多店舗展開するチェーンストアはたくさんあります。チェーンストアを運営する会社の盛衰は激しく、昔は至るところにあったのに、いつの間にか見なくなってしまうチェーン店もたくさんあります。
逆に新興勢力のチェーンストアが次々と新しいお店をオープンし、比較的短い期間で世の中に認知されていくケースもあります。
チェーンストアの運営会社には「店舗開発」と呼ばれる仕事をする人がいて、新しい店を開く際の立地を決めたり、不動産のオーナーとビルの改造について話あったりします。
出店する場所を決める際には、どんな年齢層の人が住んでいるのか、集客力の強い他の施設が近くにあるか、店に入りやすい間口を設置できるか、などいろいろなことを検討します。
少し前に、店舗開発の「プロフェッショナル」を自負する男性と出会いました。(仮に、Tさんとします。)
Tさんは面談の冒頭で「転職回数が多くてびっくりしませんでしたか」と言いました。40代半ばの彼はすでに6社に勤めた経験があり、転職回数を気にする会社から見ると好ましいキャリアとは言えません。
「Tさんの場合、職場は変わっていますけど、職種は変わっていなんですよね」
私はTさんに言いました。Tさんはレストランや居酒屋など、外食業界でチェーン展開する企業において店舗開発の仕事をしています。新しいお店をどんどん出店しているうちは、Tさんは店舗開発の仕事で力を発揮できます。しかし、チェーン店の勢いが衰え、出店よりも閉店の方が多くなってくるとTさんは仕事に面白みを感じることができません。
そして勢いのある新興の企業が出てくると、そちらに移ってまた力を発揮します。
「正直言って、一つの会社に永住できるとは思っていないので、契約社員でも構いません。今の会社での仕事も減ってきているので、そろそろ次のことも考えておかないと、と思って相談にきました」
Tさんは言いました。普通の人は契約社員よりも正社員として採用されることを望みます。
しかしTさんは「出店計画がなくなったら、契約を更新しなくてもいいという条件にしておいた方が、会社側も雇いやすいと思います」と続けました。
Tさんとは逆に「職種」よりも「(ひとつの会社への)就社」を重視する人もいます。社内のジョブローテーションに従って異動していると職種に関してのプロフェッショナル性を高めることは難しくなりますが、社内のことを幅広く知ることができます。
大企業のプロパー社員の場合、店舗開発の仕事を10年続けた人が、経営企画部や総務部などに異動するケースもあります。
しかし、Tさんを社外から採用して、経営企画部に配置することはありえません。大企業の中で役員になろうと思ったら、異動命令に従って配属された部署で結果を出す必要があります。
「就職」よりも「就社」を重視して役員を目指すような働き方も、
出世ではなく自分の役割を全うする働き方も、どちらも正解だと思います。
Tさんの場合、「出店」という成果を出し続けなければ、雇用契約を維持できません。
「就社」派の人も本来は会社の業績にコミットしなければならないのですが、職種によっては結果が見えにくい仕事もあります。
業績目標シートの作成や評価のフィードバックが形式的でマンネリだと感じたら、自分の雇用契約の維持にはどんな結果が必要なのかを想像してみてはいかがでしょうか。