2022年4月24日日曜日

効率至上主義になっていませんか? 『ISO通信』第70号(2022.4.24)

「やらない!磯君に頼まれたことは一切、やならい!」

今から25年くらい前のことですが、先輩の女性社員(Aさん)にピシャリと言われたことがあります。
当時私が在籍していた会社には総合職と一般職の採用区分がありました。総合職の社員は基幹的な業務を行い、一般職の社員は補助的な職務を遂行する役割でした。(現在は総合職、一般職の区分は廃止されています。)
Aさんは私よりも15歳くらい年上で、社内のいろいろなことを知っている先輩です。「磯君に頼まれたことは一切やらない」と言われる前に、私が発した言葉の詳細は忘れてしまいました。しかし、私の中に「総合職社員と一般職社員とでは、時間当たりの単価が違うのだから、これくらいの仕事はAさんにやってもらいたい」との思いがあり、その気持ちが態度に現れていたのだと思います。
そして、当時の上司から「お前はバカだねえ。普段から『磯ちゃんの仕事なら、手伝ってあげたくなる』と思わせるように接しておかなきゃ」と諭されました。
その一方で、別な先輩からは「総合職と一般職では、役割も時間単価も違うのだから、最も効率的な時間の使い方を考えなさい。何でもかんでも自分でやろうとするな」と教えられていました。
効率的に働きなさい。生産性を考えなさい。全体最適を忘れるな。
そんな風に教えられ、仕事に感情を持ち込まないことが正解だと思うようになっていたのです。
しかし「お前はバカだねえ」と言われ、人は、効率や生産性よりも感情で動くものだと気づきました。ちなみに「お前はバカだねえ」と言われたとき、ムカッと腹が立つのではなく、素直に助言を聞く気になれたのは、この上司の部下への接し方がいつも適切だったからだと思います。

先日、某社の社長を退任した人(Bさん)と会話して、自分の過去の失敗を思い出しました。
Bさんは、大手企業の役員を務めた後、グループ会社の社長に就任し、引退した現在は地域での活動に力を入れています。
「いつの頃からか、自分の1時間には10万円以上の価値があると思ってやってきました。昔は、マンツーマンで誰かと1時間を過ごしたら『この人との1時間は10万円以上の価値があった』『この人は私の時間の価値に気づいていない』なんて思っていたのですが、単価を気にしなくなったら、交友関係が広がりました」
とBさんは笑っていました。
「自分の1時間には10万円の価値がある」と常に意識していたら、仕事の時間はもちろん、 プライベートでも誰と会うべきかを選別してしまうのかもしれません。

「幅広い交友関係が自身の幸福度を高めている」と考える人もいますし「誰と会うかを選別して効率性を追求したい、それが自分にとっての幸せにつながる」と考える人もいます。
価値観は人それぞれですが、効率至上主義に陥ると地域活動においても職場でも、ちょっと浮いた存在になりそうなので気をつけたいと思います。

2022年3月26日土曜日

離職期間と充電期間 『ISO通信』第69号(2022.3.26)

 中規模の会社に勤めている知人(Aさん)から、離職期間を作ることについて相談を受けました。Aさんの勤務先は社員数200人程度の企業で、余った有給休暇を買い取る制度はありません。Aさんは、ある会社から内定をもらっていて「入社の時期は2カ月後でも3カ月後でもいい」と言われているそうです。

以下はAさんと私の会話です。
「有休を消化せずにスパッと会社を辞めたいのですが、次の会社に入社する前に少しゆっくりしたい気持ちもあります。退職してから1カ月後に入社するのって、ありですか」
「うーん、離職期間を作ることはあまりお勧めできません。有給休暇を消化してから、次の会社に入社した方がいいと思いますよ」
「うちの場合、会社に余裕がないから、有休を使い切って辞める人がいないのですよね。有給休暇が労働者の権利だということは知っていますが、世話になった会社なので、あまり無理も言いたくなくて」
「なるほど。まあ、それでもブランクは長くない方がいいと思います。例えば、今の会社を辞めて、次の会社に入るまでに3カ月のブランクがあったとします。もしも将来、再度転職活動することになった場合、この3カ月は何をしていたのだろう?と疑問を持たれることになります。1カ月くらいなら『ちょっとリフレッシュ期間を取りました』と説明すればすみますが、3カ月だと『のんびりした人だな』と思われる可能性があります」
「1カ月くらいなら、大丈夫ですか」
「1カ月くらいなら問題視されないと思いますが、万が一その期間中に大きな災害が発生したり、戦争の影響が拡大したりすると『しばらく入社を待って欲しい』と言われてしまうかもしれなません。なので、あえて離職期間を作ることは避けた方が無難だと思います」
「そうですよね。リーマンショックや大震災があって、パンデミックに戦争ですからね。何が起こるか分からない時代になってきました。離職期間を作ってゆっくりするのは、止めておきます」
Aさんとの会話はこんな感じで終了しました。

ちなみに、厚生労働省の調査によると「直前の勤め先を離職してから、現在の勤め先に就職するまでの期間」は以下の通りです。
離職期間なし:              26.1%
1カ月未満:                   27.6%
1カ月以上2カ月未満:  13.3%
2カ月以上4カ月未満:  12.9%
4カ月以上6カ月未満:    4.6%
6カ月以上8カ月未満:    3.5%
8カ月以上10カ月未満:  1.7%
10カ月以上:                   5.5%
(政府統計『令和2年転職者実態調査の概況』より)

心身に余裕があれば、離職期間を作ることはせずに、次の職場に移った方がよいと思います。しかし心と体のリフレッシュのために、どうしても充電期間が必要なケースもあるので、その場合は離職期間を設ける勇気も要ります。
気持ちの面で追い込まれた状態にならないよう、普段から自分に適したオンとオフのバランスを取って働きましょう。



2022年2月22日火曜日

直近の6年間でどれだけ成長しましたか? 『ISO通信』第68号(2022.2.23)

 


「うちの長男が中学生になりました。」

「はやいねー、もう中学生になるんだ」

「はい、幼稚園で遊んでもらっていた頃が、つい先日のような気がします」

「そうだよねー、こっちも歳をとるはずだよ」

長男が中学生になった頃、親戚や友人とこんな会話をしたことが何度かありました。

 

しかし、ある先輩は私にこう言いました。

「子供さん、小学校の6年間でずいぶんと成長したことでしょう」

「はい。子供の成長は本当にはやいと感じます」

「ところで、磯くん、その6年間でどれだけ成長した?」

「えっ、私がですか?」と聞き返しました。

 

長男が小学1年生になった年は、私が二度目のサラリーマン人生をスタートした年です。

一度目のサラリーマンを16年、フリーランスを2年ほど経験した後の2010年は私にとって節目の年になります。

長男が小学校を卒業した2016年は、今の会社に入社して6年が経つ頃で

「その6年間でどれだけ成長した?」

という質問に対して

「まったく未経験の業界に入ってどうなることかと思いましたが、なんとか人材紹介の仕事で食っていけるような気がしてきました。少しは成長していると思います」

と答えました。

「ほう、それはよかった。お子さんが中学生になった人に『この6年でどれだけ成長した?』って聞くと答えられない人が多いからね。次の6年も成長することを忘れないように」

尊敬する先輩が、そう教えてくれました。

 

あれから6年が経ち、中学校と高校でさらに成長した長男は4月から大学生になります。

「ところで、磯くん、その6年間でどれだけ成長した?」

と質問してくれた先輩とはしばらく会っていませんが、この言葉を思い出して、今度はドキリとしました。

成長していないかも?

「いや、成長はしている」と思いたいのですが、成長カーブが緩やかになっていることは間違いありません。

 

昔のことですが「俺はこの道25年のベテランなんだ!」と威張る人に対して「毎年毎年、同じことを繰り返しているだけの人じゃないか」と内心で反発したことがあります。しかし、私自身も毎年同じようなパターンの仕事に慣れ、コンフォートゾーンにハマりつつあるような気がします。

 

社会や業界の構造が不変なら「この道25年のベテラン」の経験に頼り、その人の指示の通りに動けば間違いなかったことでしょう。また、経験が豊富でたくさんのリスクを乗り越えてきた人は、大きなトラブルに発展しそうな「小さな芽」を未然に摘むことができたり、成果を上げるための最短ルートを知っていたりするので、過去の経験を否定するつもりはありません。

しかし、過去の経験に縛られていると、変化の波に押しやられて、傍流で細々とビジネスを続けていくことなります。

 

次の6年が経つと次男も大学生になっているはずです。そのときに

「息子たちの成長カーブと同じくらいに、私も成長できました」

と先輩に報告できるよう、新しいことにも挑戦したいと思います。

2022年1月30日日曜日

世界18か国の40人に聞きました! 『ISO通信』第67号(2022.1.30)


趣味と実益を兼ねたオンライン英会話を再開して二か月になります。
以前は「DMM英会話」を利用していましたが、今回は「ネイティブキャンプ」にしてみました。
 
これまでに会話した人の出身国と人数は以下となります。
セルビア(6人)、アメリカ(5人)、フィリピン(5人)、モンテネグロ(4人)、ルーマニア(3人)、アルバニア(2人)、イギリス(2人)、ハンガリー(2人)、南アフリカ(2人)、
アルジェリア、エジプト、オランダ、ガーナ、コロンビア、セネガル、トルコ、ナイジェリア、ブルガリア、(アルジェリア以降、1人)
数えてみると18か国40人となりました。
 
途中から出来るだけ講師の国籍がばらけるように受講し、下記の二つの質問をしました。
昔のクイズ番組を思い出して「100人に聞きました」を実践しようと思ったのですが、さすがに飽きてきたので明日からは別な話題にしようと思います。
 
(1)あなたは日本についてどんなイメージを持っていますか。
(2)あたなが知っている日本企業の名前を教えてください。
 
(1)の質問に対しては、総じて以下のような答えが返ってきます。
・長い歴史と独自の文化があって、美しい国。
・安全で安心な国。
・日本食がおいしくて、ヘルシー。
・フレンドリーでホスピタリティー精神に富んでいる。
・工業系の技術が進んでいる。
・経済的に安定していて豊か。
・桜がきれい。
・労働時間がとても長い。
・社交的でなく、パーティーや会議でしゃべらない。
・(ネイティブキャンプの講師をするまで)日本のことをほとんど知らなかった。
 
講師と生徒の関係はティーチング・サービスの売り手と買い手の関係でもあるので、ポジティブな回答が多くなるのかもしれません。しかし、顔つきを見るかぎりは本音で言っている人が多いと感じました。
 
(2)の質問に対しては、トヨタ、ホンダ、ソニーなどの回答が多く、任天堂、ユニクロ、楽天、ダイソーなどの名前を挙げる人もいます。
驚いたことに、計7人が 「Samsung」 を日本企業の名前として挙げました。
Samsungが韓国企業であることを伝えた後に「なぜ日本企業だと思ったのか?」と尋ねると「安くて品質がいいから」「名前の響きが日本語っぽいから」などの答えが返って来ました。
Samsungと類する回答にNOKIAもありました。NOKIAと答えた人は2名で、やはり「品質がよくて、名前の響きが日本語っぽいから」との理由でした。
 
安くて品質のよい製品をつくるのは日本企業、と思っている人がたくさんいることを知り、ジャパンブランドの賞味期限は残っている、と感じました。
しかし、ほとんどの人は「どこの国かは気にしていない。SamsungTOYOTAなら、いい製品なのだろうと思っている」とも言っています。
20代のイギリス人男性は「親の世代は、MADE IN JAPANMADE IN GERMANYなら安心だと言っていたけど、ぼくらの世代では気にしていない」と言っていました。
企業が多国籍化していることもあり、どこの国の企業か知らないし、知る必要もないと思っている人が増えているようです。
 
中国企業の製品についての評価が気になったので、直近で会話した4名に「中国企業の製品についてどう思うか」と聞いてみました。
「以前は情報セキュリティーの面で不安を感じたけど、最近は気にならなくなった。品質とコストのバランスはいい」(41歳 アメリカ 女性)
「中国製品の品質はよくない。スマホも服も靴も。安いから買っているけど、できれば日本製や韓国製のものを買いたい。でも残念ながら、身の回りにあるもののほとんどが中国製だ」(30歳 フィリピン 男性)
iPhoneSamsungの方が人気があるけど、XiaomiHUAWEIのスマホを使っている人もたくさんいる。中国製も悪くない」(31歳 ハンガリー 女性)
「品質と情報セキュリティーの面で中国製は使いたくない。中国製といえば偽造ブランドのイメージも残っている。しかし最近は、大きな橋やスポーツスタジアムなども中国企業が建設している」(36歳 南アフリカ 男性)
 
さて、今回の経験からグローバル展開している企業や海外進出を考えている企業で働いている人は、オンライン英会話を利用して市場調査をしたり、自社製品の評判を聞くことができると感じました。
仕事とは関係なく、趣味としても楽しめますので、たまには英語をしゃべりたいという人にもお勧めです。

2021年12月30日木曜日

「真剣なうなずき」のサインを見逃すな 『ISO通信』第66号(2021.12.30)


頭の中ではいろいろと考えているのに…
心の中には熱い想いがあるのに…
大勢の人の前でそれを言葉にしようとするとうまく伝えられない。
そんな風に思ったことはないでしょうか。

10代の頃の私は、いつもそうでした。
20代になって人前で話すことに少し慣れ、今では頭の中が整理されていない状態でも言葉が先に出てしまうことがあります。
感情が高ぶったときにその傾向があり、もう少し言葉を選べばよかった、と思うこともしばしばです。

人前で話すことが苦手な人は会議でも黙っていることが多いようですが、ある経営者から次のように聞いたことがあります。

「黙っていてもちゃんと考えている人と、ただボケーっとしている人の違いはすぐに分かる。話したいのだけど発言する勇気のない人からはその気配を感じる。そんな人に厳しい顔で『何か意見はないか』と尋ねると『特にありません』で終わってしまうので、優しく発言を促すようにしている。すると今まで発言していた人がハッとするような意見が出てくることもある。会議のファシリテーションでは、自信はないけどしゃべりたそうにしている人の気配を感じることも重要です」

この発言を聞いたのは数年前ですが、最近、ある会社の人事マネージャーが「オンライン会議では、ビデオ機能をオフにしての参加を認めるケースもありますが、それだと『真剣にうなずいている人』の顔が見えない。プロジェクト会議で発言がなかったとしても、真剣にうなずいている人はメンバーに加えたいのですが」と言っていました。

確かにそうだと思います。みんなの前で発言することが苦手でも、真剣にうなずいている表情を見ると共感してくれていることは分かります。


話は変わりますが、久しぶりに英語だけで話す会議に参加し、スピーキングの力が落ちていることを実感しました。相手の面前で話すときは、言葉がたどたどしくても身振り手振りでなんとか伝わっているような気もするのですが、オンラインだとジェスチャーで一生懸命さをアピールしようとしても、伝っていないように感じて不安になります。

英語会議における私のジェスチャーには「真剣なうなずき」と同じような効果があると期待しているのですが、相手がどこまで汲み取ってくれているかは定かでありません。

国際会議においては「何も発言せずニコニコと笑っているだけの日本人は薄気味悪い」と言われることもあるので、しっかりと発言することが大切です。そう思ってオンライン英会話を再開したのですが、世界各国の人々と会話していると「JAPANブランドには、まだ賞味期限が残っている」と感じる発見がありました。

JAPANブランドの賞味期限ってなに?と思ってくれた方がいたら、次号をお待ちいただければ幸いです。

本年も『ISO通信』にお付き合い頂き、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。

2021年11月27日土曜日

新卒一括採用が終身雇用の起点ではなくなってきた 『ISO通信』第65号

 



「ほとんどの社員が中途入社だったわが社も、ついに本格的な新卒採用を開始しました。一番の感想は、新卒を採って育てるのは、楽しい!ということです。もちろんコストはかかります。しかし『これがわが社の経営理念だ』、『ビジョンだ』、『理想社会の実現に向けて一緒に頑張ろう!』と言っていると起業した頃のことを思い出します」

これは、あるシステムインテグレーション企業の社長の言葉です。その社長は

「もっと早く新卒採用をしたかったのですが、知名度もなく、赤字が続いていた頃は無理でした」

とも言っていました。

この話はオンラインセミナーで聞いたのですが、質疑応答の時間があったので

「中途採用の場合でも、経営理念やビジョンを訴えることは重要だと思いますが、社会人には響きませんか」

と質問してみました。

「響く人もいます。そして響く人に来て欲しい。しかしその前に、中途採用の場合はスキルを見ています。例えば経理課長を採用したいとき、理念やビジョンに共感してもらっても、経理のスキルがイマイチだと採用はできません。スキルがあっても理念を共有できない人は採用しませんが、まずはスキルが先。大学生には、夢を語るところから入るので、そこは違いますね」

なるほど、久しく忘れていた感覚を思いだしました。私も大学生に対するリクルーティング活動をしていた時期があります。法学部や商学部の学生と会ったときに、法務や経理に対する適性がありそうか否かを気にしたことはありませんでした。その頃の私は営業部門に所属していて、人事部の先輩からは「一緒に働きたいと思えるかどうかを判断基準にすればいい」と言われていました。一緒に働きたいと感じる学生に出会うと自社のいい面を一生懸命にアピールします。一日に何人もの学生と面談して日が暮れると「あれっ?うちの会社って、そんなにすばらしい会社だったっけ」と同期入社の友人と会話しながら笑いました。

さて、経団連会長の定例記者会見(1122日)のコメント要旨として、以下の言葉が掲載されていました。

「新卒一括採用や長期・終身雇用などを特徴とするメンバーシップ型雇用は、定めた方向に社内一丸となって目標達成を追求する時には非常に有効である。経済が一層グローバル化し、社会が変容している時代には、多様性や円滑な労働移動を可能にする雇用システムへの見直しが必要である。そうとは言え、ジョブ型雇用への完全転換が必要等と早計に結論づけるようなことは、それこそ多様性を認めない考え方である。メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用を適切に組み合わせる自社型雇用システムを検討していくことがよいと思う」

新卒一括採用は終身雇用の起点となっていて、メンバーシップ型雇用の特徴の一つでもありました。しかし、前述のシステムインテグレーション企業の社長は「新卒者が育ってくれたら、できれば定年まで働いて欲しいが、巣立っていくことも認めざるを得ない」と言っていました。

また、1112日の日経産業新聞には「DeNAの南場会長は、粒ぞろいの宝石のような社員たちに起業を促し、長期的な関係を維持することが、DeNAの事業の幅を拡げると考えている」とありました。(「『社員よ起業せよ』DeNA南場氏のザクロ経営」より)

新卒一括採用と終身雇用は一体ではなくなりつつあり、これからは自分の会社を卒業した社員との関係を構築する「自社型の事業環境エコシステム」を作る必要もありあそうです。

2021年10月30日土曜日

二泊三日の面接ツアーに年休は必要? 『ISO通信』第64号(2021.10.30)

 今回のストーリーは、実際にあった二つの事例を一つにまとめているので、下記の内容は事実に即していますが、脚色もあります。主に最初の事例をストーリーのベースにしていますが、最近二つ目の事例があったので、題材として取り上げました。

***

大阪に住んでいるAさんが、採用面接を受けるために東京にやってきました。
勤務先での仕事が忙しく、当初は「年休を取る余裕がまったくないので、できるだけオンラインで面接してもらえると助かります」と言っていました。
オンラインでの一次面接に合格したAさんに対して、求人企業(Y社)の人事マネージャーは「二次面接が一番重要なので、なんとか本社に来てもらえないでしょうか」と依頼しました。
そしてAさんは「分かりました。テレワークとフレックスの合わせ技でなんとかします」と答えました。

Aさんは以下の方法を考え、実行しました。

・Y社の近くのビジネスホテルを予約(木曜日と金曜日の二泊)。
・木曜日の朝から16:00まで自宅でテレワーク。それから東京に移動。
・移動の新幹線の中でテレワーク。ホテルにチェックインしてテレワーク。
・金曜日の朝から16:00までホテル内でテレワーク。
・金曜日の17:00からY社で面接を受ける。
・面接終了後、ホテルに戻って、またテレワーク。
・土曜日に大阪の自宅に帰る。

Aさんが勤務している会社のフレックス制度ではコアタイムは10:00~16:00に設定されているので、就業規則上の問題なく面接に対応してもらうことができました。

面接の翌日、Aさんと会話した際に以下のような発言がありました。
「朝も夜もテレワークで働いたので、同僚は私が東京にいるとは思っていないでしょう。今日はちょっと観光してから帰ります。ワーケーションって、こんな感じなのですかね」

もしもAさんの会社の人事部長がこの事実を知ったら「せっかく整えたテレワーク制度やフレックス制度を、他社の面接を受けるために利用されたのではたまらない」と思うでしょう。そして、端末の位置情報を利用して社員を監視しようと考えるかもしれません。しかし、人事部長が「勤務時間中は位置情報アプリをオンにすることをルールにします」と通達したら、転職したくなる社員はさらに増えてしまいます。

人事部から見れば、Aさんの事例はテレワーク制度の目的外利用ということになりますが、Aさんの立場からすると有効活用です。

そもそも、テレワークと転職活動の相性はよく、在宅勤務の時間中に、他社のWEB面接を受ける人は珍しくありません。そしてWEB面接だけで合否を決定する会社も増えてきました。
社員を監視して他社の面接を受けさせないようにするよりも「今の仕事に夢中なので、転職は考えていない」という社員を多くすることの方が人事部にとって重要な仕事になりそうです。

2021年9月23日木曜日

「会議で決まったこと」の責任者は決まっていますか? 『ISO通信』第63号(2021.9.23)

 司馬遼太郎の小説『世に棲む日々』を読みました。文庫本で全四巻のボリュームがあり、前半の主人公は吉田松陰、後半の主人公は高杉晋作です。

幕末を描いた小説ですが、司馬遼太郎は物語の中で、日本人の民族的特徴について言及することも多く、第三巻の後半に「ヤクニン」というサブタイトルのついた節があります。

一部を引用してまとめると以下のようなことが書かれています。

“「ヤクニン」という日本語は、この当時、ローニン(攘夷浪士)という言葉ほどに国際語になっていた。役人というのは徳川封建制の特殊な風土から生まれた種族で、何事も自分の責任で決定したがらず「上司の命令であるから」といって明快な答えを回避し、あとはヤクニン特有の魚のような無表情になる。”

そして幕府に対して開国を迫る外国人から「上司とはだれか」と問い詰められると、その答えは「老中会議の面々」となるそうです。この節では、太平洋戦争についての記述もあり、もう少し引用すると

“日本国の存亡をかけた大戦でさえ、いったいだれが開戦のベルを押した実質的な責任者なのか、よくわからない。”

とあります。開戦時の首相だった東条英機は御前会議に出席する「上司」の一人にすぎない存在であり、煙のような存在の「会議」の決定で戦争が始まった、と司馬遼太郎は解説しています。

この節を読んで思い出したのが、東京都が築地市場を豊洲に移転した際に話題になったニュースです。移転先の豊洲で土壌汚染が発覚したため、土を入れ替えて盛り土する計画だったものが、豊洲市場の建物が完成してみると、盛り土ではなくコンクリートの地下空間があり、そこに水が溜まっていた、というニュースです。事実関係の詳細は忘れていましたが、あの当時(2016年)、盛り土するはずだった場所にコンクリートの地下空間が出来上がっているのに、その変更に関する意思決定の責任者が誰か分からないなんてことがあるのだろうか、と驚いたことはよく覚えています。

このニュースに関して「結局、責任者は判明したのだっけ?」と思ってWEBサイトを検索してみました。2016年11月に小池都知事は、都の関係者18名に責任があり、そのうち12名を処分した、と発表しています。(すでに都庁を退職していた6名は処分の対象外。)

うーむ…。「会議で決まったことであり、責任者は会議に関係した上司たちみんな」と言っているようで、幕末に開国を迫った外国人たちが「ニッポン人、ゼンゼン、カワッテマセンネー」と天国で笑っていそうです。

しかし都庁に限らず、民間企業においても、会議で決まったことの内容は明確だけど、だれが決めたのか、はっきりしないケースはあります。「誰かが決めたことでなく、会議で決まったことにしておいた方が、都合がいい」とみんなが思っていると、失敗したときに誰も責任をとらずにすみます。しかし、そんなことを続けていると、会社の業績はじわじわと悪くなっていきます。

事なかれ主義で漫然と仕事をしていると、魚のような顔の「ヤクニン」になってしまうので注意しましょう。


(※ 司馬遼太郎氏の「遼」は公式の表記では二点しんにょうです。)

2021年8月29日日曜日

「逃げの転職」は早まらずに。 『ISO通信』第62号(2021.8.29)


 「社長がワクチン接種を強制しようとしていますが、私はワクチンを打ちたくないと考えています。それで転職を考えるようになりました」

転職を考えている理由を質問すると、Aさんは上記のように答えました。Aさんはオーナー社長の下で働く中堅社員です。これまでは社長との関係も良好だったそうで、転職すべきか残るべきか悩んでいました。 

厚生労働省は「ワクチンの接種は強制ではなく、あくまで本人の意思に基づいて受けるもの」と説明しています。

私自身は、ワクチン接種の推進がコロナ感染の収束に寄与すると考えていますが、打ちたくないと考える人の気持ちも理解できます。Aさんは逆に「私はワクチンを打ちたくないのですが、ワクチンで感染が収まると考える人の気持ちも理解できます」と言いました。そしてAさんは、「お互いの考え方を尊重し合えるなら、私も転職を考える必要がないのですが、社長はワクチン接種を強制しようとするのです。その理由は、お客さまに対して『わが社の社員は全員がワクチン接種をすませています。だからできるだけ、営業マンの訪問を許してやってください』と言いたいからだそうです。理屈としては分かりますが、ワクチンを打ちたくないと思う私の気持ちと折り合いがつかないのです」と続けました。

Aさんがワクチンを接種したくないと考える理由をブログに書くことについて「個人の特定につながらない書き方であれば」ということで許可をもらっていますので、もう少し事情を説明します。

 理由について、Aさんは以下のように発言しました。

「妻がワクチン接種を強く拒否していて、彼女の話を聞くうちに自分も打ちたくないと考えるようになりました。妻が示してくる『科学的根拠』について、最初はどうも怪しいと思っていました。しかし、妻の意見を無視すると家庭の平和を維持できないので、妻が根拠としている情報に目を通すようになりました。『ミイラ取りがミイラになる』じゃないですけど、やがて私もワクチンが怖くなってきたのです」

なるほど、そういうことはあるかもしれません。しかし一方で、Aさんは、社長の経営姿勢に関して、ワクチン接種を強制的に進めるような強引さが、これまでは会社の成長の原動力にもなってきたと評価しています。

Aさんと話をするうちに、本心としては会社に残りたい気持ちの方が強いと感じましたので、私は「無理に転職せず、社長に理解してもらう方法はありませんか」と聞いてみました。

答えの代わりに「エージェントさんからみて、私は転職しない方がいいと思いますか」

とAさんから逆に質問がきました。 

転職には「攻めの転職」と「逃げの転職」があると私は考えていて、Aさんの場合は「逃げの転職」をせずともよい段階のように感じました。

攻めの転職は「もっと活躍するために、違う会社で勝負したい」などの気持ちが強いケースで、逃げの転職は「ここから逃げ出さないと心身の健康を守れない」と判断して職場を変える転職です。

ハラスメントが放置されている職場やコンプライアンス違反がまかり通る職場においては「逃げの転職」を決断する必要もあります。しかしAさんの場合は、社長と話し合うことでお互いが理解できる余地があるような気がしたので、それを伝えました。 

後日、Aさんから「妥協点が見つかったので、今回は転職を控えることにしました。磯さんのビジネスとしては、時間の無駄だったかもしれず、申し訳ありません」と連絡がきました。このようなメールをもらったときは「いつか、Aさんが部下を探すことになったら、そのときにお手伝いさせて下さい」と返信しています。実際に、数年後に連絡をくれる人もいて、すべての仕事が無駄ではないと思っています。 

どんな仕事でも短期的な利益を確保しつつ、長期的な視点も意識する必要があるのではないでしょうか。

2021年7月30日金曜日

「努力は嘘をつかない」と信じ続ける 『ISO通信』第61号

夏のオリンピックで柔道の試合を観戦するたびに、北京五輪で金メダルを獲得した石井慧選手の言葉を思い出します。

「神様っちゅうのはねぇ、がまんしてがまんして全部がまんした人にやっと一つだけご褒美をくれるんです」

大会後のドキュメント番組で語った言葉だと記憶しています。

4年間、我慢にがまんを重ね、やっと一つもらえるご褒美が金メダル。本当に重いメダルなのだと思います。 

ロンドンとリオデジャネイロの大会では、ソフトボールは五輪競技から外れていました。北京大会からの13年間、上野選手はいろいろなことをがまんしてきたことでしょう。そうして二つ目の金メダルを手にしました。 

オリンピックという舞台がないために、なかなか注目を集められないスポーツもあります。ゴルフがオリンピック種目入りすることが決まったとき、スカッシュの選手が発した言葉も印象に残っています。「ゴルフを選ばなくたっていいじゃない。ゴルフの人には輝ける舞台がいくらでもあるのだから」リオデジャネイロ大会の種目に、スカッシュが選ばれる可能性もありましたが、IOCの委員は、ゴルフと7人制ラグビーに投票しました。

私が長年にわたって親しんできた、フライングディスク競技の「アルティメット」もオリンピック種目入りを悲願としているので、スカッシュ選手の気持ちがよく分かります。

 オリンピックではありませんが、ある女子プロゴルファーがラジオ番組で語っていた言葉もときどき思い出します。

もう10年近く前のことで選手の名前は忘れましたが、国内のツアー選手権での順位が21位だった人の言葉です。

「私より努力している人が20人いるのです。そう思うしかありません。もしかすると私より努力している人は5人しかいなくて、後の15人は私よりゴルフの才能が豊かなだけかもしれません。でも、他人の才能をうらやんでもどうにもなりません。努力の量であと20人を抜き去ってチャンピオンになるか、諦めて引退するかの二択です」

 オリンピックから離れていきますが、昔、高校生の陸上競技大会を見学したとき、たくさんのチームがおそろいのTシャツを着てウォームアップをしていました。

シャツの背中には「努力は嘘をつかない!」とか「限界とは自分の心が決めるもの」などと書いてあり、真夏の太陽を背負いながら陸上部員たちが目の前を走っていました。

その大会は、インターハイの予選にもなっていた関東大会で、母校から出場している選手を陸上部の監督と一緒に応援していました。 

「背中の文字が青春ですね、みんなかっこいいなあ」と私が監督に言うと

「努力は嘘をつかないって、最後まで信じられる人間が強いのですよね。磯さん、今でも信じてます?」

と質問されました。

そのとき私は「ハイっ」と元気に答えられたのか「いやぁ、大人になると純粋なままじゃ、いられないですよね」などと答えたのか忘れてしまいました。 

それでも、アスリートが限界を超えようとしてプレーする姿を見ていると「他人の才能をうらやむよりも、自分にできる努力をするしかない」ことを思い出します。

 がんばれ、世界中のアスリートたち!

 


2021年6月27日日曜日

まねして、学ぼう! 『ISO通信』 2021年6月号 vol.60

 


日本のIT企業に勤めている中国人の男性から転職相談を受けました。

「日本企業に3年も務めてしまったので、もう中国企業には戻れません。のんびりとした日本企業のスピード感になれてしまいました。中国企業ほどの給料は期待しませんので、日本企業を紹介して下さい」

続いて、別なエピソードです。こちらは日系メーカーが中国に設立した合弁会社に出向していた人から聞いた話です。

「DXに関しては中国の方が圧倒的に進んでいるので、日本に帰ってきて驚きました。中国のやり方をまねしなければいけない状態ですが、幹部は『中国ってそんなに進んでいるの? ITのことは若いものに任せる』くらいの認識なので、全然話が進みません」

と嘆いていました。 

中国人からは「給料は安くても、のんびりした日本企業で働きたい」と言われ、日本人からは「幹部は中国のやり方をまねしようともしない」と言われました。

モノマネは日本企業の得意とするところ、と考え、中国企業からも学ぶ姿勢を強めてみてはどうでしょうか。

かつて日本企業は海外から輸入した自動車や家電製品を分解して、リバースエンジニアリングを行い、さらに優れた製品を世に出し、世界に冠たるメーカー王国となりました。

 

素人考えですが、ネットフリックスの仕組みをまねして、より便利なサービスを考えだし、いつかネットフリックスを逆転するようなことはできないでしょうか。

ネットフリックスのユーザー数は20211月の時点で2億人を突破しているようですが、世界には78億人もの人がいます。魅力的で便利な仕組みを作り上げているネットフリックスに対抗することはかなり困難だと思いますが、ビデオ通話の世界で圧倒的な存在感を示していたスカイプが現在ではほとんど利用されていないことを考えると、ネットフリックスも盤石とは言えないのではないでしょうか。 

こんな話を、IT業界に詳しい人にぶつけてみたら「『No Rules』を読んだことがありますか」と質問されました。

あります。ネットフリックス創業者であるリード・ヘイスティングス氏が著した『No Rules

この本には、最高の職場を作るためには「能力密度(talent density)」を高めることが重要であると書いてあります。日本語版では「能力密度」と訳されていますがtalent densityの方がしっくりきます。つまり、ネットフリックスには優れたタレントが密集している、ということです。そして本には「優秀な人材だけで組織をつくれば、社員に大きな自由を与えることができる」「世界最高レベルのスキルを持っている人に世界最高水準の報酬を払う」とも書いてあります。 

No Rules』を読んだことがありますか、と質問した人は「日本企業には世界最高水準の報酬を払って人材を集める発想がないので、ネットフリックスを逆転することは不可能に近いでしょう」と言いました。 

確かにその通りだとも思うのですが、日本発の世界的なサービスが生み出されることを願ってやみません。

ネットフリックスの会社の仕組みやサービスシステムをまねしたり、中国企業からも学ぶ姿勢を持ったりすることで、日本の企業もまだまだ成長できるはずです。

「学ぶ」の語源は「真似ぶ」だとも言われています。真似して学んで、また追い越しましょう。競争したり、共創することで世界は少しずつよくなっていくと思います。

2021年5月29日土曜日

自分でコントロールできることにフォーカスしよう 『ISO通信』 2021年5月号 vol.59

 「『ユーミンの都市伝説』が本当かウソか知りませんが、これはもう絶対に真似るべきです。優秀なクリエイターはどこにいてもネタを拾う努力をしています」

この言葉をテレビやラジオで聞いたのか、WEBサイトなどで読んだのか忘れてしまいましたが、久しぶりに実践の機会がありました。
『ユーミンの都市伝説』とは「ユーミン(松任谷由実さん)は、深夜のファミリーレストランで女子高生の会話にこっそり耳を傾け、それをヒントに作詞をしている」というもので、真偽のほどは存じません。

緊急事態宣言の期間中は、通勤電車に乗る機会も少ないのですが、先日、20代前半くらいの男性の会話が聞こえてきました。名前を知らない二人なので、AさんとBさんの会話形式で再現してみます。

A:デジタル庁の職員募集に、けっこう優秀な人が集まってるっぽいね。
B:えっ。デジタル庁ってもうあるんだっけ?
A:いや、まだ準備中だけど、人材募集してるよ。
B:優秀な人が集まってるの?
A:ツイッターで見てるだけなんだけど、こんな優秀な人が応募するんだって感じの人が結構いた。
B:ふーん。でも日本のITってダメダメってイメージあるよね。予防接種の予約とか。
A:いや、だからこそ伸びしろあると思わない?日本って、こんなにITが遅れてるのに、そこそこいい国じゃん。デジタル庁だけじゃないけど、ITが機能したら、もっと発展すると思うんだよね。
B: ふーん。デジタル庁に本気で期待してんの?
A:うーん、50パーくらい。

この会話を聞きながら、日本のことを「衰退途上国」と呼んでいる人のことを思い出しました。感染者の数を報告するのにFAXが使われていたり、感染予防ワクチンの接種が思うように進まなかったりする状況に、日本のことを「衰退途上国」と呼びたくなる人の気持ちも分かります。しかし「伸びしろのある国」と思っていた方が楽しく過ごせそうです。

さて、今回、電車の中で拾ったネタはこれだけの話ですが、在宅勤務でずっと家の中にいると、心の動きが緩慢になるように感じています。ここ数カ月は『ISO通信』を書くネタに困ることが多くなりました。以前は飲み会での友人との会話やセミナー会場で会った人との雑談などがなんらかのヒントになっていました。しかし最近は飲み会もなく、セミナーもオンライン形式ばかりで、隣り合って座った人と雑談するような機会もありません。そろそろ自粛モードを解除してアクティブに動きだしたいところですが、まだしばらくは我慢の時期でしょうか。

ワクチンの接種が進んでいる国の様子を見ると羨ましくなって、日本の状態にイライラすることもありますが、政府の対応を批判するより「伸びしろのある国」と思って待つ方が心は落ち着きます。
そういえば、先週のオンラインセミナーで「自分でコントロールできることにフォーカスしよう。コントロールできないことに悩んでも仕方がない」と教えてもらいました。
ワクチンの予約システム構築はデジタル庁に期待することにして、自分のやりたいことやコントロールできそうなことにフォーカスしょうと思います。



2021年4月25日日曜日

世界の社長さん909人に聞きました 『ISO通信』 2021年4月号 vol.58


 「世界の社長さん909人に聞きました!」

見出しをつけるなら、こんな感じでしょうか。


日本生産性本部が3月に公表した「世界経営幹部意識調査」を興味深く読みました。

世界の経営幹部1,538名から得たアンケート回答のうち、日本生産性本部では、CEO 909人(うち日本人118人)の回答を抜粋し、日本、米国、ドイツのCEOの特徴を比較・分析しています。

https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/c-suite-challenge202103.pdf

詳細は上記のサイトを見れば確認できますが、設問の一つに以下の質問と選択肢があります。

「2021年、貴社が経営課題を解決する上で障壁となるものはどれですか」

1)優秀な人材の不足

2)新型コロナウイルス感染症に関連した混乱

3)現行ビジネスモデルへのこだわり

4)革新的な組織文化の欠如

5)事業成長のためのデータの活用が不十分

6)変化を嫌う姿勢

7)データ分析スキルの欠如

8)不十分な組織内コミュニケーション

9)戦略的ビジョンの欠如

10)組織内の連携の欠如

11)多様性の欠如

12)ビジネスニーズを満たすためのリソースの制約

13)成果を公正に評価する能力の欠如

14)変化に抵抗する従業員

15)時代遅れのテクノロジー

16)変化に抵抗する中間管理職

17)縦割りの組織

18)従業員のエンゲージメント・レベルの低さ

19)戦略的ではない人事

20)規制

21)実情に合っていない報酬体系

22)短期的業績を重視するリソース配分

23)排他的な組織風土

この中から、最大五つまで選べるとしたら、どの項目を選びますか?

アメリカでもドイツでも「新型コロナウイルス感染症に関連した混乱」がトップであり、アメリカの経営者の62.5%、ドイツの経営者の60.5%がこの項目を選んでいます。

一方で、日本の経営者がこの項目を選択した割合は27.2%であり、欧米と比較するとコロナ禍が経営に与える影響は低いのかもしれません。

アメリカの経営者が、2番目に多く選んだ項目は「ビジネスニーズを満たすためのリソースの制約」の30.0%で、3番目が「時代遅れのテクノロジー」の27.5%でした。

一方で「時代遅れのテクノロジー」を選んだ日本の経営者は10.5%でした。個人的には、日本の経営者こそ「時代遅れのテクノロジー」について心配すべきではないかと思うのですが、アメリカの経営者の方がテクノロジーに対して敏感なのでしょう。

ドイツの経営者が2番目に多く選択した項目は「規制」の35.7%でした。規制を選んだアメリカの経営者は21.7%で、日本は7%です。日本の経営者は「規制」を所与の条件と考えて諦めてしまったのでしょうか。それとも「規制に守られている」と感じる経営者も多いのでしょうか。

ここに紹介した設問と選択肢に関して、実は1)から23)までの順番は日本人の経営者が選んだ順番です。

日本の経営者がトップに上げたのは「優秀な人材の不足」で32.5%でした。この項目はドイツでも3番目で34.1%です。しかし、アメリカでは9番目の14.2%でした。「優秀な人材の獲得」が上位に来ないところが、アメリカ企業の強みなのでしょう。


この他にもいろいろと興味深い設問と回答がたくさんありますので、是非、ご覧になって下さい。