2017年9月24日日曜日

「個人業績」と「組織業績」、どちらを重視していますか?(2016年11月号 vol.5)

プロ野球の三浦大輔投手が引退しました。通算成績は172勝183敗。大洋ホエールズの時代からDeNAベイスターズまで横浜一筋25年。ずっと応援してきたので、最後の登板を現場で見られず残念。

野球に興味のない人に簡単に説明すると、横浜はとにかく弱い。1998年に38年ぶりの優勝をしてから早くも18年が経ち、毎年6月くらいになると最下位近辺の指定席に座るようになります。(でも今年は久しぶりに楽しめた。3位!)

もしも三浦が他の球団にいたら200勝していただろう、と言う人もて、横浜ファンとしてはちょっと微妙な気持ちになります。ある人が統計学的な手法で分析したところ、三浦が平均的な強さのチームにいたら、182勝173敗になるそうです。そしてピッチャーの評価は、打線の援護に大きく左右される勝ち星よりも防御率などのピッチャーとしての力の差が出やすい指標で行うべきではないか、ということが書かれていました。

前置きが長くなりましたが、今月は個人業績と組織業績の関係についてです。

まずは次のAかBを選んでみて下さい。
A チームとしての業績が悪くても個人の業績が顕著であれば、その個人は昇格すべきである。
B 個人の業績が顕著であってもチームとしての業績が悪ければ、他のチームから昇格者が出ることはやむを得ない。

これはわが社で使っているビジネスマインド診断ツールの質問項目の一つですが、この質問では多くの人がAを選びます。
年功序列ではなく実力で評価します、と会社が言うのなら個人としての実績を正しく評価してほしいという気持ちが表れているのだと思います。

しかし、現実の組織においては、チームの業績が高い部署から昇格者が出るケースが多いようです。チームを率いるトップは、当然のことながら自分のチームから昇格者を出したいと考えます。自分のチームが他のチームより結果を出したのに、他のチームの人が昇格したのでは、メンバーのモチベーションは上がりません。

「うちの部は、こんなに大きな利益を出したのに、どうして赤字を垂れ流している部の人間を昇格させようというのか」
利益を上げている部署の部長がこういったとき
「いや、我が部の山田(仮名)は、おたくの佐藤(仮名)より実力はあるし実績も上げている。山田を昇格させるべきだ」
と赤字を出した部の部長が言っても、山田さんと佐藤さんが、まったく同じ仕事をしているのでなければ、業績の差が数値で示されることはありません。

経営者や人事部は、昇格者を決定する会議では行司役となりますが、山田さんと佐藤さんの仕事ぶりをつぶさに見ているとは限らないので、正確なジャッジは難しくなります。

外資系企業や中小企業では、山田さんと佐藤さんのどちらに辞めてほしくないか、という視点で昇格者を決めるケースがあります。外資や中小企業にいる社員の場合、転職に対する心理的な抵抗が少ないため、正当に評価されていないと感じたり、満足度が低かったりすると別な企業に移ることも珍しくありません。経営幹部は「山田と佐藤のどちらに残って欲しいのか」を基準に昇格を決めることもあります。

大企業の場合、組織業績の差を理由に佐藤さんを昇格させたとしても
「山田が辞めることはないだろう」
と考えるのが一般的です。

誰をどのように評価するのかは人事の永遠の課題ですが、個人業績を評価してほしいと考える人(Aを選択する人)がかなり多いことに留意されてはいかがでしょうか。

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