるべきかと一瞬考えました。しかし、各国の人材を紹介し合う仲間なので、移民排斥派ではないだろうとの予想もあり
「イギリスのダイバーシティーがものすごく進んでいることに驚いた」
と回答しました。「ダイバーシティー?」と聞き返されたので「街中でたくさんの人種を見かける」と答えると、彼は「その通り、それがイギリスの発展を支えている。ダイバーシティーは重要だ」と言いました。

「ブレグジット」について彼の意見を聞こうとしたのですが、隣の席のドイツ人が日本の天皇制度について質問してきました。
ドイツの同僚は天皇の生前退位が200年ぶりであることを知っていて「なぜ、そうなったのか?」と尋ねてきました。

・日本の憲法において、天皇は政治的な権能を持たないと規定されている。
・天皇が自らの退位について言及することは政治的な権能の行使に当たると考える人もいる。天皇に「引退したい」と発言させ、幼い子供を新しい天皇に擁立し、「新天皇を補佐するのは私だ」と宣言して権力を奪おうとする人間が出てくる可能性があるからだ。
・サムライの時代を終わりにした新政府は憲法で、天皇は引退できないと規定した。
・だから前回の生前退位は、サムライの時代にまでさかのぼる。
・今回、天皇は自ら引退したいと明言したわけではない。
・しかし多くの国民は天皇が引退したいと考えていたのだと理解している。
なんてことを英語でスラスラ説明できるとかっこいいのですが
「前の天皇は高齢で、そろそろ引退したくなったんだと思う。ここ200年くらいは、天皇が引退できる仕組みがなかった」と答えてしまいました。
“うーん、きちんと説明したいけど、会議の英語で疲れてしまった。もっと英語力が欲しい”と心の中で叫びました。

実は今回の出張の前に、天皇制について質問されるかもしれないと思って、予習しておきました。そして、明治政府の伊藤博文が天皇の退位制度廃止にこだわったことを知りました。
試験予想でヤマが当たったのに、ちゃんと回答できないなんて!(あ、学生時代にもそんなことがあったような気が…)

世界史も日本史も好きなのですが、英語力が足りないと一般教養のない人に見られてしまいます。「ブロークンイングリッシュでもグローバル人材にはなれる」が持論の私ですが、今回は英語力の低下を感じ落胆しました。英語の他にもやりたいことがたくさんあって、どれに時間を割くべきか悩んでいます。

2019年4月27日土曜日

「アウェイ」に乗り込もう! 『ISO通信』 2019年4月号 vol.34

先月のことですが、大学時代の恩師が定年で退官しました。

大学での最後講義には400人くらいの人が集まり、熱量あふれる授業に耳を傾けました。その講義は学生や卒業生だけでなく、一般の人も対象とした公開授業で、先生とゆかりのある人なら誰でも聴講可能な授業でした。
講義の後のパーティーも盛況で、先生が顧問を務めたクラブのOBOGだけで、100人以上の人がいました。私もそのクラブの出身で、年に何回か会う友人もいれば、20年ぶりくらいのメンバーもいました。二次会も大いに盛り上がり、学生時代と同じネタで笑える至福の時を過ごしました。

パーティーの数日後まで、face bookに上がった写真などを見ながら余韻に浸っていたのですが、ある人が「完全にアウェイだったけど、とても勉強になった」と投稿しているのを見て、思わず「いいね」を押しました。
私にとってはホームの場でしたが、その人からみると完全にアウェイ。ホームの私にとっては安心で心地よい場所ですが、アウェイの人にとっては知り合いがほとんどいない場所だったかもしれません。しかし、知らない人ばかりの所へ行った方が人脈も知識の幅も広がります。

私は「ホーム」で、いつものメンバーと毎度同じ話で盛り上がることも大好きなのですが、ときどき「アウェイ」にも行くようにしています。
“こりゃあ、場違いなとこに来ちゃったな”と感じることもあるのですが、そこで聴く話は新鮮で、普段の交流では得られない情報ばかりです。

先日は大学生と社会人が、就活やキャリア形成について語り合う場に顔を出しましたが、そこで会った学生は大企業での働き方にほとんど魅力を感じていませんでした。
「大企業で働いてから、その後でベンチャーに移ることは選択肢にありませんか」
と尋ねてみると
「それも考えましたが、大企業でしか学べないこととベンチャーでしか経験できないことを比較すると、最初からベンチャーに行った方がいいと思うようになりました」
との答えが返ってきました。

大企業のサラリーマンだった頃の私がその発言を聞いたら、なにも知らないくせに分かったような口をきく学生だ、と思っただけかもしれません。しかし、ベンチャー企業で活躍している優秀な若手の話を聞くことも多くなり、ベンチャーに魅力を感じる学生の気持ちも分かります。

40代後半でベンチャー企業に転じた人からは
「うちの会社に来るなら、やっぱり若いうちですよ」
と聞きました。その会社では20代の社員が嬉々として深夜まで働いているそうですが「ついていくのが、体力的にしんどい」とその男性は言っていました。

私がそのセミナーに参加したのは、face bookの投稿がきっかけで、会場にいるのは初めて会う人ばかりでした。セミナーの後の懇親会で情報交換すると、私の話を新鮮で面白いと言ってくれる人もいました。
嬉しい!
と素直に感じました。講義を聞く形式のセミナーだと基本的には受け身の立場になりますが、懇親会では「もらうだけ」ではなくgive and takeでありたいと考えています。

アウェイの場では自分にとっての「当たり前」が、他者にとっては「新鮮」なのだと気づくこともあります。
「ホーム」やその近辺だけにいると、“世間は意外と狭い”と感じますが、「アウェイ」に乗り込むと“世界はやっぱり広い!”と実感できます。


2019年3月31日日曜日

労働市場の流動化で職場はどう変わる? 『ISO通信』 2019年3月号 vol.33

「なんで仕事が楽しいかって言ったらさあ、仲間と一緒にやれてるからだよね」
「そうそう、絶対そうです」
電車の中で、若い二人が会話していました。
これから交際が始まろうとしている二人だから楽しいんじゃないの、なんて思ってしまうのはオッサンのひがみですが、爽やかな男女の会話を聞いて、いい職場なのだろうと想像しました。
 
一方で先日面談した30代前半の男性は
「うちの上司はイチイチ細かくて、私が決められることなんてまったくないのに、制度だけは裁量労働制です」
とぼやいていました。その人が務めているのは歴史のある一流メーカーで、業績的にも好調な会社です。その会社の別な部門にいる人から「裁量労働が徹底されていて、オフィスにいる必要はまったくありません。かなり自由な職場で、今の会社にも大きな不満があるわけではありません」と聞いたことがあります。
ぼやいた方の人に「御社にも自由な職場があるようですが」と言ってみると
「うちは事業部が違えば別会社みたいなもので、我々の部門には自由な雰囲気は全然ありません。マイクロマネージメントしたがる人がたくさんいます」
との答えが返ってきました。
 
転職や社内公募制などによる異動が当たり前になるとマイクロマネージメント型の上司は減っていくのかもしれません。転職したい本当の理由が上司に対する不満であるケースは多く「エージェントさんには本音で話していいのですよね」と言われることもよくあります。
優秀な部下が次々と逃げ出してしまったのでは、上司は成果を上げることができません。
マイクロマネージメント型の上司やパワハラ系の上司を嫌って転職する話は珍しくありませんが、これからは上司の方が転職せざるを得ないケースも出てくるかもしれません。

「上司が会社を辞めることになったので、私は残ることにしました。あの人は前の会社もパワハラで辞めさせられたのだと思います」
ある人から、この発言を聞いたときは少し驚きました。ここでは発言者をAさんとし、Aさんの言う「あの人」をBさんとします。
「Bさんは鳴物入りでうちの会社に入ってきて、実際に成果を上げていました。しかし、非常に厳しい人で、夜中でも日曜でもメールしてきて、返事を翌日にすると怒ります。ワーカホリックとしか思えませんが、常に仕事のことしか考えていないようです。あれだけ仕事して、部下にも同じやり方を求めるんですから、成果も上がりますよ」
とAさんは言いました。
そしてAさんは以下のように推測しました。
・人事部にパワハラを咎められたBさんが、会社にいられなくなった。
・Bさんは前の会社も3年くらいで辞めたらしいが、同じ理由ではないか。
・Bさんの力の源泉はパワハラだが、社会的に認められなくなってきたので、これからは成果を上げにくいだろう。
Aさんの言い分がすべて正しいわけではないとしても、パワハラを黙認しない会社は増えてきました。
部下が逃げ出す前に、上司が会社にいられなくなるケースは珍しいと思いますが、 「仲間と一緒にやれてるから仕事が楽しい」 と言える職場が、軍隊的な規律の職場より優位になっていく時代のようです。

2019年2月16日土曜日

休暇が増えたら何をしますか?『ISO通信』 2019年2月号 vol.32

働き方改革関連法案が成立し、年次有給休暇(以下、年休)の付与が義務付けられました。

本来、年休を取得できるのは労働者の権利で、使用者には時季変更権があります。
例えば、労働者が「権利を行使して、3月10日~13日まで年休を取得します」と宣言したら使用者は認める必要があります。しかし「すまない。決算期で忙しいから、25日以降にしてほしい」などと主張できるのが使用者の時季変更権です。

これに対して改正法が施行されると、年休を使っていない労働者に関しては、時季を指定して年休を取得させる義務が使用者側に生じます。
10日以上の年休を保有している人には、最低5日以上の年休を取得させる必要があり、義務を果たすことができないと罰則があります。

年休は法律によって定められている休暇で、正月休みやお盆休みは一般的な会社では法定休暇ではありません。このため、お盆休みや正月休みで年休を消化したことには出来ず、その他に年休を取得してもらう必要があります。(お盆休みや正月休みが計画年休になっている場合は別です。)

2011年の労働政策研究・研修機構の調査によると年休を1日も取得していない人が16%もいるそうです(取得日数が3日以内の人は32%)。年休取得率を見ると2011年が48.1%で2017年が49.4%なので、2011年の調査から大きな変化がないとすれば、16%の人は、休みが5日も増えることになります。


社員食堂の店長経験がある友人は「食堂のパートさんたちを5日も休ませたら、うちはつぶれるな」と言っていました。彼が勤めているのは、社員食堂の運営会社で食堂の現場はつねに人が足りない状態です。パートタイムで働く人が子どもの病気などで急に休むと、レジの人を調理場に回すなどして対応します。しかし、レジには行列ができ、そんなことが続くと客足が遠のいてしまうそうです。

「パートさんの数を増やせばいいんじゃないの」と言ってみると
「人手不足で採用できない。それどころか『これ以上忙しくなるのなら、辞めます』と言う人もいて、積極的に年休を取得しましょう、なんてとても言えない」とのことでした。

そのときの会話の続きを要約すると以下のようになります。
・時給を上げればパート社員を雇えるかもしれない。
・すると、既存のパートさんの時給も上げないと不満が爆発する。
・時給を上げると経営が赤字になる。
・値段を上げたり、コストダウンでボリュームを減らしたりすると、コンビニ弁当に客を奪われる。
・時給は上げられず、人も雇えない。その上、年休取得が義務になると、現場はさらに忙しくなる。
・年休取得義務の対象になるパートさんだけに年休を使わせるわけにもいかない。
・今までは「この日はシフトに入れません」と言われたら無給が当たり前だったが、義務化の対象でないパートさんも「有給扱いにして欲しい」と主張するかもしれない。

「シフトに入っていない人にも給料だすのはきついなあ。経営的にも、かなりヤバい。こんな法律誰がつくったんだー、俺も休んじゃうぞ」
と言ったあたりで、お互い、酔いどれオヤジに変貌しつつあったのですが、深刻な問題であるようです。

年休を取得した社員がリフレッシュして翌日からキビキビと働き、調理の時間を15分短縮できた。余った時間でお客さんの呼び込みを行った結果、食堂の売り上げも増えた。
ということになれば、生産性の向上を目指した法律の狙い通りですが、現実と理想のギャップを埋めることがマネージャーの仕事になりそうです。

2019年1月20日日曜日

失敗に費やした時間をどう評価する?『ISO通信』 2019年1月号 vol.31


16日の日経新聞に「科学技術史に残る医大な発見や発明は、間違いや失敗をきっかけに生まれた例がたくさんある」とありました。「失敗を許さない風潮が強まると驚くような成果が生まれにくくなるかもしれない」と記事は続きます。

1,000回の失敗経験がある研究者と100回の失敗経験しかない研究者では、前者の方が大発見につながる偶然と出会う可能性が高いのではないか、と考えたことがあります。
それを証明するような学説があるのだろうかと思ってWEBサイトを探してみると
「『失敗は成功のもと』は科学的に正しかった!」
という記事(↓)がありました。

この記事によると、マウスに迷路を走らせる実験をすると、初期段階で多くの失敗を経験したマウスの方が結果的に最短ルートを早く見つけることができるそうです。
研究者の場合、いつまでが初期段階かは分かりませんが、「この10年で1万回の失敗をしました。そろそろ大発見ができると思います」と言われても初期段階は過ぎてしまっているように感じます。



脱時間給制度は、働いた時間ではなく成果に応じて報酬を払う仕組で、研究開発は脱時間給制度の対象業務の一つになっています。「1回も失敗せずに大きな成果を上げる可能性もある」と考えれば脱時間給制度に適した職種と言えますが、若いうちにたくさんの失敗を経験する必要があるならば、時間に対して報酬を払うべきかもしれません。

「結局のところ、脱時間給制度は時間外手当を削減することが目的で、従業員を定額で何時間でも働かせることができる制度だ」と批判する人もいますが、仕事の原点は成果に対する報酬です。

・手塩にかけて育てたリンゴが、収穫前に台風で落ちてしまった。
・漁に出たけれど魚が一尾も採れなかった。
・一生懸命に作曲したけど、いい曲だと思ってくれる人がいない。
・タクシーを運転したけど、その日は誰も乗ってくれなかった。
上記のような場合、経営者や個人事業主なら報酬がないことに文句は言えません。一方で雇われている人の場合、働いた時間に対する報酬を要求することができます。

成果がなくても給料をもらえるのはサラリーマンの特権とも言えますが、そのせいで成果がないことに悔しさを感じない人もいます。また、大きな成果があっても自分の報酬が時給でしか計算されないのなら、仕事の楽しさが半減してしまうかもしれません。

悔しさや楽しさを強く感じるタイプの人は、成果を上げるために工夫しようと考えます。
脱時間給制度はサラリーマンに仕事の楽しさや悔しさを思い出させ、創意工夫を促す制度だと思うので、個人的は賛成です。しかし研究開発の仕事でさえ、成果と時間にはある程度の関係性があります。
チャレンジングな失敗や試行錯誤に苦労している若者がいたら、温かく見守ってあげたいものです。
「それは仕事じゃないよな。俺はそんな指示してないから、残業じゃないよな。できれば家でやってくれないか」
などと言ってしまったら、大発見やイノベーションとは無縁の会社になってしまうので注意しましょう。

2018年12月30日日曜日

「ふるさと納税」の実態は「ふるさと節税」?/『ISO通信』 2018年12月号 vol.30

「ふるさと納税」
どうしてこの制度が成り立っているのか不思議です。
きちんと計算すれば、確実に得をする仕組で、しかも高額納税者ほど還元額が大きい。金持ち優遇制度だ!と怒る人がいそうな気がしますが、今のところ少数意見のようです。

ご存じのかたもたくさんいると思いますが、この制度では2千円でいろいろな物が買えてしまいます。例えば、ある自治体に3万円の寄付をすると所得税と住民税から2万円8千円が控除されます。寄付してもらった自治体は返礼として9千円くらいの品物を送ってくれるので、返礼品リストに自分の欲しいものがあれば、それを2千円で買うことができるわけです。(「返礼品を買う」という表現は制度の趣旨に照らすとかなり不適切ですが、実感としてはそうなります。)

「やらない理由がない」と友人に勧められたとき、そんなウマい話は危ない、と思って総務省のホームページを見てみました。
*****
「納税」という言葉がついているふるさと納税。
実際には、都道府県、市区町村への「寄附」です。
一般的に自治体に寄附をした場合には、確定申告を行うことで、その寄附金額の一部が所得税及び住民税から控除されます。ですが、ふるさと納税では原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となります。
*****
以上が総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」に記載されています。



私は栃木県で生まれ、大学生になって東京に出てきました。18歳まで栃木県の行政サービスを受けてきたわけですが、故郷の自治体に住民税を納めたことはありません。自分を育ててくれた「ふるさと」に納税できる仕組みがあってもいいではないか、ということがこの制度の原点だそうで、その趣旨には賛同できます。

そして、ふるさと納税のサイトを開いてみると、縁もゆかりもない自治体の返礼品に惹かれてしまいました。というか、買いたいと思っていた商品そのものが返礼品になっているのです。
うーん、賛同したはずの趣旨とはまったく違う自治体に寄付していいのだろうか、と思いましたが物欲に負けました。

「ふるさと納税」をする人の数は爆発的に増え、今年は300万人近い人が利用しているそうです。しかし、2千円で高額商品を買えてしまう仕組みには違和感があり、豪華な返礼品はやがて消えていくと思います。返礼品が質素であれば、自分が生まれ育った故郷ではない自治体に寄付する人は減るはずです。
仮に制度が変更になって返礼品が廃止されても、たまには故郷に寄付してもよいと思っていますが、実際には面倒と感じて行動しないかもしれません。
この制度がどのような形で定着していくのか気になりますが、税金のことを考えるきっかけになることは確かです。

*「ふるさと納税」してみようと思った方は、総務省などのサイトで詳細を確認し、全額控除の上限額、実施時期(12月31日の場合、完了時間)、一時所得の課税などについてご注意下さい。

2018年11月25日日曜日

プロフェッショナルになろう!(二重の守りと生産性のバランス)/『ISO通信』 2018年11月号 vol.29

日本人の生産性は低い。
私は日本人である。
だから、私の生産性は低い。

こんな三段論法に思い至ってしまいました。お客さまを招いてのセミナーを開催した日のことです。

同僚のアメリカ人と協力して準備を進め、私は社内の準備委員長的な立場にありました。セミナーの講師はカナダに住んでいるイギリス人です。講師(バーデット)との連絡はアメリカ人の同僚(パーセル)に任せていました。

バーデットは組織人事系の経営コンサルタントで、欧米を中心に世界各国でコンサルティングやセミナーをしています。
バーデットがセミナーのパワーポイント資料を送ってきたので、私はそれを会社のパソコンに保管しました。バーデットは自分のモバイルパソコンを使う予定ですが私はバックアップのパソコンが必要だと考えました。

セミナー会場はホテルニューオータニで、バーデットは講演のプロです。パーセルは会場にバックアップのパソコンを持っていく必要はないし、バックアップ用のパソコンで事前確認することは時間のムダであると考えました。
「万が一、バーデットさんのパソコンがつながらなかったら、終わりですよ」
私はパーセルに言いました。しかしパーセルは
「ジョン(バーデット)はセミナーのプロフェッショナルで、ニューオータニは会場運営のプロ。万が一は起こらない。まあ、でも日本人はだいたい、いつもそう。慎重。」
と言いました。

バーデットはセミナーの3時間前にモバイルパソコンの接続を確認し、本番も無事に終わりました。そして私はパーセルの考え方を理解することもダイバーシティの一つだと感じ、リスク管理と効率性について考えました。
大手電機メーカーに勤めている友人に会ったとき、この話をしてみました。
「万が一、パソコンが使えなかった場合、うちの会社なら、間違いなく磯にバッテンがつくよ。でもアメリカ人の考え方だと、セミナーの講師がプロ失格ということになるのかもね」
それを聞いて私は、かつての転職相談のことを思い出しました。
一流のコンサルティングファームに勤めている人から
「うちの会社では失敗の責任は個人に帰属します。上司は部下の行動をいちいちチェックしたりしません」
と聞いたことがあります。そのとき私は
「部下の行動をチェックして、リスクを回避することも上司の仕事ではないのですか」と聞いてみました。
「リスクの程度や種類によりますが、基本的にはチェック不要です。上司の確認がないと失敗する人は、うちの会社にはいられません」
なるほど、失敗の責任が個人に帰属すると上司は細かなチェックに時間を取られずにすみます。逆に「部下の失敗は上司の責任」というカルチャーだと、上司はマイクロマネージメントに走り、より高い次元の仕事に手が回りません。

「部下の能力が低いだけで、私に責任はありません」と主張する上司の下では働きたくありませんが「失敗したらプロとして失格」の自覚は持ちたいものです。

2018年10月27日土曜日

「リクエスト」と「チャレンジ」の違い /『ISO通信』 2018年10月号 vol.28

プロ野球に「リクエスト」の制度が導入された最初のシーズンも大詰めを迎えています。

プロ野球に興味のない方のために説明すると「リクエスト」はテニスやバレーボールの試合では「チャレンジ」と呼ばれているシステムです。

「チャレンジ」とは審判に対する不服申し立て制度で、ビデオ判定によって誤審が明らかになると「チャレンジ成功」となり、判定が覆る仕組みです。

米国のメジャーリーグでも「チャレンジ」と呼ばれていますが、日本のプロ野球では
「リクエスト」
この言葉を聞いたとき、少年野球の審判を思い出しました。
「審判に選手が『チャレンジ』するなど、あってはならないことです。ビデオ判定は時代の要請かもしれませんが『リクエスト』にして下さい」命名の背景に、アマチュア野球界からの要請があったのではないかと想像してしまいました。単なる妄想ですが…。

審判は絶対である、審判に異議を唱えてはいけない、少年野球の世界ではこのように教えられることがあります。野球に限らず、少年期のスポーツ指導の現場では、「審判は絶対」と教えることは多いようですが「それが、子供を思考停止にさせる」と少年サッカーを指導している友人が言っていました。

審判は絶対である、ルールは絶対である、指導者は絶対である、権力者は絶対である。
そのように刷り込まれ、コーチや監督を絶対的な存在として崇拝するようになれば、協会の理事長に意見するなどありえない、という雰囲気が出来上がるかもしれません。
強いリーダーが現れると、長期間にわたって権力を維持しやすい構造がスポーツ界にはあり、それは不祥事につながる危うさをはらんでいます。

仕事においても、上司の言葉は絶対であると考える人もいて、私はかつて「お前は考えるな。俺の言う通りに動けばそれでいい」と上司から言われたことがあります。
その人の部下だった経験のある先輩が「あの人から学べるのは、〇〇と××だけで、それ以外のことは学ぶ必要がないから、気にするなよ」と言ってくれたので気持ちは楽になりました。

そして当時、別な先輩が下の言葉を教えてくれました。

Rule No.1:The boss is always right.
Rule No.2:If the boss is wrong, see rule No. 1.

このように考えてしまえば楽です。また、私が所属していたチームは結果も出していました。しかし、ロボットのように働いていたので、まったく楽しくありませんでした。まさに思考停止の状況で、成長できないという危機感さえ失いつつありました。


部下に対して「お前は考える必要がない」とはっきり言う人は珍しいのだと思っていましたが、転職相談の仕事に就いて、そうでもないことを知りました。

部下の行動のすべてを監視し、細かく口を出すマイクロマネージメント型の上司も珍しくありません。そのやり方で成功している経営者もいるのですが、そのような会社は社員の定着率が悪い傾向があります。

上司との人間関係が転職を考える一番の理由である場合、会社に対して配置転換を「リクエスト」してみる手はあります。異動によって上司が変わり、それで気持ちが納まるなら転職を焦る必要はありません。しかし、異動で楽になることを求めるのではなく、今の会社では成長できない、と感じるなら転職に「チャレンジ」する価値はあります。

チャレンジした後は楽ではないかもしれませんが、思考停止や指示待ち人間になることはないはずです。

2018年9月24日月曜日

AIの判断にどこまで「お任せ」しますか? /『ISO通信』 2018年9月号 vol.27

人工知能(AI)関連のセミナーに参加し、機械学習にはSupervised Learning(教師あり学習)と呼ばれる手法とUnsupervised Learning(教師なし学習)と呼ばれる手法があることを知りました。

例えば、囲碁のコンピュータプログラムにおいて、「教師あり学習」では過去の棋譜を読み込んで「定石」を覚えることからスタートします。しかし「教師なし学習」のプログラムでは過去の棋譜を分析する必要はなく、囲碁のルールに従って自己対局を繰り返すだけで強くなっていくそうです。



人間の世界チャンピオンを破って有名になった「アルファ碁」は「教師あり学習」のプログラムで、その後に開発された「アルファ碁ゼロ」は「教師なし学習」のプログラムです。
アルファ碁とアルファ碁ゼロが対戦すると、アルファ碁は歯が立たず、その上、アルファ碁ゼロは最初から定石では考えられない打ち方をするそうです。
どちらもAIなのに、なんとなく「アルファ碁」を応援したくなってくるのは私だけでしょうか?


さて、企業の人材獲得においてもAIが力を発揮し始めていますが、「定石」を無視した人物をAIが推薦してきたらどうでしょう。
例えば、ビジネスの世界とはまったく無縁の人をAIが採用すべきと判断した場合、その人を採用する決断はできるでしょうか。
AIが推薦した人物が必ず活躍する保証があるのなら、ビジネス経験がない人を採用する企業も出てくるはずです。しかし「保証」と言えるほどのデータが積み上がるまでには、かなり時間がかかりそうです。

「AIの推薦した人物を採用して失敗した場合、誰が責任をとるのか」それが日本では大きな問題になります。
「学歴のない人を採用して失敗した場合、誰が責任をとるのか」と同じ構造の問題です。

学歴に関して、ある大企業の人事マネージャーから
「我々の世代までは学歴など気にしないのですが、上の方に行くと結局は学歴がネックになってしまうのです」
と聞いたことがあります。
経営幹部の中にも「仕事さえできれば学歴は問わない」と本気で考えている人はたくさんいますが、失敗したときの責任は負いたくない、との思いもあります。
学歴の高い人を採用して失敗したのなら、社長から「なぜあんなやつを採用したんだ!」と叱責されたとき「すいません。学歴に騙されました」と言いわけすることはできます。一方で、学歴を気にせず採用した人が活躍しなかった場合「すいません。私に見る目がありませんでした」と答えざるを得ません。

AIの推薦だけを根拠に採用した人が活躍できなかった場合、
「私に見る目がありませんでした」と言う必要はなく
「AIが推薦した根拠は不明ですが、統計的には95%の確率で活躍するはずでした」
などと言えばすみます。
しかし実際にはAIの判断だけで採用を決定することはなく、人間が面接して最終結論を出すことになるでしょう。

それとも
「我が社の経営企画はお笑い芸人の○○さんに任せるべきだとAIが判断したので、トランサーチさんにヘッドハントしてもらいたいのですが」
そんな依頼が来る時代になるのでしょうか…。

2018年8月26日日曜日

親の意見と茄子(なすび)の花にないものは? /『ISO通信』 2018年8月号 vol.26


夏休みに帰省すると、実家の両親に疲れている様子がありました。
80歳近くなる父は、亡くなった兄(私の伯父)の遺産を整理する立場になっていて、珍しく弱音を吐いていました。
父を手伝うため、法務局に行って不動産の登記簿を確認しました。登記簿だけでは相続する権利のある人を完全に特定することはできず、遺産分割に関する合意を形成することはかなり困難です。不動産の処理だけでなく、他にもやるべきことが山のようにあり、疲れとストレスで父が参ってしまわないかと心配になりました。

兄弟姉妹の関係が平穏であるのは、整理した遺産をすべて均等に分配する方針を父が示しているからです。息子ながら「エライ!」と褒めてあげたいところですが、父親に「エライ!」と声をかけるほど偉くないので、心の中に留めておきました。

法務局や銀行を回って実家に戻ると、父親は
「均等に分配する方針は変えないけど、それを考えれば考えるほど、疲れるな」
と言いました。
「そりゃあ、そうだよ。労力の分を評価してもらってもいいんじゃないの」
と私が言うと、父は
「それは、もめる元になるからやらない」
と断言しました。

しかし、時間が経ってまた別の問題で頭を悩ませていると愚痴めいた言葉も出てしまいます。そこで
「親の背中を見て子供が育つと思えば、少しはやる気が出るんじゃないの」
と言ってみました。すると父は表情をパッと明るくして「そうだな」と言いました。
私の一言で父が報われたとは思いませんが、取り組む気持ちに変化はあったかもしれません。

新人や20代の頃に「なんでこの仕事を私がやらなければならないのだろう」と思った経験はだれにでもあると思います。

他の人でも出来る仕事
やっても評価につながらないように思える仕事
誰かがやらなければいけない事は分かるけど、出来れば自分に回ってきて欲しくない仕事

よく見ていると、そういう仕事をさりげなく引き受けている人がいることが分かります。一方で、職務命令だからと仕方なしにやっている人もいます。経営者や管理者の視点では、どちらの人にも声をかけ「報われている」「見てもらっている」という気持ちになってもらうことが大切です。

雑事をさりげなく引き受けている人が必ず出世するわけではなく、それらの雑事を巧妙に避けながら出世の階段を上る人もいます。しかし、雑事を人に押し付けるようにして出世した人が役職を離れると、周りから人がいなくなる傾向があるようです。

久しぶりに親から教えを受けたので、実践面でも忘れないようにしようと思います。

追伸
ことわざ:親の意見と茄子の花は千に一つも仇はない
「仇(あだ)」は「徒」であり、なすには実を結ばない「徒花」はない、ことから来たそうです。
(今日まで、「仇はない」でなはなく「無駄はない」だと思っていたことを白状します…。) 

2018年7月29日日曜日

都市対抗野球といえば大企業。大企業といえば… (2018年7月号 vol.25)

クールビズ、すっかり定着しました。

昔、総理大臣の大平さんが、半袖のスーツを着ているのを見たとき、
「こんなの着るくらいなら、上着なしにすればいいのに」
と子供心に思ったものですが、あの頃から比べると、おじさんたちの頭もだいぶ柔らかくなったということでしょう。

と書きながら、あの頃子供だった私が、今やおじさんを代表する世代になっていることに気づきました。
「ぼくらの感覚は、クールビズを定着させるくらいに若いままなんです」
と言いたいところですが、我々の世代は「バブルおじさん」と呼ばれることもあるそうで、どうも旗色が悪いようです。

少し前の日経新聞に「さよなら、おっさん」と大きな文字で書いてありました。

ニューズピックス社が出した全面広告ですが、その下に書いてある小さな文字を読まずにカチンときたおじさんたちも多かったようです。
凝り固まった価値観から離れることが出来ず、新しいことに挑戦できないマインドを、ニューズピックス社は「おっさん病」と定義しています。「さよなら、おっさん」は、おじさんたちを社会から排除したいわけではなく、ニューズピックス社が提供する情報に接すれば「おっさん病」にかかる心配はないですよ、という宣伝です。

先日、都市対抗野球の応援に駆り出された友人が
「お偉いさんにビール注がされる女の子もかわいそうだよ。あれじゃあ、会社辞めてベンチャー企業に行きたくもなるわ」
と言っていました。ビールを注がれているエライ人が「女子社員がビールを注ぐのは当たり前」と思っているなら、「おっさん病」の罹患者だと言えるでしょう。
「ビールを注ぐことも『おじさん操縦法』の一つ」と考える人もいれば「こんなことやってるくらいなら、外資かベンチャーでバリバリ仕事したい」と思う人もいます。外に出ることを決めてサクッと転職する人もいれば、大企業に残るべきか転職すべきかを悩みつつ相談に来る人もいます。

悩みを抱えている人のほとんどは、大企業を辞めても大丈夫なのだろうか?という漠然とした不安を持っています。そんなときは「大丈夫」の中身が何かを確認すると、すっきりしてもらえます。
・転職先で自分は活躍できるだろうか。
・転職先の人間関係で失敗したらどうしよう。
・大企業に残った場合と転職した場合では、どちらが生涯年収は高くなるだろう。
・大企業と転職後では、どちらがかっこよく見えるだろう。(世間体はどうだろう。)
・転職先が倒産したらどうしよう。

何を心配しているのかが分かると、残るべきか転職すべきかの判断基準も明確になります。

都市対抗野球の応援でも社員旅行でも、会社のイベントを楽しめているうちは転職を考える必要はないと思います。
経営サイドの視点からみれば、イベントに参加している社員に「駆り出され感」があるようなら、社員の流出を心配する必要があります。

雇用の流動化は「おっさん病」対策の一つであり、転職者がいないと私の仕事は無くなってしまうのですが、一つの会社で勤め上げる人のマインドも個人的には好きです。

生え抜き社員と転職して来る人が刺激し合って、「おっさん病」のない会社が増えて欲しいと願っています。

2018年6月24日日曜日

「人手不足のため閉店します」を回避するには(2018年6月号 vol.24)


4月のことですが、会社の隣にあるラーメン屋が閉店しました。毎日、行列のできる人気店でしたが「人員不足のため閉店します」と張り紙があり、驚きました。
「ラーメン次郎 新橋店」の閉店のニュースはネット上でも話題になったようです。

労働統計の資料から総人口と生産年齢人口(15歳~64歳)を抜き出してみると下のようになります。
(中段が総人口で、下段が生産年齢人口。単位:百万人)
1955  1975  1995  2015  2035  2055
89          112        126        127        115        97
55          76          83          76          65          50
*細かな数字は下記の厚生労働省・労働統計要覧でご確認下さい。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyr_b.html

1995年から2015年を見ると総人口は増えていますが、生産年齢人口は700万人も減っています。1970年頃までの「高度経済成長」、1990年頃までの「バブル景気」、その後の「失われた20年」という言葉は、生産年齢人口の増減で説明できてしまいそうです。そしてこれからは、総人口も生産年齢人口も減っていくので、「失われた20年」が40年、60年と続くかもしれません。



かつての「男社会」に女性や外国人や高齢者を迎えることで労働力の減少を緩和させようとするので、ダイバーシティの推進が重要になっています。が、頭だけでなくハートで理解するのは大変です。
以前、私の職場にはパキスタンの人(Nさん)が勤務していました。イスラム教徒の彼とランチに行ったとき
「この店では豚肉は出ないので、なんでも安心して注文して下さい」
と言われました。ランチに誘ったのは私でしたが、店を選んだのはNさんです。イスラム教徒にとって日本の一般的なレストランは安心できない場所なのだと、初めて知りました。

「日本は遅刻にうるさいから、もう少し早めに来た方がいいよ」と彼に助言しました。親切心から言ったつもりですが「日本は時間に厳しいですよね」と流されてしまいました。
Nさんの遅刻の頻度はその後も変わらず、私は“助言を聞いてもらえなかった”と感じました。
私は規律を重視する職場にいた期間が長かったため、「遅刻厳禁」が当たり前だと思っていました。しかし、今の会社に移り、出張して海外の同僚と会議をしたりすると、集合時間の前にきっちり席についている国の人の方が少数派でした。「時間管理よりも成果主義」のカルチャーだと5分や10分の遅れは遅刻ではないようです。

少し前に会った大手電機メーカーの社員から「うちの部署は完全な裁量労働制なので、遅刻の概念がありません。遅刻どころか、会社に来ない日があっても誰にも気にしません」と聞きました。システム系の事業部に所属している中堅社員で上司や部下との連絡もメールやチャットアプリが基本になっているそうです。
「社内には遅刻にうるさい部署もありますが、私のところは同僚と同じ空間にいる必然性がありません。成果主義が徹底され、部門の業績も好調です」
とも言っていました。

ベルトコンベヤの前で行う作業のように、遅刻しなければその分だけ生産量が上がるタイプの職場では時間の管理が重要になります。ひょっとすると、遅刻にうるさい文化は「工場のみんなは時間通りに頑張っているのに、本社の人間が遅刻していたんじゃ示しがつかない!」という雰囲気が生んだのかもしれません。

「時間や行動を管理されないと規律が乱れてしまう集団」と「成果を求めるマインドにより自然と秩序が整っていく集団」
どちらででも自由に選べます、と言われたら多くの人が後者を求めるはずです。
労働力不足の時代に優秀な「人財」を確保したいなら、職場のカルチャーや組織の意識改革が重要になりそうです。

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