2020年3月29日日曜日

家でネクタイする人と雑談しながら仕事ができる人  『ISO通信』 2020年3月号 vol.45

新型コロナウイルスの対策で、時差出勤と在宅ワークを実践しています。
オフィスでの原則的な執務時間は10時~16時になりました。朝は7:40から8:30まで自宅で仕事し、それから通勤しています。電車ではたまに座れることもあり、以前と比較するとかなり混雑は緩和されました。ウイルスに感染するリスクも低減していると思います。

夕方も16時に退社すると電車は混雑していません。17:00過ぎに自宅に到着し、再び在宅ワークに入るのですが、どうしても「くつろぎモード」になってしまいます。朝の在宅ワークは短時間ということもあり、集中できています。しかし、夕方の時間はリビングルームから聞こえてくる、テレビの音や家族の会話が気になります。また、家族と食事した後に仕事部屋に入る気になれないこともありました。
結局、16時に退社したのは数日で、いつもと同じような退社時間に戻ってしまいました。

以前から土日に自分の部屋で仕事することはよくあったのですが、生産性や集中力を意識していなかったことに気づきました。納期のある仕事は会社で終えるようにしていたので、土日は急ぎではない仕事をするケースが多くなります。例えば、新規開拓営業の準備。新しくお客さんになってもらいたい会社については、社長のコメント、財務状況、会社の評判などをWEB上でチェックします。社長のインタビュー記事を読んで“なるほど立派なことを言っているなあ”とか“その考え方には共感できるなあ”と思った会社にアプローチするのですが、もちろん開拓に失敗することもあります。忙しいので実際にアプローチするのは後にしようと思い、結局、営業開拓候補リストの中に入ったままの会社もあります。

営業開拓の準備は明確な「ワーク」ですが、土日は「プライベート」なのか「ワーク」なのか、曖昧なことをしていることも多いので、生産性や集中力を意識していませんでした。これからも、土日はそのスタイルで構わないと思っています。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が進むと在宅ワークが基本となり、必要なときだけ出勤する状況になるかもしれません。
原則が在宅ワークになっている友人は「昼メシの後、実はベッドで昼寝しちゃうんだけど、その方が午後も集中できる気がする」と言っていました。ある人からは「家でも勤務時間中はネクタイをしています」と聞きました。またある人は「職場の仲間と会えないのは寂しいので、週に2日くらいは出勤したい」と言っていました。
在宅ワークが不可能な職種もありますが、ホワイトカラーの転職相談で聞く限り、オフィスでなければ出来ない仕事は少ないようです。
在宅ワークでは、昼寝することも、ネクタイをすることで仕事モードに入ることも、仲間とチャットでおしゃべりしながら仕事することも(ある意味)自由です。アップルウォッチのようなツールで心拍数を測ったり、チャット上の会話を監視することで、昼寝や雑談を管理することは可能だと思いますが、心拍数データの提出を求める会社に優秀な「人財」は集まらないでしょう。
新型コロナウイルスの感染が収束した後は、在宅ワークだけでなく、喫茶店やコワーキングスペースでのテレワークを認める会社が増えるかもしれません。
自分に適した「仕事モード」への入り方をみつけたり、「仕事モード」など意識せずその場で処理する習慣を身に着け、テレワークに順応したいと思います。

2020年2月22日土曜日

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし 『ISO通信』 2020年2月号 vol.44

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
江戸時代の書物『甲子夜話』の一節にある言葉だそうですが、先日亡くなった野村克也氏が好んで使っていました。
 
プロ野球の選手としても偉大な記録を残した野村氏ですが、世代的に監督としての印象の方が強く残っています。
「勝ちに不思議の勝ちあり」
と言うときの野村監督の顔には苦笑と皮肉と安堵が入り交じっていたようで、今にして思えばチャーミングでした。
「ヘボな野球したのに勝てちゃった、不思議だねぇ、でも助かった」という気持ちが表れていたのでしょう。
 
一方で「負けに不思議の負けなし」と言うときの野村監督は憮然としていました。
「あんな野球をしてたんじゃ、勝てるわけないよ。負けるべくして負けた」と顔で語っていました。
 
野村監督は甲子園球場をホームとする阪神タイガースの監督も務めていました。
『甲子夜話』や「甲子園球場」などに使われる「甲子」って何だろう?と思って調べてみました。
自分なりの理解をAさんとBさんの会話形式で説明してみます。
 
A「今年の干支(えと)って、なにか知ってる?」
B「ねずみ、でしょ」
A「十二支は子(ね)だけど、干支は庚子(かのえ・ね)だよ」
B「え、干支と十二支って違うの?」
A「子、丑、寅…の十二支は順番に言える人も多いけど、十干(じっかん)は、甲、乙、丙くらいまでしか、知らない人が多いんじゃないかな」
B「丁まで知ってるけど、それが『十干』というものだとは知らなかった」
A「丁の後は、戊、己、庚、辛、壬、癸と続き、全部で十干。『十干』と『十二支』を組み合わせたものが干支で、全部で60の数を表せるんだ。トップバッターが『甲子』で二番手は『乙丑』。60番目の『癸亥』まで来ると再び『甲子 』に戻るんだよ」
B「なるほど。60歳の還暦って、干支の暦が循環することだったのか」
A「そう、60年で一回り。ちなみに、日の干支は60日で一巡するよ」
B「日にも干支があるの?」
A「うん、たとえば今日(2/22)の干支は『乙未』で、次の『甲子』は3月22日。松浦静山は『甲子』の日の夜に随筆を書き始めたから、本の名前が『甲子夜話』になったそうだよ」
B「ふーん。ところで『甲子園』の甲子も干支と関係があるの?」
A「もちろん。甲子園が完成した1924年の干支が『甲子』だった事が名前の由来なんだ」
B「なるほどねぇ」
 
というわけで
『甲子』には「いの一番」のような意味があり「新しいことを始めるのにふさわしい」「縁起がいい」とされていたようです。
 
脱線が長くなりましたが、今日の本題は「負けに不思議の負けなし」です。
負けたときには、なんらかの理由があるはずです。なかなか結果が出ないときも然り。
結果が出ない状態が続いているなら、プロセスを改善する必要があります。
「今までのやり方を変えるのは面倒なので、次の『甲子』の日が来たら取り組むことにしよう」などと考えていたら「負けて不思議のない男」と天国にいる野村監督から笑われてしまいそうです。
 
小さな改善はコツコツと進め、イノベーションにつながるような改善は、散歩でもしながら「ひらめき」を得たいと思います。

2020年1月19日日曜日

ファン・ラン気分で仕事ができていませんか? 『ISO通信』 2020年1月号 vol.43




週に一度のジョギングを続けて30年以上になりますが、昔と比べて走るスピードは遅くなっています。最近は5キロの距離を約30分で走っているのですが、先週は目標タイムを25分に設定してみました。

走り始めて5分で息が上がり胸も苦しくなったので、一旦、いつものペースに戻しまた。その後、再びスピードアップし、走り終えたときのタイムは2658秒。普段の90%の時間でいつもの距離を走ったことになります。

はっきり言って、しんどい。

マラソン大会に出て誰かと競ったり、設定した目標タイムを切りたいのなら、これからも頑張って走るでしょう。しかし、私のジョギングはただのファン・ラン(Fun Running)です。走ると気持ちいいから走っているだけなので、苦しい思いをして25分を切る必要はありません。

ではなぜ、先週は25分で走ろうと思ったのかと言えば、友人から「9時間かけていた仕事を8時間で終えても、しんどいだけなんだよね」と聞いたことがきっかけです。

「それなりに仕事は面白いし、工夫や改善もしてきたけど、一日、9時間くらいでやることに慣れちゃってたんだよね。残業時間を減らすために8時間で終えようとすると当然しんどい。昔、10時間かけてやっていた仕事を9時間にしたんだから、もういいじゃん。
たまに早く帰ってセミナーに参加したりすることはあるけど、今さら毎日勉強しようとは思わないし」なるほど、毎日1時間程度の残業ですむなら楽しいと感じていた仕事も、8時間で終えようとするとしんどくなる。それを聞いたとき、二つのことが頭に浮かびました。

・明日は、9時間の仕事を8時間で終えるようなつもりで、仕事をしてみよう。
・次回のジョギングでは、いつもの距離を25分で走ってみよう。

実際にやってみると両方ともかなり大変でした。仕事の方は15時以降後はいつものペースに戻っていたかもしれません。

大学の同期で、大企業で部長を務めている友人が「今さら毎日勉強しようとは思いわないし」と言ったとき「俺はまだまだ勉強しないと、いつ淘汰されるか分からないからなあ。小さい会社は大変だよ。それなりに楽しんでいるけど」と答えました。しかし、先週のジョギングの後、こう思いました。頑張れば8時間で済む仕事に9時間を費やしているから「それなりに楽しんでいる」などと言えるのではないか、と。

私自身も9時間でやるリズムに慣れてしまっていたようです。ファン・ランのような感覚で仕事をこなせていたことに気づきました。(もちろん、切迫した場面では、緊張感と集中力を高めています。)

ジョギングの方はこれからも30分で走ればいいのですが、仕事に関しては、8時間で終えても楽しいと感じるレベルに進化する必要があります。キーボードを打つ速さを10%アップするようなスピードアップもしたいのですが、より高度な仕事にチャレンジし、短時間で成果を上げる方にシフトしたいと思います。

2019年12月28日土曜日

応援されるとスポーツ選手や会社員のパフォーマンスは上がるのか? 『ISO通信』 2019年12月号 vol.42

今年の12月は、例年よりも飲む機会が多くありました。
飲み会の席にラグビー好きの人がいると
「サンウルブズは勝てなかったのに、なぜ日本代表は強かったのですか」
と質問しています。
サンウルブズは、南半球のプロクラブによるラグビーリーグである『スーパーラグビー』に参戦している日本チームで、ヘッドコーチは日本代表のジェイミー・ジョセフ氏が兼任し、メンバーも現役日本代表や日本代表候補で構成されています。
ラグビーに関して、にわかファンの域を出ない私ですが、2019年のシーズンにおいて、サンウルブズが2勝14敗の成績であることは知っていました。
そのため、ワールドカップで日本がベスト8に残れるとは、思っていませんでした。
アイルランドに勝利した後でさえベスト8は厳しいと思っていたので、スコットランドに勝ったときは心が揺さぶられるほどの感動がありました。テレビの画面に向かって「スゴイ!そして疑っていてゴメン」と言いたくなりました。
さて、質問に対する答えは二種類あって
「日本全国で、あれだけ応援されたら100%以上の力が出るよ」
という意見が主流でした。
(もう一つの答えは「サンウルブズは常にベストメンバーを組める状況ではなく、代表選手だけが試合に出ていたわけではなかった」というものです。)
応援が力になることはプロスポーツの世界では統計的に確認されていて、野球もサッカーもホームスタジアムでの勝率と、敵地での試合も含めたトータルの勝率を比較すると、通常はホームでの勝率が全試合での勝率を上回ります。
今シーズンのプロ野球の記録を確認したところ、セ・パ合わせて12球団のうちヤクルトスワローズ以外の11球団において、ホーム球場での勝率が全試合での勝率を上回っていました。
サッカーのJリーグに関しては、1993年~2016年までに行われた5,159試合の結果を調べた人のブログによると、ホームでの勝率42.5%に対して、アウェイでの勝率は33.7%になるそうです。(90分で決着しなかった試合は引き分け扱い)
応援が力に変わるなら、職場においても上司が部下を応援すれば、メンバーのパフォーマンスは上がるのでしょうか。
しかし、毎日毎日、上司に「ガンバレ、ガンバレ」と言われたら、パワハラで訴える方向で力が発揮されてしまいそうです。
上司に応援されると「うっとうしさ」や「プレッシャー」を感じる人もいて、普段通りのパフォーマンスにならないケースもあります。
では、お客さんに応援された場合はどうでしょう。
お客さんから「頼れるのはあなたの会社しかないので、何とか助けて下さい」と言われたらプレッシャーになるかもしれません。しかし、自社と競合他社のいずれかをお客さんが選べる立場にあり、それでもなお
「今度のプレゼンテーションでは、あなたの会社に頑張ってもらいたい」
と期待されたら、俄然、やる気がでるのではないでしょうか。
B to Bのビジネスでは、お客さんの製品やサービスのファンになると、お客さんもこちらを好意的に見てくれるようになります。逆にお客さんのプロダクトに愛着を感じない場合、自社の製品やサービスの質が高ければ売ることは可能ですが、お客さんから応援してもらうレベルにはならないでしょう。
お客さんを応援し、お客さんからも応援してもらう。
それが出来れば、いつもホームグラウンドで戦うような心理状態で、高いパフォーマンスを発揮できそうです。

2019年11月30日土曜日

情報発信する人だけに返ってくる情報がある 『ISO通信』 2019年11月号 vol.41

「ピザ、ピザ、ピザ と10回言ってみて下さい」
そう言って、相手に10回繰り返してもらい、その後で肘を指差しながら「じゃあ、ここは?」と質問すると相手が「ひざ」と答えてしまう遊びがありました。

では「トランサーチ、トランサーチ、トランサーチ」と10回、言ってみて下さい。

ハイ、これであなたも、私が勤めている会社の名前が「トランス・サーチ」ではなく「トランサーチ」だと覚えましたね。
すいません、つまらないことに付き合わせてしまいました。
実は私自身、入社前はトランス・サーチだと思っていました。トランサーチってなんかしっくりこないなあ、と思っていたのですが、いつの間にか愛着を感じるようになりました。

先週、マレーシアに出張し、アジアを中心とした世界の10都市から集まった同僚との会議に参加しました。ロンドンから来た女性CEOは、各都市のメンバーに対して「トランサーチのブランド力を高めるために、SNSなどを使って情報発信しましょう」と呼び掛けました。

場面は変わりますが、日本でセミナーや勉強会などに参加すると
「SNSやブログを使って、積極的に情報発信しましょう」と発言するセミナーの講師や登壇者がときどきいます。
メールマガジンの『ISO通信』を私が始めたのも、それらの言葉に刺激されてのことですが、最初はとても大きな勇気が要りました。3年経った今でも、送信のボタンを押すには、それなりの勇気が必要です。

このメールマガジンの配信先には、大企業の社長や著名なコンサルタントなどもいて、しかも近しい関係とは言えない人もたくさんいます。(簡単に言うと、一度名刺交換したことがあるだけの人に送りつけている状態です。)
そのような偉人たちに「ピザ、ピザ、ピザ と10回言ってみて下さい」で始まるメールを送っていいのだろうか、と大きな不安はあるのですが、今回も送信ボタンを押してしまいました。

「情報発信しよう!」と呼び掛けている人たちの共通の教えに「情報発信をしている人だけが得られる情報がある」というものがあります。

実際にその通りで、メールマガジンに対する返信をもらうと自分とは違う視点があることに気づきます。もちろん、メールを配信する前から、自分とは違う意見があることも想像しているのですが、意外なポイントを指摘されることもあり、新たな気づきとなります。

また、普段はめったに会うことがなくても、たまに返信をもらうだけで、心の近さを感じるようになり、書き続ける動機にもなります。

それから、数年前に一度会っただけの人でも、メールマガジンを送っていることで、こちらから再度連絡するときの心理的なハードルが下がることがあります。

このように、たくさんのメリットがあるのですが“あ~、今月はサボりたい”と思うこともあります。自信を持って発信できる内容のケースは少なく、むしろ「ピザ、ピザ、ピザ」で大丈夫かな、と不安に思うことの方が多いためです。

それでもなんとか、第41号を11月中に配信することができました。
(これで、月に一回のペースをキープ!)
ブランド価値の向上につながるかは微妙ですが「トランサーチ、トランサーチ、トランサーチ」と三回唱えて、今月号を終わりたいと思います。

【追伸 ①】
世界各国の同僚たちの写真。↓
http://www.transearch.com/consultants/consultants

アルファベット順で載っていて
「なぜ日本人の名前はKで始まるのか?」
と聞かれたことがありますが、なぞです。

【追伸 ②】

上の写真は、TRANSEARCHのアジア・パシフィック カンファレンスの様子です。

2019年10月22日火曜日

職場じゃ言えない「アイ ラブ ユー」 / 『ISO通信』 2019年月10号 vol.40

「ジョナさ~ん、アイ ラブ ユー」
ジェーンは歌うように言いました。本当は「Jonathan I love you.」 と言っていたのですが私には「ジョナさ~ん」 と聞こえることがありました。ジョナサンには姉のキャサリンがいて、二人の母親であるジェーンは「キャサリーン、 アイ ラブ ユー」なんてことも、ひんぱんに言っていました。

ジェーンの家にホームステイしていた私は ”ガイジンちゅうのは、なんでこう毎日毎日、アイラブユーとか言えるんだろう”と不思議に思いました。しかし、10代後半のキャサリンもジョナサンも素直に育っているので、愛情を言葉で伝えるのは大切なことかもしれない、とも感じていました。


オーストラリアのキャンベラでホームステイしていたのは30年も前のことです。しかし、ジェーンの「アイラブユー」は結構なインパクトあがり、自分が親になってからも忘れていませんでした。そして私は二人の息子たちに向かって、毎日のように「アイ ラブ ユー」と言い続けました。というのは、さすがに冗談です。しかし、子供を叱った後には「君たちのことが好きだからこそ、怒ったり、注意したりするんだよ」と付け加えていました。
高校生と中学生になった二人の息子たちは、キャサリンやジョナサンのように素直に育つはずだったのですが、しっかりと反抗期に入ってしまいました。あるとき次男を叱り「好きだからこそ、怒るんだぞ」と言うと「キモっ!それが嫌なんだ」と言い返されました。
いつもなら「親に向かって、キモいとはなんだ!」とさらに怒るのですが、考えてみると自分が中学生の時に「お前のことが好きだから叱ったんだぞ」なんて親から言われたら「気持ち悪い!」と言い返したと思います。  

頭では息子の気持ちもわかるのですが、理不尽に反抗的な態度をとられるとこちらも腹が立ち、感情的になってしまうこともあります。子供が小さいうちは、文字通りの腕力で押さえつけることがありました。しかし、それが何の役にも立たないことをすぐに悟りました。腕力で制圧されても、納得しない限り、行動を改めようとはしません。次は親にバレないようにやろうと狡猾になるだけです。
納得してもらうためには話し合いしかありません。しかし「ちゃんと話し合おう」と呼び掛けているのに無視されると、またまた腹が立ちます。最近は、腕力が拮抗しつつあるので「お小遣いをあげないぞ」的な言葉を口走りそうになりますが、これも腕力による制圧と同じなので、止めています。

結局のところ、無視されても粘り強く呼びかけて、納得するまで話し合うしかありません。
そして、話し合って納得したルールに関しては、子供たちも守ろうと努力するようです。しかし遊びたい気持ちが勝って、やっぱり逸脱してしまう。
そんなことの繰り返しです。

さて、職場での人間関係に置き換えてみたとき、上司は部下にどのように接するべきでしょう。反抗的になってしまった部下が心を開いてくれるまで待てる上司はどれほどいるでしょうか。
逆に、権力を振りかざして制圧しようとする上司に反発せず、話し合いを求めることができる部下は何割くらいいるでしょうか。
職場の場合、大人と大人の対立なので、表面的には両者が納得しているように取り繕うことは可能です。しかし、それでは生産性の高い職場にはなりません。

上司のみなさん、
ジェーンおばさんのように「アイ ラブ ユー」と部下に語りかけましょう。

部下のみなさん、
そんな上司がいたら「キモっ!」と言い返して下さい。

そんな喜劇みたいな職場はないと思うので、厳しい言葉の裏に愛情のかけらがあると感じたら、納得できるまで話し合うことを提案しましょう。

2019年9月28日土曜日

インターンシップには「かばん持ち」が最適?『ISO通信』 2019年月9号 vol.39

とある懇親会で大学生と会話する機会がありました。
「就職先として、大企業も選択肢に入りますか?」
と質問すると
「ベンチャーしか考えていません。ハッキリ言って大企業には魅力を感じません」
と、即答でした。ベンチャー企業が主催したセミナーの後の懇親会だったので、想定内の答えです。
「大学の友だちにも、ベンチャー志向の人が多いのですか」と聞いてみると
「自分の周りには結構いますけど、全体としては少数派かもしれません」
との答えでした。 
 
まったく別な懇親会で、小規模企業でインターンをしている大学生と会話しました。
その人は慶応大学の学生で、インターン先は社員数が10名程度の企業です。
「この会社に就職することもありそうですか」と質問すると
「いやぁ、それはちょっと」
と口を濁しました。するとその会社の社長が、すっと寄って来て
「うちみたいなところに、こんな優秀な学生が来るわけないじゃないですか」
と割って入ってきたので
「でも、インターンに来るくらいだから、興味はあるわけですよね」
と、学生の方を見て聞いてみました。
 
 (学生)「小さな会社の方が、実務を深く体験できると聞いて、この会社のインターンに参加させてもらいました。実際、仕事は面白そうなので、将来的には『あり』かもしれません」
(社長)「そこなんですよ、私の狙いは。卒業してすぐにうちに来てくれるとは思っていません。でも大企業で2~3年働いて、仕事が面白くないなあ、と感じた時に、うちに来てくれたらいいんです。」
(私)「なるほど。いい作戦ですね。(学生の方に顔を向け)どうですか、2~3年後は?」
(学生)「2~3年で自信がついていればいいのですが、お荷物になってしまいそうです」
(社長)「大丈夫。君なら、うちに来て1年もすれば、戦力になれるよ。2週間、かばん持ちやってもらったので、それくらいは分かる」
 その言葉を聞いて、再び“なるほど”と思いました。
その社長が、実際にかばんを持ってもらったか否かは別にして、学生が社長の行動のどこに興味を持ち、どんな質問をしたのかによって、将来の活躍度合を判断することができそうです。
 
大企業の場合、インターンシップにたくさんの学生が応募して来るので、一人一人に長期のインターンを実施することは困難です。このため「1dayインターンシップ」を実施するのですが、1日だけでは会社説明会と大きな違いはありません。

中小企業にとってもインターンの受け入れは大きな負担ですが、優秀な学生との接点にもなるため、長期のインターンを実施するのは、中小企業に多いようです。前述の社長のように、学生と一緒に行動する時間をたっぷりとれるなら、働くことの楽しさや厳しさを伝えることができるでしょう。
 
さて、中小企業の社長に経営幹部を紹介する場合、社長と候補者の相性は非常に重要となります。スキルやコミュニケーション力に問題がないのに「どうも相性が悪い気がする」という理由で、選考が進まないケースがあります。
逆に、転職相談を受ける場面では「入社した当初は社長との相性もよかったのですが、仕事を進めるうちに社長に対する印象が変わってきました」と告げられることがあります。
この場合、採用段階では相性よりスキルを重視した社長が、入社後に“やっぱり相性の悪さが気になってきた”と考えている可能性もあります。
中途採用において、候補者が社長のかばん持ちをする機会があれば、ミスマッチを解消できるのではないか、と思いました。しかし、候補者の段階の人を商談に同席させたりすることは、実際には難しいかもしれません。

当社には、企業カルチャーや上司の考え方との相性をチェックするツールもありますので、ご連絡をお待ちしております。(と、たまには宣伝も。)

↓ 株式会社トランサーチ・ジャパン アソシエイツ 
http://www.transearch.co.jp/index.html

2019年8月31日土曜日

「球数制限」と「残業制限」は似ている? 『ISO通信』 2019年8月号 vol.38

「好きなときに働きたいのですが、こちらの会社はどうですか」
転職相談のときに質問され、
「その点は心配ありません」
と答えました。
質問した人(以下、Aさん)の意図は「土日や夜の時間に働くことが制限されていませんか?」ということで、常に自由な時間に働きたいと主張しているわけではありません。

コンプライアンスやセキュリティ管理の面から、土日や夜間に仕事ができないルールや仕組みを徹底している会社も増えています。
Aさんは管理職手前の男性で、成長意欲に関しては野心的かつ貪欲なタイプです。土日や夜間に仕事をする際に「毎回、上司に承認してもらう必要のある会社ではストレスがたまりそう」と考え、自分の裁量で働く時間をコントロールできる職場を理想としています。
Aさんは、自分がワーカホリックになりやすいタイプであることを自認していますが、健康や周囲との協調性には注意しいているそうです。

「私のような人間を放置しておくと勝手に働いてしまうので、強制的に仕事から離れる仕組みをつくらなきゃダメだと考える人もいるでしょうね。でも、定時で帰って家でのんびりしていたら、成長できないと思います」
Aさんの発言を聞いて、高校野球の球数制限のことを思い出しました。
プロ野球の世界では、ピッチャーの肩や肘を守るために投げ過ぎを防止することは当然で、先発投手は6日~7日に一度の間隔で登板することが一般的です。
しかし、トーナメント戦を戦う高校野球では、大会期間中、毎日のように投げるピッチャーもいて、そのために故障することもあると考えられています。
これを防ぐために、一つの試合で投げられる球数を制限すべき、という議論があり、近年は賛成派が増えているようです。

甲子園に出場するようなチームの監督が、“二番手の投手を使って負けるわけにはいかない”と考える気持ちはよく分かります。また、高校生の投手なら“仲間と一緒に甲子園に行きたい”“もっと、うまくなりたい”と考えて、毎日でも投げたいと思うかもしれません。
逆に、体に異変を感じる前の高校生が「けがのリスクがあるので、今日は投げません」と主張することは難しいでしょう。高校生の体を守るには、球数制限などの規制は必要だと思います。

サラリーマンの世界でも、社員の健康を守るために、働き過ぎを防止することは当然と考えられるようになり「うちでは、定時退社が当たり前です」と聞いても驚かなくなりました。

しかしまだ、上司が帰らないと部下も帰れない雰囲気の会社も多く、納期を守るために残業せざるを得ない職場もたくさんあります。総合的に考えると、働く時間の総量を規制する法律は必要だと思いますが、残業させない仕組みを徹底し過ぎると、Aさんのようなタイプからは敬遠されます。

高校生投手の肩を守るために監督が注意する必要があるように、社員の過労を防止するために管理者は注意を払う必要があります。しかし、いつまでも管理者に注意してもらう立場に甘んじていると、面白い仕事にはありつけません。
年功序列で管理職になれたらラッキーと考える人もいますが、自己裁量で時間や仕事量をコントロールできる立場に早くなった方が、仕事も生活も充実すると思います。

2019年7月27日土曜日

「論理」と「感情」のバランスが大切 『ISO通信』 2019年7月号 vol.37

今月は月の初めと後半に「論理と感情」について考えさせられるニュースがありました。
(『ISO通信』は2019年7月号で4年目に入りました!!)



「犬の肉を食べる文化圏の人に対して、私は文句を言いません。だから鯨の肉を食べる文化を否定しないで下さい」
反捕鯨派の人に対するお願い(というか主張)をネット上で読みました。
頭では「その通り」と考えるのですが、「犬はやめようよ」と思う気持ちがあります。
だって、犬がかわいそうじゃないですか。
と言っておきながら、
「鯨がかわいそうという理由で捕鯨に反対するのは論理的でない」と主張したくなることもあります。
なんて身勝手なんだろう、と思うわけですが、世の中、論理と感情の両方で成り立っていることを理解しないと対立は激化してしまいます。
例えば、芸人と会社の対立。
吉本興業と芸能人の間には雇用類似的な関係があり、「闇営業の禁止」や「反社会的勢力との接触禁止」は明文化されていなくても慣習法的な規則になっていると仮定します。
その場合、ルールに違反した人が処分されることは論理的に正しいことです。
しかし、罪の程度に対して罰が大きすぎる場合(あるいは軽すぎる場合)は、論理的とは言えません。

今回のケースでは「反社勢力との接触によって会社の名誉を傷つけられた」「ルール違反の闇営業をしていた」「しかも金銭は受け取っていないとウソをついていた」ということで、会社側が感情的に「許せない」との気持ちになってしまい、必要以上に罰が大きくなってしまったのかもしれません。あるいは、罰の大きさとしては「契約解除」が相当であるのに、パワハラ的な圧迫があったようなので「処分が厳しすぎる」と世間が感じているのかもしれません。

個人的な感覚ですが「処分を撤回する」と聞いたときに“闇営業も反社会的勢力との接触もOKということ?”と疑問に思いました。論理とは関係なく、感情だけで判断しているように見えます。

仮定を少し変更して、売れていない芸人の闇営業は会社側も黙認していたとします。その場合、闇営業自体は大きなルール違反ではなく、売れっ子芸人が闇営業をしたことに腹を立て、感情的になってしまったのかもしれません。

二人のタレントの謝罪会見の後、社長が以下のように発言していたらどうなっていたでしょう。
「君たちのしたことに対して、今回は契約解除という処分をせざるを得ない。甘い処分をしたのでは、吉本興業の姿勢が問われる。反省している姿を世間が許してくれる日が来たら、また一緒にやろうじゃないか」
あるいは
「契約書の締結や規則を明確にしていなかった会社側にも責任はある。よって今回は、○○ヶ月の謹慎処分とする」
そんな対応がいいのではないかと思ったのですが外野からは何とでも言えます。

 私を含め、修羅場の外にいる人が結果を見てから「論理的に考えて、こうあるべきだ」と評論するのは簡単なことです。しかし自分が当事者になっていたら、感情が先に立ってしまい、論理的に考えることなど忘れてしまうかもしれません。
リーダーを育成するには、若いうちから修羅場を体験させるのがよいと言われるのは、場数を踏むことで感情をコントロールすることができるようになるからでしょう。
まだまだ、修行の身です。

2019年6月22日土曜日

ある日、突然、転勤を命じられたら… 『ISO通信』 2019年6月号 vol.36

「うちの会社、家を買うと転勤させられるんだよ」
「うちもそう!」
「えーっ、私の会社もそうです。なんで会社って、家を買ったばかりの人を狙って転勤させるんですかね?」
「会社の命令は絶対だ。辞令一本で、どこへでも飛ばせることを忘れるな!ってことを教えるための『見せしめ』だろ」
20年くらい前のことですが飲み会の席で、そんな会話がありました。

当時、私は人事部に所属していて
「人事って、ホントにそんなこと考えてるの?」
と、転勤を命じられた直後の友人に質問されました。
「いやいや、そんなことないって。家を買ったばかりの人を狙って転勤させることなんてないから」
真面目にそう答えました。


K社の育休後の転勤命令が話題になり、「家を買うと転勤」の話を思い出しました。
全国転勤のある会社では、家を買うと転勤させられるという話はよくあります。その理由として「住宅ローンを組むと会社を辞められなくなるので、転勤を拒否できない人を狙って、会社が異動命令を出している」と言われることがあります。しかし、私は違うと思います。「家を買うと転勤するケースが多い」と感じる理由は、インパクトが大きくて印象に残りやすいからです。

「うぉー、家を買う契約して、まだ住んでもいないのに、転勤命令でた~」
「○○さん、マイホームを買って引っ越したばっかりなのに、今度、転勤ですって」
など、家を買ってすぐに転勤命令が出ると、いろいろなところで話題になります。
逆に「家を買って3か月になるけど、転勤の辞令でなかったー」と吹聴する人はいません。
「6年間は住んたけど、結局は家を買うと転勤させられるんだ」と周囲に話す人もいません。
家を買った直後に転勤命令が出た人の話はすぐに伝播するので、頻繁に起こっている現象のように感じます。

転勤に関する資料をWebサイトで探してみると、独立行政法人の労働政策研究・研修機構が広範囲に及ぶ調査を行っていました。その名も「企業の転勤の実態に関する調査」(2017年10月に公表)
従業員が300人以上の企業に対する調査で、全国の1800社から回答を得ていました。
その資料の中に「(社員が)転勤に関する配慮を申し出る制度・機会があるか」という質問があり、「ある」と答えた企業が84%もありました。
「転勤において家族的事情等を考慮した内容(複数回答)」に関しては、「親等の介護」57%、「本人の病気」42%、「出産・育児」28%、「結婚」24%、「子の就学・受験」22%、「配偶者の勤務」20%と続き、「持家の購入」は9%でした。

転勤に関して、持家の購入に配慮してくれる会社が9%もあるのですね。(もちろん「持家を購入したばかりの人を狙って転勤させるか」などという質問項目はありませんでした。)

さて、110ページにも及ぶ調査データには興味深い内容もあります。転勤経験の満足度を社員に質問した項目では、78%の人が満足と回答していました。(もしかすると、会社は優等生だけを選んで、アンケート用紙を配ったのでしょうか?)

「できれば転勤したくない」の項目では、そう思う人が40%、そう思わない人が31%(「どちらともいえない」が29%)です。転勤したくないと思っている人が多いのに、78%の人が転勤後に満足しています。
また、会社が考える「転勤の目的(複数回答)」では「社員の人材育成」が66%で第一位です。
(他に、「組織運営上の人事ローテーションの結果」53%、「事業拡大・新規拠点立ち上げに伴う欠員補充」43%など)

社員の満足度が高く、人材育成にもなるのであれば、転勤もデメリットばかりではなさそうです。
会社は転勤の目的を丁寧に説明し、社員は「なぜ自分なのか」をしっかりと確認することで、転勤命令による摩擦やストレスを軽減できるのではないでしょうか。

2019年5月27日月曜日

30年ぶりにロンドンを訪れて 『ISO通信』2019年5月号 vol.35


久しぶりの海外出張で、ロンドンに行って来ました。

学生時代(30年前)にも訪れたことのある都市ですが、当時はどの観光スポットにも日本人がたくさんいて、現地の人から少しずれたトーンで「コンニチハ」と声をかけられることもありました。
しかし今回は英国に着くなり、空港スタッフから「ニーハオ」と挨拶され、アジア系観光客の主役が中国人に移っていることを実感しました。



出張の目的は、世界の60の都市から集まった同僚と情報交換したり、グローバル本部が開発した採用アセスメントツールの使い方を学んだりすることです。
会議は4日間に及び、普段、英語を使う機会が少ない私にとってはかなりハードでした。会食の席でも英語が続くので、ゆっくり食事を楽しむ余裕はないのですが、各国のメンバーと会話できる貴重な時間でもあります。

会食のとき、イギリス人の同僚から「30年前と比べて、一番違っていると感じるのは何?」と聞かれました。その同僚とは初対面だったので、政治的な話題は避けるべきかと一瞬考えました。しかし、各国の人材を紹介し合う仲間なので、移民排斥派ではないだろうとの予想もあり
「イギリスのダイバーシティーがものすごく進んでいることに驚いた」
と回答しました。「ダイバーシティー?」と聞き返されたので「街中でたくさんの人種を見かける」と答えると、彼は「その通り、それがイギリスの発展を支えている。ダイバーシティーは重要だ」と言いました。

「ブレグジット」について彼の意見を聞こうとしたのですが、隣の席のドイツ人が日本の天皇制度について質問してきました。
ドイツの同僚は天皇の生前退位が200年ぶりであることを知っていて「なぜ、そうなったのか?」と尋ねてきました。

・日本の憲法において、天皇は政治的な権能を持たないと規定されている。
・天皇が自らの退位について言及することは政治的な権能の行使に当たると考える人もいる。天皇に「引退したい」と発言させ、幼い子供を新しい天皇に擁立し、「新天皇を補佐するのは私だ」と宣言して権力を奪おうとする人間が出てくる可能性があるからだ。
・サムライの時代を終わりにした新政府は憲法で、天皇は引退できないと規定した。
・だから前回の生前退位は、サムライの時代にまでさかのぼる。
・今回、天皇は自ら引退したいと明言したわけではない。
・しかし多くの国民は天皇が引退したいと考えていたのだと理解している。
なんてことを英語でスラスラ説明できるとかっこいいのですが
「前の天皇は高齢で、そろそろ引退したくなったんだと思う。ここ200年くらいは、天皇が引退できる仕組みがなかった」と答えてしまいました。
“うーん、きちんと説明したいけど、会議の英語で疲れてしまった。もっと英語力が欲しい”と心の中で叫びました。

実は今回の出張の前に、天皇制について質問されるかもしれないと思って、予習しておきました。そして、明治政府の伊藤博文が天皇の退位制度廃止にこだわったことを知りました。
試験予想でヤマが当たったのに、ちゃんと回答できないなんて!(あ、学生時代にもそんなことがあったような気が…)

世界史も日本史も好きなのですが、英語力が足りないと一般教養のない人に見られてしまいます。「ブロークンイングリッシュでもグローバル人材にはなれる」が持論の私ですが、今回は英語力の低下を感じ落胆しました。英語の他にもやりたいことがたくさんあって、どれに時間を割くべきか悩んでいます。

2019年4月27日土曜日

「アウェイ」に乗り込もう! 『ISO通信』 2019年4月号 vol.34

先月のことですが、大学時代の恩師が定年で退官しました。

大学での最後講義には400人くらいの人が集まり、熱量あふれる授業に耳を傾けました。その講義は学生や卒業生だけでなく、一般の人も対象とした公開授業で、先生とゆかりのある人なら誰でも聴講可能な授業でした。
講義の後のパーティーも盛況で、先生が顧問を務めたクラブのOBOGだけで、100人以上の人がいました。私もそのクラブの出身で、年に何回か会う友人もいれば、20年ぶりくらいのメンバーもいました。二次会も大いに盛り上がり、学生時代と同じネタで笑える至福の時を過ごしました。

パーティーの数日後まで、face bookに上がった写真などを見ながら余韻に浸っていたのですが、ある人が「完全にアウェイだったけど、とても勉強になった」と投稿しているのを見て、思わず「いいね」を押しました。
私にとってはホームの場でしたが、その人からみると完全にアウェイ。ホームの私にとっては安心で心地よい場所ですが、アウェイの人にとっては知り合いがほとんどいない場所だったかもしれません。しかし、知らない人ばかりの所へ行った方が人脈も知識の幅も広がります。

私は「ホーム」で、いつものメンバーと毎度同じ話で盛り上がることも大好きなのですが、ときどき「アウェイ」にも行くようにしています。
“こりゃあ、場違いなとこに来ちゃったな”と感じることもあるのですが、そこで聴く話は新鮮で、普段の交流では得られない情報ばかりです。

先日は大学生と社会人が、就活やキャリア形成について語り合う場に顔を出しましたが、そこで会った学生は大企業での働き方にほとんど魅力を感じていませんでした。
「大企業で働いてから、その後でベンチャーに移ることは選択肢にありませんか」
と尋ねてみると
「それも考えましたが、大企業でしか学べないこととベンチャーでしか経験できないことを比較すると、最初からベンチャーに行った方がいいと思うようになりました」
との答えが返ってきました。

大企業のサラリーマンだった頃の私がその発言を聞いたら、なにも知らないくせに分かったような口をきく学生だ、と思っただけかもしれません。しかし、ベンチャー企業で活躍している優秀な若手の話を聞くことも多くなり、ベンチャーに魅力を感じる学生の気持ちも分かります。

40代後半でベンチャー企業に転じた人からは
「うちの会社に来るなら、やっぱり若いうちですよ」
と聞きました。その会社では20代の社員が嬉々として深夜まで働いているそうですが「ついていくのが、体力的にしんどい」とその男性は言っていました。

私がそのセミナーに参加したのは、face bookの投稿がきっかけで、会場にいるのは初めて会う人ばかりでした。セミナーの後の懇親会で情報交換すると、私の話を新鮮で面白いと言ってくれる人もいました。
嬉しい!
と素直に感じました。講義を聞く形式のセミナーだと基本的には受け身の立場になりますが、懇親会では「もらうだけ」ではなくgive and takeでありたいと考えています。

アウェイの場では自分にとっての「当たり前」が、他者にとっては「新鮮」なのだと気づくこともあります。
「ホーム」やその近辺だけにいると、“世間は意外と狭い”と感じますが、「アウェイ」に乗り込むと“世界はやっぱり広い!”と実感できます。


2019年3月31日日曜日

労働市場の流動化で職場はどう変わる? 『ISO通信』 2019年3月号 vol.33

「なんで仕事が楽しいかって言ったらさあ、仲間と一緒にやれてるからだよね」
「そうそう、絶対そうです」
電車の中で、若い二人が会話していました。
これから交際が始まろうとしている二人だから楽しいんじゃないの、なんて思ってしまうのはオッサンのひがみですが、爽やかな男女の会話を聞いて、いい職場なのだろうと想像しました。
 
一方で先日面談した30代前半の男性は
「うちの上司はイチイチ細かくて、私が決められることなんてまったくないのに、制度だけは裁量労働制です」
とぼやいていました。その人が務めているのは歴史のある一流メーカーで、業績的にも好調な会社です。その会社の別な部門にいる人から「裁量労働が徹底されていて、オフィスにいる必要はまったくありません。かなり自由な職場で、今の会社にも大きな不満があるわけではありません」と聞いたことがあります。
ぼやいた方の人に「御社にも自由な職場があるようですが」と言ってみると
「うちは事業部が違えば別会社みたいなもので、我々の部門には自由な雰囲気は全然ありません。マイクロマネージメントしたがる人がたくさんいます」
との答えが返ってきました。
 
転職や社内公募制などによる異動が当たり前になるとマイクロマネージメント型の上司は減っていくのかもしれません。転職したい本当の理由が上司に対する不満であるケースは多く「エージェントさんには本音で話していいのですよね」と言われることもよくあります。
優秀な部下が次々と逃げ出してしまったのでは、上司は成果を上げることができません。
マイクロマネージメント型の上司やパワハラ系の上司を嫌って転職する話は珍しくありませんが、これからは上司の方が転職せざるを得ないケースも出てくるかもしれません。

「上司が会社を辞めることになったので、私は残ることにしました。あの人は前の会社もパワハラで辞めさせられたのだと思います」
ある人から、この発言を聞いたときは少し驚きました。ここでは発言者をAさんとし、Aさんの言う「あの人」をBさんとします。
「Bさんは鳴物入りでうちの会社に入ってきて、実際に成果を上げていました。しかし、非常に厳しい人で、夜中でも日曜でもメールしてきて、返事を翌日にすると怒ります。ワーカホリックとしか思えませんが、常に仕事のことしか考えていないようです。あれだけ仕事して、部下にも同じやり方を求めるんですから、成果も上がりますよ」
とAさんは言いました。
そしてAさんは以下のように推測しました。
・人事部にパワハラを咎められたBさんが、会社にいられなくなった。
・Bさんは前の会社も3年くらいで辞めたらしいが、同じ理由ではないか。
・Bさんの力の源泉はパワハラだが、社会的に認められなくなってきたので、これからは成果を上げにくいだろう。
Aさんの言い分がすべて正しいわけではないとしても、パワハラを黙認しない会社は増えてきました。
部下が逃げ出す前に、上司が会社にいられなくなるケースは珍しいと思いますが、 「仲間と一緒にやれてるから仕事が楽しい」 と言える職場が、軍隊的な規律の職場より優位になっていく時代のようです。