2020年8月22日土曜日

選択的に生きているのか、選択させられているのか? 『ISO通信』 2020年8月号 vol.50


「ごめん、仕事の予定が入っているので、その日は行けない」
飲み会やパーティーに誘われたとき、そんな風に断ったことが誰にでもあるでしょう。
「ごめん、その飲み会よりも仕事の方が大切だから、今回はパス」
もし、このような答え方をしたら、次回から誘ってもらえなくなりそうです。
では、次のシチュエーションではどうでしょう?
楽しみにしていたコンサートが延期になり、デートの約束の日と重なってしまった。コンサートを優先すると
「ボクよりもジャニーズのコンサートが大切なわけ?」
と怒る人がいるかもしれません。もちろん、ジャニーズじゃなくて女性アイドルでも交響曲でも構いません。自分のことをボクと呼んだ人が女性かもしれない、と想像してみるのも頭の体操になります。

さて、デート対コンサートは、プライベート対プライベートです。仕事を理由に断るときよりも、デートの相手を納得させることの難易度は上がりそうです。
プライベート対仕事の場合、最近はプライベート優先派が多いようで、2018年の『子供・若者白書』(内閣府の統計資料)によると「仕事よりも家庭やプライベートを重視する」人の割合は63.7%でした。これは16歳~29歳までの若者を対象とした調査で、2011年に実施した同様の調査では、プライベートを重視すると答えた人の割合は52.9%だったそうです。
また、2018年の白書には「あなたは主として、何のために、仕事をするのですか」という質問もあり、選択肢と回答率は以下の通りでした。
「収入を得るため」84.6%
「仕事を通して達成感や生きがいを得るため」15.8%
「自分の能力を発揮するため」15.7%
「働くのがあたりまえだから」14.8%
「人の役に立つため」13.6%
「社会的な地位を得るため」7.0%
「親や兄弟を養うため」4.6%
「その他」1.3%
この質問に対しては選択肢の中から二つ選べることになっているので、全員が二つの選択肢にチェックを入れるとパーセンテージの合計は200%になるはずです。しかし、上記の数字を合計すると157.4%なので、「収入を得るため」以外に理由がないと考えた人が相当数いることになります。
ニッポンの若者よ、そんなことでいいのか!
と言いたくなる人もいると思いますが、20代の頃の私も「収入を得るため」に働き、仕事よりもプライベートを優先していました。

白書を離れて、最初の話題に戻しますが、仕事、デート、コンサート、どれを選ぶのも個人の自由です。ただし、仕事をしないと上司に叱られるという理由で仕事を選んだ場合は自らの選択とは言えません。
現在の私も「仕事よりも家庭やプライベート重視」派ですが、実際の行動はプライベートよりも仕事を優先するケースが多くなっています。
幸いなことに「上司に叱られたくないから」が理由ではなく、お客さんが喜んでくれることが、プライベートな遊びよりも楽しいと感じるときに、仕事を優先しています。
もちろん、それだけが理由ではなく「お客さんに迷惑をかけられないから」「ここで頑張らないと他社に仕事を奪われるから」といったケースもあります。

プライベートを優先するときは「遊び」を選択した自覚があるので、後ろめたさを感じることはないのですが、想定以上に飲み過ぎて二日酔いで苦しんでいるときは「あー、またやってしまった」と同じ反省を繰り返しています。

次に、大人数で一か所に集まって飲める日がきたら「今日、とことん飲むのは、自らの選択だ」と割り切って楽しみたいと思います。翌日、ゆっくり休める日に。

2020年7月23日木曜日

なぜ、勉強しなきゃいけないの? 子供の質問と大人の自問 『ISO通信』 2020年7月号 vol.49

16進数の小数0.24810進数の分数で表したものはどれか。
ア:3132  イ:31125  ウ:31512  エ:73512
試験の例題を見てみましたが、なんのことやら、さっぱり分かりません。

高校2年生の長男が「基本情報技術者」の国家試験を受けるそうで、珍しく真剣に勉強しています。これまで、勉強が嫌いで仕方なかった長男が「勉強していて楽しい!」と言うので嬉しく感じるのですが、大学受験の勉強もそんな気持ちでやってくれたら、と思わないでもありません。


「なぜ勉強しなきゃいけないの?」

子供の頃、だれでもそう思ったことがあるでしょう。

我が家には二人の息子がいて、子供たちにそれを聞かれたら
「未来の選択肢をたくさん残しておくため」と答えようと思っていました。 
生まれたばかりの赤ちゃんは、将来、宇宙飛行士になるかもしれないし、詩人になるかもしれないし、オリンピック選手なるかもしれません。サラリーマン、農家、ホームレス、ニート。夢のような未来もあれば、考えたくない未来もあります。

「大学生の前半くらいまでは、基礎的な知識と幅広い教養を身につけておくことが重要で、本当になりたい職業に出会ったとき、専門性を高めるための勉強をすればいいんだ。元素記号を暗記しておいてよかったと思うことだってあるかもしれないよ」と言おうと思っていたのですが、子どもたちは面倒なことを予感するとすぐにどこかへ行ってしまいます。いつもそんな調子なので「いいから黙ってオレの話を聞け!」といった風に説教し、結局、反発されるだけだったのですが、諦めて放任すると自分でやりたいことを見つけてきました。そして
「IT分野では日本はメチャクチャ遅れているから、英語のサイトを読まないといい情報がとれない。だから英語も勉強しようと思う」などと言っています。
それを聞いて「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」という言葉を思い出しました。喉が渇けば、馬だって自ら行動して水辺を探しに行く、ということですね。

職場のマネージメントにおいては、HOWを教えるよりもWHATやWHYを与えた方がよいと、最近参加したセミナーで教えてもらいました。つまり、仕事のやり方を教えて忠実にそれを守らせるより、なぜやるのか(WHY)を理解してもらい、目的を達成するために何(WHAT)が必要かを自ら考えてもらう方がよい、ということです。
確かに、新商品を開発する仕事(WHATを自分でつくれる仕事)と量産化された定番商品を販売するために、このルートを回って営業しなさい(HOWを与えられた仕事)と指示される仕事では、前者の方がワクワクしそうです。

しかし、新商品の開発もルート営業も、会社にとってはどちらも大切な仕事です。そしてルート営業にWHATやWHYが不要なわけでもなく「堅調だった売上に陰りが出てきた理由は何なのか」「消費者は次に何を求めているのだろう」などを考えれば、ただやらされている感覚ではなくなります。

子供の勉強は、未来の選択肢をできるだけ多く残しておくために必要だと考えているのですが、大人になってからの勉強は、もう一度、未来の可能性を切り開くためにするものだと思うようになりました。WHATやWHYを自分の意思でコントロールする人生であるために。

2020年6月27日土曜日

自律も他律もどちらも必要? 『ISO通信』 2020年6月号 vol.48

転職相談の仕事では、公的なアンケート結果には現れにくい本音を聴くことがあります。
「テレワークっていいですよね。上司が怒鳴り出したらボリューム下げちゃうんで、あまり怖くありません」
なるほど、確かにそうかもしれません。テレワークでもパワハラをする人はいるようですが、怒鳴る傾向がある人とビデオ通話するときは、スピーカーの音量を下げておけば圧力は半減するでしょう。
オフィスでのセクハラに困っていた人も、テレワークなら身体接触の心配はありませんし、ジロジロ見られているように感じる不安も減るはずです。

 一方で、オフィス勤務に戻ったことを歓迎している人もいます。
「テレワークに対応できない旧世代のように思われてしまいそうですが、私はオフィスの方が働きやすいですね。やっぱり、オフィスは仕事しやすいようにデザインされていますよ」
このかたとは電話で話したのですが、自宅には仕事部屋がなく、背後の家族の動きを気にしながら、オンラインで会議することにストレスを感じていたそうです。

テレワークを継続している人からは
「うちでは、オンラインお茶会が定着してきました。お茶会のときは仕事の話でも、うわさ話でも自由に話せることになっています」
と聞きました。その人の会社では月水金の15:00~15:30をオンラインお茶会の時間に設定し、だれでも自由に参加できる部屋が複数あるそうです。部屋に入るためのURLは全社員に公開されているものもあれば、親しい人だけに知らせているものもあり
「今のところ、休み時間にはカウントされていません」
とのことでした。

オンラインお茶会の時間は仕事時間なのか、休憩時間なのか。
あと2~3年すると「まだそんな議論してるの?わが社は時間管理を止めました」と言う会社が増えていることでしょう。テレワークや副業などが当たり前になると、時間よりも成果で管理した方が合理的です。
しかし、時間で管理しないと無制限に社員を働かせようとするブラック企業や、自らの意思で働き過ぎた結果、健康を維持できなくなる人も出てきます。

自律的に時間や健康を管理して成果を上げる社員がたくさんいて、オフィスワークもリモートワークも自由に選べる職場が理想的ですが、そんな会社に合格できるのは、ごく一部の優秀層だけのような気もします。
 優秀な人が集まるから理想的な職場になるのか、理想的な職場環境を用意すれば社員が自律的になっていくのか?
それとも、人は易きに流れるものだから、管理の少ない環境では労を惜しむ社員が増えるのか。しばらくは模索が続きそうです。

さて、在宅ワークの期間中、私自身は自律的に働くことができているつもりでしたが、オフィスワークを再開してみると「他律」があった方が(つまり、上司の眼を近くで感じているときの方が)、SNSなどを見ている時間が減ったような気がします。
SNSが仕事につながることもあるので、その時間が減ればよいわけではないのですが、在宅ワークでは「まあ、これも仕事のうち」と甘える傾向がありました。
自律的な自分を樹立するための修行は、まだまだ続きそうです。   

2020年5月30日土曜日

どこで働きたいですか? 『ISO通信』 2020年5月号 vol.47


「うちは出来ない会社なのではなく、やらない会社だということがよく分かりました。それが転職したくなった理由です」
電機メーカーに勤めている男性から聞いた言葉です。

その会社がやろうとしていないことは「テレワーク」です。在宅勤務が可能な部署ではテレワークを導入しているそうですが
「会社は、テレワークを本気で活用する気はないようです。コロナが終われば、元に戻ってしまうでしょう。たとえコロナ騒動が12年続いたとしても」
と、その男性は言いました。

電鉄会社に勤務している男性からも同じような話を聞きました。時間通り正確に電車を運行させることを使命にしている会社が保守的なカルチャーになることは想像できます。しかし、電鉄会社の男性も「できないのではなく、やる気がない」ことに不満を持っていました。
二人の男性に共通していたのは「変化を嫌う体質を嫌っている」ことでした。
電鉄会社の男性は「テレワークを真剣に検討してメリットが少ないと判断したのなら、導入しなくてもいいのです。でも、ほとんど検討もせずにウチには合わない、と考える姿勢がイヤなのです」と言っていました。

日経BizGateのサイト(57日付け)に“「収束後もテレワーク中心に働きたい」4割 ”と題した記事がありました。
新型コロナ禍収束後にどんな働き方をしたいか?の問いに対する回答が下記です。
・オフィスだけで働く:7.5
・オフィス中心にテレワークでも働く:53.4
・テレワーク中心にオフィスでも働く: 35.1%、
・テレワークだけで働く:3.9
テレワーク中心派が約4割、オフィス中心派が約6割となっています。
オフィスだけで働きたいと考える人は1割もいないので、9割の人はテレワークも使いたいと考えていることになります。



同サイトには、テレワークでの生産性を問う質問もありました。
「下がった」と「やや下がった」の合計が42%で、「上がった」と「やや上がった」の合計が27%でした。
この数字を見てテレワークを継続したくないと考える経営者もいるかもしれません。
社員数が20人くらいの会社を経営している友人は
「(社員の)働きぶりをちゃんと見ていないとダメだな。正直、テレワークで自律的に働いてくれる人を雇えるほどの給料を出せていない。経営者の実力不足と言われたらそれまでだけど」
と嘆いていました。
一方で、部分的なテレワークから全面的なテレワークに切り替えた会社もあります。
「オフィス中心にテレワークでも働く」と答えた53%の人は、固定的なオフィスを持たない会社に不安を感じるのかもしれません。

雇う人にも雇われる人にも様々な思いがあります。
監視や時間管理の厳しい会社では働きたくないと思うのなら、労働力を提供する場所や時間を選ばずに成果を出せる準備をしておく必要がありそうです。

2020年4月29日水曜日

10年ぶりの在宅ワークで思い出したこと 『ISO通信』 2020年4月号 vol.46


「小麦粉の価格が高騰し、パンなどの値段が上がりそうです」
テレビのニュースを見て、胃袋と胸を同時に締め付けられたような痛みを感じました。
今から11年前のことです。

当時の私は実質的に無収入で、貯金を切り崩しながら生活していました。サラリーマンを辞めて、未経験のフリーランスライターに挑戦していた時代です。
その頃、幼稚園に通っていた長男は高校生になりました。彼に
「お父さんって『ユメ追っちゃった系』の人だったんだ」
と言われたときは、一瞬ガクっときたのですが「今でも追いかけているよ」と返しておきました。

前回のユメを追っちゃってた頃の私は40歳の手前で、毎日自分の部屋にこもって原稿を書いていました。物書きとして収入を得ることを諦め、サラリーマンに戻ったのは2010年の5月です。あれから10年が経ち、再び自分の部屋にこもって仕事する毎日が来るとは思いませんでした。

しかし、10年前とは大きな違いがあります。「これから業務を開始します」と毎朝、職場の仲間にメールを送っていることです。46日まで同じフロアで仕事をしていた同僚と会う機会はなくなりましたが、みんなが「これから、仕事を始めます」とメールで声をかけ合うだけで、自分が職場の一員であることを自覚できます。

時差出勤から完全在宅に切り替わって3週間になり、テレワークにも慣れてきました。8時に仕事を始め、10時に休憩して、12時にお昼を食べます。午後は15時に休憩を入れ、1800頃にジョギングし、必要に応じて残業しています。
もちろん、オンラインでの打ち合わせや転職相談などが入るので、上記のパターンにならないことの方が多いのですが、午前と午後に30分の休憩を設けると、その他の時間の集中力が高まると感じています。
休憩時間にはコーヒーを飲みながら、新聞を読んだり、WEBサイトを見たりしています。在宅勤務を始めた頃は、新型コロナや景気動向などのニュースを見てしまう時間が細切れにありました。しかし、休憩時間を多めに設定したことで、それ以外の時間にニュースサイトを見ることはなくなりました。

「午前と午後の休憩時間は、人事制度上、認められているのですか?」と質問したくなった人もいると思いますが、今は緊急事態なので大目に見てもらうことにしましょう。
某社の人事マネージャーと会話しているときに「好きな時間に休憩している、私みたいな社員もいると思いますが、リモートでも管理したくなりますか」と質問してみました。その人事マネージャー曰く
「サボる人は会社にいても自宅でも、どっちにしてもサボるので、あまり気にしていません。むしろ、働き過ぎてしまう人に注意しています。売上が落ちないように必死で働いてくれた結果、過労で倒れてしまったのでは元も子もありません」
とのことでした。そして「新年度の目標数値を下方修正してもいいので残業はしないように」とメッセージを出したそうです。「さすがホワイト企業ですね」と言うと
「いや、頑張りすぎてしまう社員を過労から守る意味もあるのですが、自宅でのんびり仕事をして残業時間を多めに申請してくる社員を牽制する意図もあります」
と返ってきました。なるほど。

さて、在宅ワークのペースには慣れてきましたが、社会や経済の情勢は厳しく、売り上げを伸ばすことは困難な状況です。口では「ピンチをチャンスに」と言いながら「今は仕方がない」と甘える気持ちもあります。しかし、10年前に「どうしてデフレなのに、小麦粉の値段が上がるのだ。パンの値上げはヤバイ」と感じた恐怖は今でも鮮烈です。会社の仲間がいると思って油断していると、船ごと沈んでしまうかもしれません。
STAY HOMEなゴールデンウイークが始まったので、改めてピンチをチャンスにする方法を考えてみたいと思います。

2020年3月29日日曜日

家でネクタイする人と雑談しながら仕事ができる人  『ISO通信』 2020年3月号 vol.45

新型コロナウイルスの対策で、時差出勤と在宅ワークを実践しています。
オフィスでの原則的な執務時間は10時~16時になりました。朝は7:40から8:30まで自宅で仕事し、それから通勤しています。電車ではたまに座れることもあり、以前と比較するとかなり混雑は緩和されました。ウイルスに感染するリスクも低減していると思います。

夕方も16時に退社すると電車は混雑していません。17:00過ぎに自宅に到着し、再び在宅ワークに入るのですが、どうしても「くつろぎモード」になってしまいます。朝の在宅ワークは短時間ということもあり、集中できています。しかし、夕方の時間はリビングルームから聞こえてくる、テレビの音や家族の会話が気になります。また、家族と食事した後に仕事部屋に入る気になれないこともありました。
結局、16時に退社したのは数日で、いつもと同じような退社時間に戻ってしまいました。

以前から土日に自分の部屋で仕事することはよくあったのですが、生産性や集中力を意識していなかったことに気づきました。納期のある仕事は会社で終えるようにしていたので、土日は急ぎではない仕事をするケースが多くなります。例えば、新規開拓営業の準備。新しくお客さんになってもらいたい会社については、社長のコメント、財務状況、会社の評判などをWEB上でチェックします。社長のインタビュー記事を読んで“なるほど立派なことを言っているなあ”とか“その考え方には共感できるなあ”と思った会社にアプローチするのですが、もちろん開拓に失敗することもあります。忙しいので実際にアプローチするのは後にしようと思い、結局、営業開拓候補リストの中に入ったままの会社もあります。

営業開拓の準備は明確な「ワーク」ですが、土日は「プライベート」なのか「ワーク」なのか、曖昧なことをしていることも多いので、生産性や集中力を意識していませんでした。これからも、土日はそのスタイルで構わないと思っています。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が進むと在宅ワークが基本となり、必要なときだけ出勤する状況になるかもしれません。
原則が在宅ワークになっている友人は「昼メシの後、実はベッドで昼寝しちゃうんだけど、その方が午後も集中できる気がする」と言っていました。ある人からは「家でも勤務時間中はネクタイをしています」と聞きました。またある人は「職場の仲間と会えないのは寂しいので、週に2日くらいは出勤したい」と言っていました。
在宅ワークが不可能な職種もありますが、ホワイトカラーの転職相談で聞く限り、オフィスでなければ出来ない仕事は少ないようです。
在宅ワークでは、昼寝することも、ネクタイをすることで仕事モードに入ることも、仲間とチャットでおしゃべりしながら仕事することも(ある意味)自由です。アップルウォッチのようなツールで心拍数を測ったり、チャット上の会話を監視することで、昼寝や雑談を管理することは可能だと思いますが、心拍数データの提出を求める会社に優秀な「人財」は集まらないでしょう。
新型コロナウイルスの感染が収束した後は、在宅ワークだけでなく、喫茶店やコワーキングスペースでのテレワークを認める会社が増えるかもしれません。
自分に適した「仕事モード」への入り方をみつけたり、「仕事モード」など意識せずその場で処理する習慣を身に着け、テレワークに順応したいと思います。

2020年2月22日土曜日

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし 『ISO通信』 2020年2月号 vol.44

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
江戸時代の書物『甲子夜話』の一節にある言葉だそうですが、先日亡くなった野村克也氏が好んで使っていました。
 
プロ野球の選手としても偉大な記録を残した野村氏ですが、世代的に監督としての印象の方が強く残っています。
「勝ちに不思議の勝ちあり」
と言うときの野村監督の顔には苦笑と皮肉と安堵が入り交じっていたようで、今にして思えばチャーミングでした。
「ヘボな野球したのに勝てちゃった、不思議だねぇ、でも助かった」という気持ちが表れていたのでしょう。
 
一方で「負けに不思議の負けなし」と言うときの野村監督は憮然としていました。
「あんな野球をしてたんじゃ、勝てるわけないよ。負けるべくして負けた」と顔で語っていました。
 
野村監督は甲子園球場をホームとする阪神タイガースの監督も務めていました。
『甲子夜話』や「甲子園球場」などに使われる「甲子」って何だろう?と思って調べてみました。
自分なりの理解をAさんとBさんの会話形式で説明してみます。
 
A「今年の干支(えと)って、なにか知ってる?」
B「ねずみ、でしょ」
A「十二支は子(ね)だけど、干支は庚子(かのえ・ね)だよ」
B「え、干支と十二支って違うの?」
A「子、丑、寅…の十二支は順番に言える人も多いけど、十干(じっかん)は、甲、乙、丙くらいまでしか、知らない人が多いんじゃないかな」
B「丁まで知ってるけど、それが『十干』というものだとは知らなかった」
A「丁の後は、戊、己、庚、辛、壬、癸と続き、全部で十干。『十干』と『十二支』を組み合わせたものが干支で、全部で60の数を表せるんだ。トップバッターが『甲子』で二番手は『乙丑』。60番目の『癸亥』まで来ると再び『甲子 』に戻るんだよ」
B「なるほど。60歳の還暦って、干支の暦が循環することだったのか」
A「そう、60年で一回り。ちなみに、日の干支は60日で一巡するよ」
B「日にも干支があるの?」
A「うん、たとえば今日(2/22)の干支は『乙未』で、次の『甲子』は3月22日。松浦静山は『甲子』の日の夜に随筆を書き始めたから、本の名前が『甲子夜話』になったそうだよ」
B「ふーん。ところで『甲子園』の甲子も干支と関係があるの?」
A「もちろん。甲子園が完成した1924年の干支が『甲子』だった事が名前の由来なんだ」
B「なるほどねぇ」
 
というわけで
『甲子』には「いの一番」のような意味があり「新しいことを始めるのにふさわしい」「縁起がいい」とされていたようです。
 
脱線が長くなりましたが、今日の本題は「負けに不思議の負けなし」です。
負けたときには、なんらかの理由があるはずです。なかなか結果が出ないときも然り。
結果が出ない状態が続いているなら、プロセスを改善する必要があります。
「今までのやり方を変えるのは面倒なので、次の『甲子』の日が来たら取り組むことにしよう」などと考えていたら「負けて不思議のない男」と天国にいる野村監督から笑われてしまいそうです。
 
小さな改善はコツコツと進め、イノベーションにつながるような改善は、散歩でもしながら「ひらめき」を得たいと思います。

2020年1月19日日曜日

ファン・ラン気分で仕事ができていませんか? 『ISO通信』 2020年1月号 vol.43




週に一度のジョギングを続けて30年以上になりますが、昔と比べて走るスピードは遅くなっています。最近は5キロの距離を約30分で走っているのですが、先週は目標タイムを25分に設定してみました。

走り始めて5分で息が上がり胸も苦しくなったので、一旦、いつものペースに戻しまた。その後、再びスピードアップし、走り終えたときのタイムは2658秒。普段の90%の時間でいつもの距離を走ったことになります。

はっきり言って、しんどい。

マラソン大会に出て誰かと競ったり、設定した目標タイムを切りたいのなら、これからも頑張って走るでしょう。しかし、私のジョギングはただのファン・ラン(Fun Running)です。走ると気持ちいいから走っているだけなので、苦しい思いをして25分を切る必要はありません。

ではなぜ、先週は25分で走ろうと思ったのかと言えば、友人から「9時間かけていた仕事を8時間で終えても、しんどいだけなんだよね」と聞いたことがきっかけです。

「それなりに仕事は面白いし、工夫や改善もしてきたけど、一日、9時間くらいでやることに慣れちゃってたんだよね。残業時間を減らすために8時間で終えようとすると当然しんどい。昔、10時間かけてやっていた仕事を9時間にしたんだから、もういいじゃん。
たまに早く帰ってセミナーに参加したりすることはあるけど、今さら毎日勉強しようとは思わないし」なるほど、毎日1時間程度の残業ですむなら楽しいと感じていた仕事も、8時間で終えようとするとしんどくなる。それを聞いたとき、二つのことが頭に浮かびました。

・明日は、9時間の仕事を8時間で終えるようなつもりで、仕事をしてみよう。
・次回のジョギングでは、いつもの距離を25分で走ってみよう。

実際にやってみると両方ともかなり大変でした。仕事の方は15時以降後はいつものペースに戻っていたかもしれません。

大学の同期で、大企業で部長を務めている友人が「今さら毎日勉強しようとは思いわないし」と言ったとき「俺はまだまだ勉強しないと、いつ淘汰されるか分からないからなあ。小さい会社は大変だよ。それなりに楽しんでいるけど」と答えました。しかし、先週のジョギングの後、こう思いました。頑張れば8時間で済む仕事に9時間を費やしているから「それなりに楽しんでいる」などと言えるのではないか、と。

私自身も9時間でやるリズムに慣れてしまっていたようです。ファン・ランのような感覚で仕事をこなせていたことに気づきました。(もちろん、切迫した場面では、緊張感と集中力を高めています。)

ジョギングの方はこれからも30分で走ればいいのですが、仕事に関しては、8時間で終えても楽しいと感じるレベルに進化する必要があります。キーボードを打つ速さを10%アップするようなスピードアップもしたいのですが、より高度な仕事にチャレンジし、短時間で成果を上げる方にシフトしたいと思います。

2019年12月28日土曜日

応援されるとスポーツ選手や会社員のパフォーマンスは上がるのか? 『ISO通信』 2019年12月号 vol.42

今年の12月は、例年よりも飲む機会が多くありました。
飲み会の席にラグビー好きの人がいると
「サンウルブズは勝てなかったのに、なぜ日本代表は強かったのですか」
と質問しています。
サンウルブズは、南半球のプロクラブによるラグビーリーグである『スーパーラグビー』に参戦している日本チームで、ヘッドコーチは日本代表のジェイミー・ジョセフ氏が兼任し、メンバーも現役日本代表や日本代表候補で構成されています。
ラグビーに関して、にわかファンの域を出ない私ですが、2019年のシーズンにおいて、サンウルブズが2勝14敗の成績であることは知っていました。
そのため、ワールドカップで日本がベスト8に残れるとは、思っていませんでした。
アイルランドに勝利した後でさえベスト8は厳しいと思っていたので、スコットランドに勝ったときは心が揺さぶられるほどの感動がありました。テレビの画面に向かって「スゴイ!そして疑っていてゴメン」と言いたくなりました。
さて、質問に対する答えは二種類あって
「日本全国で、あれだけ応援されたら100%以上の力が出るよ」
という意見が主流でした。
(もう一つの答えは「サンウルブズは常にベストメンバーを組める状況ではなく、代表選手だけが試合に出ていたわけではなかった」というものです。)
応援が力になることはプロスポーツの世界では統計的に確認されていて、野球もサッカーもホームスタジアムでの勝率と、敵地での試合も含めたトータルの勝率を比較すると、通常はホームでの勝率が全試合での勝率を上回ります。
今シーズンのプロ野球の記録を確認したところ、セ・パ合わせて12球団のうちヤクルトスワローズ以外の11球団において、ホーム球場での勝率が全試合での勝率を上回っていました。
サッカーのJリーグに関しては、1993年~2016年までに行われた5,159試合の結果を調べた人のブログによると、ホームでの勝率42.5%に対して、アウェイでの勝率は33.7%になるそうです。(90分で決着しなかった試合は引き分け扱い)
応援が力に変わるなら、職場においても上司が部下を応援すれば、メンバーのパフォーマンスは上がるのでしょうか。
しかし、毎日毎日、上司に「ガンバレ、ガンバレ」と言われたら、パワハラで訴える方向で力が発揮されてしまいそうです。
上司に応援されると「うっとうしさ」や「プレッシャー」を感じる人もいて、普段通りのパフォーマンスにならないケースもあります。
では、お客さんに応援された場合はどうでしょう。
お客さんから「頼れるのはあなたの会社しかないので、何とか助けて下さい」と言われたらプレッシャーになるかもしれません。しかし、自社と競合他社のいずれかをお客さんが選べる立場にあり、それでもなお
「今度のプレゼンテーションでは、あなたの会社に頑張ってもらいたい」
と期待されたら、俄然、やる気がでるのではないでしょうか。
B to Bのビジネスでは、お客さんの製品やサービスのファンになると、お客さんもこちらを好意的に見てくれるようになります。逆にお客さんのプロダクトに愛着を感じない場合、自社の製品やサービスの質が高ければ売ることは可能ですが、お客さんから応援してもらうレベルにはならないでしょう。
お客さんを応援し、お客さんからも応援してもらう。
それが出来れば、いつもホームグラウンドで戦うような心理状態で、高いパフォーマンスを発揮できそうです。

2019年11月30日土曜日

情報発信する人だけに返ってくる情報がある 『ISO通信』 2019年11月号 vol.41

「ピザ、ピザ、ピザ と10回言ってみて下さい」
そう言って、相手に10回繰り返してもらい、その後で肘を指差しながら「じゃあ、ここは?」と質問すると相手が「ひざ」と答えてしまう遊びがありました。

では「トランサーチ、トランサーチ、トランサーチ」と10回、言ってみて下さい。

ハイ、これであなたも、私が勤めている会社の名前が「トランス・サーチ」ではなく「トランサーチ」だと覚えましたね。
すいません、つまらないことに付き合わせてしまいました。
実は私自身、入社前はトランス・サーチだと思っていました。トランサーチってなんかしっくりこないなあ、と思っていたのですが、いつの間にか愛着を感じるようになりました。

先週、マレーシアに出張し、アジアを中心とした世界の10都市から集まった同僚との会議に参加しました。ロンドンから来た女性CEOは、各都市のメンバーに対して「トランサーチのブランド力を高めるために、SNSなどを使って情報発信しましょう」と呼び掛けました。

場面は変わりますが、日本でセミナーや勉強会などに参加すると
「SNSやブログを使って、積極的に情報発信しましょう」と発言するセミナーの講師や登壇者がときどきいます。
メールマガジンの『ISO通信』を私が始めたのも、それらの言葉に刺激されてのことですが、最初はとても大きな勇気が要りました。3年経った今でも、送信のボタンを押すには、それなりの勇気が必要です。

このメールマガジンの配信先には、大企業の社長や著名なコンサルタントなどもいて、しかも近しい関係とは言えない人もたくさんいます。(簡単に言うと、一度名刺交換したことがあるだけの人に送りつけている状態です。)
そのような偉人たちに「ピザ、ピザ、ピザ と10回言ってみて下さい」で始まるメールを送っていいのだろうか、と大きな不安はあるのですが、今回も送信ボタンを押してしまいました。

「情報発信しよう!」と呼び掛けている人たちの共通の教えに「情報発信をしている人だけが得られる情報がある」というものがあります。

実際にその通りで、メールマガジンに対する返信をもらうと自分とは違う視点があることに気づきます。もちろん、メールを配信する前から、自分とは違う意見があることも想像しているのですが、意外なポイントを指摘されることもあり、新たな気づきとなります。

また、普段はめったに会うことがなくても、たまに返信をもらうだけで、心の近さを感じるようになり、書き続ける動機にもなります。

それから、数年前に一度会っただけの人でも、メールマガジンを送っていることで、こちらから再度連絡するときの心理的なハードルが下がることがあります。

このように、たくさんのメリットがあるのですが“あ~、今月はサボりたい”と思うこともあります。自信を持って発信できる内容のケースは少なく、むしろ「ピザ、ピザ、ピザ」で大丈夫かな、と不安に思うことの方が多いためです。

それでもなんとか、第41号を11月中に配信することができました。
(これで、月に一回のペースをキープ!)
ブランド価値の向上につながるかは微妙ですが「トランサーチ、トランサーチ、トランサーチ」と三回唱えて、今月号を終わりたいと思います。

【追伸 ①】
世界各国の同僚たちの写真。↓
http://www.transearch.com/consultants/consultants

アルファベット順で載っていて
「なぜ日本人の名前はKで始まるのか?」
と聞かれたことがありますが、なぞです。

【追伸 ②】

上の写真は、TRANSEARCHのアジア・パシフィック カンファレンスの様子です。

2019年10月22日火曜日

職場じゃ言えない「アイ ラブ ユー」 / 『ISO通信』 2019年月10号 vol.40

「ジョナさ~ん、アイ ラブ ユー」
ジェーンは歌うように言いました。本当は「Jonathan I love you.」 と言っていたのですが私には「ジョナさ~ん」 と聞こえることがありました。ジョナサンには姉のキャサリンがいて、二人の母親であるジェーンは「キャサリーン、 アイ ラブ ユー」なんてことも、ひんぱんに言っていました。

ジェーンの家にホームステイしていた私は ”ガイジンちゅうのは、なんでこう毎日毎日、アイラブユーとか言えるんだろう”と不思議に思いました。しかし、10代後半のキャサリンもジョナサンも素直に育っているので、愛情を言葉で伝えるのは大切なことかもしれない、とも感じていました。


オーストラリアのキャンベラでホームステイしていたのは30年も前のことです。しかし、ジェーンの「アイラブユー」は結構なインパクトあがり、自分が親になってからも忘れていませんでした。そして私は二人の息子たちに向かって、毎日のように「アイ ラブ ユー」と言い続けました。というのは、さすがに冗談です。しかし、子供を叱った後には「君たちのことが好きだからこそ、怒ったり、注意したりするんだよ」と付け加えていました。
高校生と中学生になった二人の息子たちは、キャサリンやジョナサンのように素直に育つはずだったのですが、しっかりと反抗期に入ってしまいました。あるとき次男を叱り「好きだからこそ、怒るんだぞ」と言うと「キモっ!それが嫌なんだ」と言い返されました。
いつもなら「親に向かって、キモいとはなんだ!」とさらに怒るのですが、考えてみると自分が中学生の時に「お前のことが好きだから叱ったんだぞ」なんて親から言われたら「気持ち悪い!」と言い返したと思います。  

頭では息子の気持ちもわかるのですが、理不尽に反抗的な態度をとられるとこちらも腹が立ち、感情的になってしまうこともあります。子供が小さいうちは、文字通りの腕力で押さえつけることがありました。しかし、それが何の役にも立たないことをすぐに悟りました。腕力で制圧されても、納得しない限り、行動を改めようとはしません。次は親にバレないようにやろうと狡猾になるだけです。
納得してもらうためには話し合いしかありません。しかし「ちゃんと話し合おう」と呼び掛けているのに無視されると、またまた腹が立ちます。最近は、腕力が拮抗しつつあるので「お小遣いをあげないぞ」的な言葉を口走りそうになりますが、これも腕力による制圧と同じなので、止めています。

結局のところ、無視されても粘り強く呼びかけて、納得するまで話し合うしかありません。
そして、話し合って納得したルールに関しては、子供たちも守ろうと努力するようです。しかし遊びたい気持ちが勝って、やっぱり逸脱してしまう。
そんなことの繰り返しです。

さて、職場での人間関係に置き換えてみたとき、上司は部下にどのように接するべきでしょう。反抗的になってしまった部下が心を開いてくれるまで待てる上司はどれほどいるでしょうか。
逆に、権力を振りかざして制圧しようとする上司に反発せず、話し合いを求めることができる部下は何割くらいいるでしょうか。
職場の場合、大人と大人の対立なので、表面的には両者が納得しているように取り繕うことは可能です。しかし、それでは生産性の高い職場にはなりません。

上司のみなさん、
ジェーンおばさんのように「アイ ラブ ユー」と部下に語りかけましょう。

部下のみなさん、
そんな上司がいたら「キモっ!」と言い返して下さい。

そんな喜劇みたいな職場はないと思うので、厳しい言葉の裏に愛情のかけらがあると感じたら、納得できるまで話し合うことを提案しましょう。

2019年9月28日土曜日

インターンシップには「かばん持ち」が最適?『ISO通信』 2019年月9号 vol.39

とある懇親会で大学生と会話する機会がありました。
「就職先として、大企業も選択肢に入りますか?」
と質問すると
「ベンチャーしか考えていません。ハッキリ言って大企業には魅力を感じません」
と、即答でした。ベンチャー企業が主催したセミナーの後の懇親会だったので、想定内の答えです。
「大学の友だちにも、ベンチャー志向の人が多いのですか」と聞いてみると
「自分の周りには結構いますけど、全体としては少数派かもしれません」
との答えでした。 
 
まったく別な懇親会で、小規模企業でインターンをしている大学生と会話しました。
その人は慶応大学の学生で、インターン先は社員数が10名程度の企業です。
「この会社に就職することもありそうですか」と質問すると
「いやぁ、それはちょっと」
と口を濁しました。するとその会社の社長が、すっと寄って来て
「うちみたいなところに、こんな優秀な学生が来るわけないじゃないですか」
と割って入ってきたので
「でも、インターンに来るくらいだから、興味はあるわけですよね」
と、学生の方を見て聞いてみました。
 
 (学生)「小さな会社の方が、実務を深く体験できると聞いて、この会社のインターンに参加させてもらいました。実際、仕事は面白そうなので、将来的には『あり』かもしれません」
(社長)「そこなんですよ、私の狙いは。卒業してすぐにうちに来てくれるとは思っていません。でも大企業で2~3年働いて、仕事が面白くないなあ、と感じた時に、うちに来てくれたらいいんです。」
(私)「なるほど。いい作戦ですね。(学生の方に顔を向け)どうですか、2~3年後は?」
(学生)「2~3年で自信がついていればいいのですが、お荷物になってしまいそうです」
(社長)「大丈夫。君なら、うちに来て1年もすれば、戦力になれるよ。2週間、かばん持ちやってもらったので、それくらいは分かる」
 その言葉を聞いて、再び“なるほど”と思いました。
その社長が、実際にかばんを持ってもらったか否かは別にして、学生が社長の行動のどこに興味を持ち、どんな質問をしたのかによって、将来の活躍度合を判断することができそうです。
 
大企業の場合、インターンシップにたくさんの学生が応募して来るので、一人一人に長期のインターンを実施することは困難です。このため「1dayインターンシップ」を実施するのですが、1日だけでは会社説明会と大きな違いはありません。

中小企業にとってもインターンの受け入れは大きな負担ですが、優秀な学生との接点にもなるため、長期のインターンを実施するのは、中小企業に多いようです。前述の社長のように、学生と一緒に行動する時間をたっぷりとれるなら、働くことの楽しさや厳しさを伝えることができるでしょう。
 
さて、中小企業の社長に経営幹部を紹介する場合、社長と候補者の相性は非常に重要となります。スキルやコミュニケーション力に問題がないのに「どうも相性が悪い気がする」という理由で、選考が進まないケースがあります。
逆に、転職相談を受ける場面では「入社した当初は社長との相性もよかったのですが、仕事を進めるうちに社長に対する印象が変わってきました」と告げられることがあります。
この場合、採用段階では相性よりスキルを重視した社長が、入社後に“やっぱり相性の悪さが気になってきた”と考えている可能性もあります。
中途採用において、候補者が社長のかばん持ちをする機会があれば、ミスマッチを解消できるのではないか、と思いました。しかし、候補者の段階の人を商談に同席させたりすることは、実際には難しいかもしれません。

当社には、企業カルチャーや上司の考え方との相性をチェックするツールもありますので、ご連絡をお待ちしております。(と、たまには宣伝も。)

↓ 株式会社トランサーチ・ジャパン アソシエイツ 
http://www.transearch.co.jp/index.html

2019年8月31日土曜日

「球数制限」と「残業制限」は似ている? 『ISO通信』 2019年8月号 vol.38

「好きなときに働きたいのですが、こちらの会社はどうですか」
転職相談のときに質問され、
「その点は心配ありません」
と答えました。
質問した人(以下、Aさん)の意図は「土日や夜の時間に働くことが制限されていませんか?」ということで、常に自由な時間に働きたいと主張しているわけではありません。

コンプライアンスやセキュリティ管理の面から、土日や夜間に仕事ができないルールや仕組みを徹底している会社も増えています。
Aさんは管理職手前の男性で、成長意欲に関しては野心的かつ貪欲なタイプです。土日や夜間に仕事をする際に「毎回、上司に承認してもらう必要のある会社ではストレスがたまりそう」と考え、自分の裁量で働く時間をコントロールできる職場を理想としています。
Aさんは、自分がワーカホリックになりやすいタイプであることを自認していますが、健康や周囲との協調性には注意しいているそうです。

「私のような人間を放置しておくと勝手に働いてしまうので、強制的に仕事から離れる仕組みをつくらなきゃダメだと考える人もいるでしょうね。でも、定時で帰って家でのんびりしていたら、成長できないと思います」
Aさんの発言を聞いて、高校野球の球数制限のことを思い出しました。
プロ野球の世界では、ピッチャーの肩や肘を守るために投げ過ぎを防止することは当然で、先発投手は6日~7日に一度の間隔で登板することが一般的です。
しかし、トーナメント戦を戦う高校野球では、大会期間中、毎日のように投げるピッチャーもいて、そのために故障することもあると考えられています。
これを防ぐために、一つの試合で投げられる球数を制限すべき、という議論があり、近年は賛成派が増えているようです。

甲子園に出場するようなチームの監督が、“二番手の投手を使って負けるわけにはいかない”と考える気持ちはよく分かります。また、高校生の投手なら“仲間と一緒に甲子園に行きたい”“もっと、うまくなりたい”と考えて、毎日でも投げたいと思うかもしれません。
逆に、体に異変を感じる前の高校生が「けがのリスクがあるので、今日は投げません」と主張することは難しいでしょう。高校生の体を守るには、球数制限などの規制は必要だと思います。

サラリーマンの世界でも、社員の健康を守るために、働き過ぎを防止することは当然と考えられるようになり「うちでは、定時退社が当たり前です」と聞いても驚かなくなりました。

しかしまだ、上司が帰らないと部下も帰れない雰囲気の会社も多く、納期を守るために残業せざるを得ない職場もたくさんあります。総合的に考えると、働く時間の総量を規制する法律は必要だと思いますが、残業させない仕組みを徹底し過ぎると、Aさんのようなタイプからは敬遠されます。

高校生投手の肩を守るために監督が注意する必要があるように、社員の過労を防止するために管理者は注意を払う必要があります。しかし、いつまでも管理者に注意してもらう立場に甘んじていると、面白い仕事にはありつけません。
年功序列で管理職になれたらラッキーと考える人もいますが、自己裁量で時間や仕事量をコントロールできる立場に早くなった方が、仕事も生活も充実すると思います。